『拘縮』の意味とその原因・予防方法・強直の違いについて専門家がご説明します。


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<2018年10月8日加筆・修正>

理学療法士の井上(@Rehacon)です。

医療現場や介護現場では「拘縮」という言葉をよく聞きますが、実際には拘縮と強直が混在しているケースが多いのが実情です。厳密にいうと"拘縮と強直というのは全くの別物"です。

リハビリの現場では、「拘縮のリハビリをお願いします」というような指示をよく受けますが、正直に言うと、そんなに簡単に改善はできません。

では、それはなぜでしょうか?

「拘縮」ではなく「強直(きょうちょく)」にもうすでに移行してしまっている人が非常に多いからです。強直になってしまうと、現代医学では改善は限りなく難しくなります。

一方で、早く対処できれば改善できる余地が多いということになります。

今回のこの記事では、拘縮が起きてしまう原因や拘縮そのものの意味、予防方法、拘縮と強直の違いについて理学療法士がお伝えしていきます。

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関節可動域とは?関節可動域制限とは?

拘縮の前に、拘縮に関わる関節可動域についてご説明します。
 
関節可動域とは、「関節の動く範囲」のことを言います。つまり、関節の動く範囲を関節可動域、関節が動く範囲が小さくなってしまったことを関節可動域制限と言います。

医療現場では関節可動域のことを「ROM」、関節可動域制限のことを「ROM制限」と呼びます。

関節可動域を英語にすると、Range  O Motionとなります。頭文字をとってROM(アールオーエム)と言います。

よく介護職の方や看護師の方々がROMを「ロム」と呼ぶ方がいますが、そういう呼び方はしません。

 
 

関節可動域制限の定義

関節可動域は、「自分で動かせる範囲」「第三者が動かせる範囲」とに分類されます。
 
自分で動かせる範囲は筋力なども関係してくるので、今回は第三者が動かせる範囲について解説していきます。
 
では、1つ1つの関節がどのくらい動くのか、どういう指標でみていく必要があるのか?

これについては専門的な分野になってしまいますが、これらの指標はすべて「日本整形外科・日本リハビリテーション医学会」が定めた「参考可動域」というものに準じて判断されています。

ここで定められた参考可動域をベースに、肩の屈曲(肩がどのくらい挙がるのか?)が何度なのか、股関節の伸展(股関節が後ろにどの程度伸びるのか?)が何度なのかを理学療法士や作業療法士が検査をしていきます。

 
そして定められた数値と実際に計測した数値に差がある場合を「関節可動域制限あり」となります。

関節可動域制限がある場合、どういった原因で制限が起きているのかを理解する必要があります。以下に、その説明をしていきます。

 
 

関節可動域制限の原因


関節可動域制限の原因には、関節周囲に存在する「軟部組織が原因で生じたもの」「軟骨や骨などの関節を作るそのもの自体の原因」とに分けられるのですが、ここでは軟部組織が原因のものを解説していきます。

拘縮は軟部組織が原因で生じる

  • 皮膚
  • 皮下組織
  • 筋膜
  • 筋肉
  • 腱(スジ)
  • 靭帯
  • 関節包(関節を包む膜)
これらの軟部組織そのものに原因があるものを拘縮と定義されています。

では、冒頭にも書いた「強直」はどんな状態なのか。強直を簡単に説明すると、"拘縮がさらに進行してしまった状態"を強直と言います。

先天性(生まれつき)の骨癒合症や関節リウマチなどでみられる軟骨破壊後の骨性強直は除きます。

この2つは似て非なるものであり、拘縮というのは「可逆的なもの(改善する可能性があるもの)」「強直は非可逆的なもの(改善は難しいもの)」と理解していただけたらと思います。

つまり、拘縮はリハビリで改善できますが、強直は限りなく難しいということを理解する必要があり、強直を根本的に治すのには手術などの観血的な治療が必要になると理解してください。

それでは、以下に拘縮を起こす原因とリハビリの基本的な方法、予防方法についてお伝えしていきます。

 

拘縮を起こす原因

拘縮を起こす原因は複数あり、主に以下の原因が挙げられます。

  • 年齢・罹病期間(病気になってからの期間)
  • 日常生活でどれだけ動いてるのか
  • 脳梗塞や脳出血といった脳血管疾患による痙性麻痺(けいせいまひ)
  • 痛み
  • 浮腫(むくみ) など
これらには共通点があります。それは、

関節の不動

つまり「関節を動かさない」ということです。
 
これは年齢や病気、病気になってからの期間、痛み、浮腫などに共通してくる部分となります。拘縮を起こさないためには、いかに身体活動を高めて、関節を動かす時間を多くするか。これがポイントとなります。

