もうずいぶん前にトリガーポイントの概要について記事を書きました。
しかし今一度読み返してみると、だいぶざっくりとしか書いていないということと、まだブログ運営も浅いためにライティング技術不足も否めないということに気がつきました。
それでも、要約して専門家でない方に伝えるという意味ではこの位で十分かなとは思っていますが、最近は筋膜のことを今まで以上に勉強をしているのと、だいぶ臨床に落とし込んでいるということもあり、以前の記事をリライトするのではなく、改めて記事を書こうと思い至りました。
私が臨床で筋膜にアプローチしている方法は、ロルフィング技術を用いた筋膜リリースとトリガーポイント療法ですが、ロルフィングは治療という概念よりもコンディショニング要素が強く、筋膜の状態の評価に使えるというように私は実感しています。
筋膜リリースをしていると、トリガーポイントを見つけやすく、そこを集中的にアプローチをするといった方法を用いています。
勉強をして臨床を日々行ってきて、筋膜の機能異常に対してちょっとした疑問も感じている今日この頃です。
筋膜の状態を理解するのには諸説ありますが、やはり竹井先生が仰っていることがエビデンスレベルも高く、納得できる考え方であるということを日々感じています。
改めて筋膜とは何か?トリガーポイントとは何か?
私なりの経験と勉強して解釈していることをまとめてみます。
あくまでも個人的な見解であることをご理解ください。
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筋膜とは
竹井 仁先生が執筆された書籍を参考に解説をしていきます。
筋膜とは狭義でいえば筋肉を包んでいる膜組織であり、英語では「Myofascia」といいます。
膜を広義でいえば、靭帯や関節包、腱膜支帯、等々をも包み、身体全体を覆っているため第二の骨格とも言われます。
英語では「Fascia」といいます。
よく筋膜の説明では、筋膜は全身を包むことや筋膜の連結ということは説明されていますが、私の知る限りでは「層構造」のことを細かく説明されているものが殆どありません。
それを分かりやすく説明しているのが、竹井先生の著書です。
以下に層構造について解説していきます。
筋膜は5層構造となり、それぞれ表層部分から、
- 浅筋膜
- 深筋膜
- 筋外膜
- 筋周膜
- 筋内膜
この5層構造となっています。
浅筋膜は皮下組織の脂肪層の中にあり、毛細リンパ管も存在するため、皮膚と浅筋膜の滑らかな動きは、むくみを防ぐ役割もあります。
深筋膜は3層構造となっており、各層の間にはヒアルロン酸が分布し、各層が動きやすいようにできています。
深筋膜と筋外膜の間にもヒアルロン酸が分布し、お互いが滑らかに動くようになっています。
また、筋内膜は筋繊維の1本1本の中にまで入り込み、ヒアルロン酸によって滑らかに動くようになっています。
つまり、筋内膜は筋繊維に影響を及ぼします。
結果的に、筋肉そのものにも影響を及ぼし、筋力低下・筋出力(筋力を発揮する力)低下なども引き起こすということになります。
筋膜は何からできている?
筋膜はコラーゲン(膠原)繊維とエラスチン(弾性)繊維からできていて(コラーゲン繊維の方が多い)、コラーゲン繊維は外部から力が加えられれば、形をうまく変えることができます。
つまり、コラーゲン繊維はうまく身体の形を変えたり、整えたりすることができ、引っ張られてもその力に耐える強度があります。
一方で、エラスチン繊維はコラーゲン繊維に交じり合いながら存在し、伸び縮みする繊維のため、元の状態に戻してくれる働きがあります。
このように、コラーゲン繊維とエラスチン繊維はお互い協力し合いながら筋膜の状態を調整しています。
筋膜に問題が起こるとはどういうことか
筋膜の機能異常を起こす原因は、
- 悪い姿勢
- 偏った動作
- スポーツなどの同じ動きの繰り返し
- 同じ姿勢を長時間続ける
- 怪我
このようなことで筋膜に機能異常が起こります。
では、筋膜の機能異常とはどういうことなのか。
筋膜の機能異常とは
簡単に要約してしまうと、それぞれ各層の筋膜同士の滑りが悪くなったり、よじれてしまうということです。
その原因は、基質(水分やヒアルロン酸)が粘っこくなり、コラーゲン繊維とエラスチン繊維の動きを妨げてしまうことです。
つまり、筋膜は脱水を起こし、ヒアルロン酸が凝集し、粘性が強くなります。
凝集してしまった部分を本書では「高密度化」と表現しています。
その高密度化してしまった部分は筋膜の滑りが悪くなり、筋膜の各層同士には痛みを感じる受容器(自由神経終末)が豊富なため、刺激を受け、痛みとなって現れます。
筋膜の機能異常が起こると、その異常を他の部分で補い合う代償が生じます。
そして、深筋膜を介して、広い範囲へ筋膜の機能異常が波及していきます。
また、筋膜は血管や神経、リンパ管を支持し通過しているため、筋膜のよじれや滑走不全などにより筋肉や血管、神経にまで影響を受けることがあります。
