疾患別リハビリテーション
スポーツ傷害に多い膝の痛み『鵞足炎』の原因・リハビリを含めた治療方法について解説します。
<2017年9月25日修正・追記>
理学療法士の井上(@Rehacon)です。
膝の痛みを起こす疾患は沢山ありますが、スポーツ傷害で起こりやすい膝の痛みとして、「鵞足炎(がそくえん)」とよばれるものがあります。
鵞足炎は膝の痛みに似た症状が出ますが、実は膝の関節そのものの痛みではありません。
今回は鵞足炎についての概要とリハビリについて解説していきます。
[ad#adsense]
鵞足炎とは
まず「鵞足(がそく)」となぜ呼ばれるのか。
下の画像を見ていただくと、鵞足といわれるところは、
- 縫工筋(ほうこうきん)
- 薄筋(はくきん)
- 半腱様筋(はんけんようきん)
これら3つの筋肉の腱(スジ)が付着するところが同じ場所になります。
ここの見た目が「ガチョウの足の形と似ている」ということから鵞足と呼ばれます。
そして鵞足部分に炎症を起こすことを鵞足炎と言います。
補足
太もも裏の筋肉をハムストリングスといいますが、半腱様筋はハムストリングスを構成する筋肉の1つになります。
鵞足炎の症状・原因
鵞足部分を見ていただくとお分かりいただけると思いますが、膝のお皿の下・内側部分に痛みを生じます。
鵞足部分を押すと痛みの出る圧痛、膝や股関節の動きによって痛みが出る、歩き出しが痛いなど、「痛み」が主な症状となります。
痛みを引き起こす原因は、鵞足部分に繰り返し機械的なストレスが加わることで炎症が生じ、痛みを引き起こします。
機械的なストレスが加わる要因としては以下が挙げられます。
- オーバーユース(使い過ぎ)
- マラソンやステップを踏むような急な方向転換が起こるスポーツ
サッカー、バスケ、ラグビー など
- 膝が内側に入る膝の外反(X脚)
- 距骨下関節の過回内(X脚を起こす要因の1つ)
- サイズの合っていない靴 など
根本的にはスポーツによるものなど「使い過ぎ」が原因となることが多く、膝の曲げ伸ばしが繰り返されることで腱(スジ)と腱が付くすねの骨(脛骨)が擦れたり、腱と内側に付いている靭帯が擦れることで炎症を引き起こします。
鵞足炎の診断と治療
診断
鵞足部分の炎症が特徴的ですので、鵞足部分の圧痛や運動時に鵞足部分に痛みが出るかなど問診での確認で診断されます。
レントゲンによって鵞足炎と診断されることはありませんが、疲労骨折や骨腫瘍がないかなどの鑑別診断をするためにレントゲンやMRIを撮ることがあります。
治療
痛みがまだそれほどひどくない場合では「安静」が選択されます。
痛みがひどく重症化してしまっている場合は、湿布や消炎鎮痛剤が処方されたり、場合によっては注射が行われることもあります。
鵞足炎のリハビリ治療と予防
炎症による痛みが主症状となることから、「炎症を抑える」ということがまず必要となります。
炎症を抑える方法
リハビリにおいて炎症を抑える基本的な方法は「アイシング」となります。
また、物理療法としては「超音波療法」が適応されることがあります。
超音波療法は、炎症を抑制・治癒を促進する効果や痛みを緩和させる効果があります。
筋筋膜に対するトリガーポイント療法
鵞足を構成する3つの筋筋膜そのものにトラブルが起きていたり、膝の内側の痛みでは、鵞足炎に似た症状をトリガーポイントが引き起こすことがあります。
その場合、トリガーポイント療法によって痛みの軽減が期待できます。
セルフケアでも行えますので是非やってみてください。
鵞足炎に対するトリガーポイント療法
鵞足炎に対するストレッチと筋力トレーニング
ストレッチ
筋力トレーニング
筋力トレーニングは痛みが治まってから少しずつ痛みの範囲内で行うようにしてください。
インソール療法・動き方の修正
インソール療法
鵞足炎を起こす原因の1つに「距骨下関節の過回内」を記載しました。
距骨下関節の過回内を起こす多くの原因は「足のアーチが崩れていること」です。
足のアーチを整えるにはインソール(中敷き)を入れることや足のアーチを整える運動が必要になります。
距骨下関節や足のアーチについては以下の記事で説明していますので、合わせてお読み下さい。
動き方の修正
スポーツにより鵞足炎を引き起こすことが多いということはここまで説明してきた通りです。
痛みが治り、スポーツに復帰をしたとしても再発を繰り返したら意味がありません。
そのためには、競技特有の動きがありますので、その動きに合わせて動きを修正していくということで再発予防となります。
身体の動きの専門家である理学療法士などにご相談してみて下さい。
まとめ
鵞足炎の概要と治療方法について解説しましたがいかがでしたでしょうか。
スポーツ傷害で多い疾患の1つになります。私も以前の職場ではよく鵞足炎の方を担当しました。
どんな疾患でもそうですが、重症化する前に適切な診断と治療を受けるためには、まず病院受診することが大切です。
参考になれば幸いです。
コメントを残す