これには、以前記事でも書いた「早期離床」という考え方も非常に重要になってきます。

【関連記事】
「早期離床」と「ワッサーマンの歯車」まさかこれを知らない療法士はいませんよね?すぐに理解できます。
「脳卒中」に対する離床。安全かつ積極的に離床を促しましょう。

 

拘縮に対するリハビリの基礎と予防方法

まず基本的に重要なことは、動ける人に限られますが「全身運動」をすることが大事になってきます。
 
体を動かして、身体活動を高めておけばそう簡単に拘縮はおきません。
 
そして、拘縮を起こしやすい部位(以下に記載)に対してマッサージをしたり、ストレッチを行うことが重要になり、自分で関節を少しでも動かせる人は動く範囲で動かすことが重要です。
 
また、皮膚や筋肉を温める「温熱療法」も効果的です。温熱療法は副交感神経を高めることも可能になるので、リラックス効果を得ることができます。

リラックスすることで体の余計な力みが抜けて、その後のマッサージやストレッチの効果が高まりやすくなるという側面もありますのでおすすめです。

 

拘縮を起こしやすい場所

  • 肩関節
  • 手指関節
  • 股関節
  • 膝関節
  • 足関節(足首)
この5つの部位が拘縮を起こしやすい主な関節になりますが、私の経験上、骨盤の動きはとても制限されやすいです。
 
ここでは細かく説明しませんが、骨盤の動きは背骨や股関節・膝関節・足関節などと連動して動くのですが、骨盤の動きが悪い人はこのような場所にも影響を及ぼします。つまり、骨盤の動きが阻害されると「悪い連鎖が起こる」と理解していただけたらと思います。
 
ここで理解していただきたいのは、関節と書いてますが上述したように軟部組織が原因になって結果的に関節が動かなくなっているということを理解してください。
 
つまり、各関節に関わる皮膚や筋肉、筋膜などへのアプローチが大切ということになります。

【関連記事】
筋膜とは?トリガーポイントとは?筋膜の機能異常をどう捉えるか。
マッサージや筋膜リリースの強さはどのくらいがいいの?『リリースの階層』について解説をします。


それでは、以下にマッサージやストレッチを行うと良い筋肉を一部ご紹介していきます。

  • 小・大胸筋 → 肩に関わります
  • ハムストリングス → 膝に関わります
  • 大腿直筋 → 股関節・膝に関わります
  • 大内転筋・薄筋・縫工筋 → 股関節に関わります
  • 腓腹筋 → 膝・足首に関わります
小胸筋 大胸筋胸肋部  大胸筋鎖骨部

ハムストリングス(半腱様筋・半膜様筋・大腿二頭筋) 大腿直筋・長短内転筋・内側広筋・縫工筋・薄筋 

ここで挙げた筋肉をマッサージしたり、ストレッチしたりすることで拘縮を予防することができます。関連記事にいくつか方法を詳細にまとめていますので、合わせてお読みいただけたらと思います。

【関連記事】
介護予防の鍵となる筋肉『大腿四頭筋』の概要と筋膜リリース・ストレッチ・マッサージ方法
介護予防の鍵となる筋肉『大殿筋・中殿筋』の概要と筋膜リリース・ストレッチ・トレーニング方法
介護予防の鍵となる筋肉『腸腰筋』の概要と筋膜リリース・ストレッチ・トレーニング方法
介護予防の鍵となる筋肉『脊柱起立筋』の概要と筋膜リリース・ストレッチ・トレーニング方法

 

まとめ

拘縮の意味や原因、予防方法、強直との違いについて説明しましたがいかがでしたでしょうか。

簡単にまとめます。

  • 拘縮と強直の違いは重要
  • 拘縮とは改善できるもの、強直は改善が難しいもの
  • 拘縮は大きくまとめると関節を動かさないことで起こるもの
  • 拘縮が起きる前から予防していくことが重要であること
  • 予防や改善にはマッサージやストレッチ、温めることも重要であること

大きくまとめるとこの5つがポイントになります。

こちらの記事が少しでも参考になれば嬉しいです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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井上 直樹
(同)Relate・(同)ALLMERU代表社員/理学療法士の井上直樹です。 このサイトでは一般の方に向けたリハビリの基本的な情報発信を行っております。また、不定期ですが雑誌や新聞などのマスメディア・WEB上のメディアにも情報提供を行っております。リハビリについての適切な情報発信は現在少ないのが現状です。リハビリのことはリハビリの専門職種(理学療法士・作業療法士・言語聴覚療法士)が情報発信するべきだと考えています。コンセプトは誰にでも理解できるように分かりやすく解説していくことです。リハビリに関わるコンサルティング事業を展開しております。お仕事依頼もお気軽にお問合せくださいませ。