簡単ではありますが、ここまでが竹井先生が示す筋膜と筋膜の機能異常の理論です。
では、続いてトリガーポイントの理論です。
トリガーポイントとは
トリガーポイント療法は割とメジャーな治療法ですし、やられている方も多いと思います。
私もそのうちの1人ですが、トリガーポイントの考え方、捉え方は竹井先生が示しているものとは異なったものです。
トリガーポイントが引き起こす痛みを筋筋膜性疼痛症候群(MPS)といいますが、痛みを引き起こすメカニズムは以下の通りです。
悪い姿勢や動き、怪我などによって筋膜内でピーンと張ったロープ上の硬結(しこり)が引き起こされます。
そのしこりは「索状硬結」と呼ばれ、その部分は血流が阻害され、酸素欠乏になります。
酸素欠乏が起こると、血液中の痛みを感じる物質(ブラジキニンなど)が放出され痛みを感じます。
その痛みは索状硬結部分だけでなく、筋膜の連結上で離れた部分にも痛みを引き起こす「関連痛」が起こります。
これは筋膜だけでなく、筋肉にも起こるとされており、筋肉にトリガーポイントが形成された場合、関連痛は「神経筋反射回路」の機能障害に関係していると示されています。
このメカニズムによって身体の痛みの信号を誤って受け取り、他の部位で痛みを感じてしまいます。
トリガーポイントが形成されている部位は、圧迫することで、脊髄で痛みを軽減する化学物質が作られ、これにより筋肉が緩み、関連痛パターンが軽減されるというものです。
筋膜に起こる機能異常をどう捉えるか
私はこれまでトリガーポイントで示されている理論をベースとしてやってきました。
筋膜には血管も通っているため、虚血圧迫法などで血流がよくなればトリガーポイントを不活性化させ、痛みを軽減・消失させることができます。
また、筋肉内にできたトリガーポイントの圧迫は上記メカニズムによって痛みを軽減することができます。
これは実際に経験として改善します。
でも、何となくスッキリしない部分がありました。
筋膜は層構造になっていますが、ここについて詳細に触れている理論はなかったからです。
また、筋膜の状態がよくなってくると、筋力トレーニングをしなくても筋力がうまく発揮することができるようになるということを臨床経験で感じ、筋膜の機能障害が筋肉に悪影響を与えるのではないか?ということも実際に感じていたからです。
そういう意味でも、トリガーポイントの理論はもちろん理解できますし、1つの理論としてもあると思います。
ただ、竹井先生が示している筋膜の考え方はこれまでなかった考え方で、非常にエビデンスレベルも高いです。
個人的にも竹井先生が示す理論を読んで、なんかスッキリした気分で腑に落ちたという感じです。
私の解釈としては、トリガーポイントが作られる原因は筋膜の各層同士によじれや滑走不全が起こる高密度化。
この高密度化をリリースすることで、筋肉にも好影響を与える。
筋膜を整えてから選択的にストレッチをする、筋力トレーニングをすることや、その他運動療法、ヨガやピラティスのようなボディワークをするというのが効果的である。
今ではこのように捉えています。
筋膜マニュピレーションという手技
竹井先生が開催している、理学療法士を対象とした筋膜マニュピレーションのコースがあります。
この理論を学びたいと思い、コースに応募しましたが、相当人気があるようで残念ながら2回抽選もれしてます…
まあ、行けるかも分かりませんし、いずれにしても当面は行けませんね…
ただ、結果的に筋膜マニュピレーションで提示している高密度化の起こりやすい部分は、トリガーポイントや東洋医学でいう経穴と7〜8割一致しているようなので、筋膜の機能異常は竹井先生の理論で捉え、手技としてはこれまでやってきた方法でやっていければいいかなぁと思っています。
トリガーポイント療法は昔からやられている技術ですし、実際に改善することも多いです。
筋膜の捉え方など様々ありますが、自分が勉強して経験してきたことを積み上げ、自分なりに体系化していけたらいいのかなぁと考えています。
最後に
竹井先生が執筆している書籍は筋膜以外にもたくさんありますが、一般書も専門書もすごく良書です。
筋膜系の書籍は一般書でもたくさんありますが、「筋膜はがし」みたいな、いい加減なものが多いのも事実です。
専門書はかなり理解するのには難しいですが、筋膜治療を行う専門家の方は持っていて損のないものです。
筋膜の勉強を始めてする方やこれからやってみたい方は一般書からでも十分勉強になります。
専門家でない方はどんな本を買ったらいいか分からないと思いますが、竹井先生が執筆しているものなら間違いありませんので、是非手にとって読んでみてください。
それでは、少しでも参考になれば幸いです。
Luigi Stecco 医歯薬出版 2011-09-01
Luigi Stecco,Carla Stecco 医歯薬出版 2011-09-01
Robert Schleip 医歯薬出版 2015-06-01
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