PT井上(@Rehacon)です。
今回は久しぶりに内科系の記事です。
みなさんは、『COPD』という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
最近はCMでも時々見られるようになってきましたので、言葉自体は知っている方もいるかもしれません。
COPDとは、呼吸器系の病気になります。
今回は、呼吸器系疾患である『COPD』についての概要とリハビリテーションについて解説していきます。
【key word】COPD・慢性閉塞性肺疾患・タバコ・リハビリ
【対象者】一般の方・看護師・新人療法士・療法士学生・看護学生 など
COPDとは
Chronic Obstructive Pulmonary Diseaseの頭文字をとった略語になります。
日本語では「慢性閉塞性肺疾患(まんせいへいそくせいはいしっかん)」といいます。
日本語から考えると、「慢性」・「閉塞性」・「肺」というキーワードを考えていただけると分かりやすいかもしれません。
COPDはタバコなどの有害物質の影響により、肺に慢性的な炎症が起こっている状態です。
慢性炎症が起こることで、気道が塞がれ呼吸がしにくくなる病気です。
COPDは「肺の生活習慣病」といわれています。
木田 厚瑞 日本放送出版協会 2010-12-18
COPDの原因
上でも説明した通り、有害物質や大気汚染の影響で起こります。
その中でも、「タバコ」は極めて高い原因の1つとされており、日本人のCOPDはおよそ9割以上がタバコが原因といわれています。
COPDをもう少し詳しく説明します
肺に慢性的な炎症が起こることは説明しました。
どういうことかもう少し詳しく説明しますと、肺の奥には「細い気管支」とその先にはぶどうの房のような構造をしている「肺胞(はいほう)」という部分があります。
慢性的な炎症は、細い気管支や肺胞に起こります。
気管支に炎症が起こると、浮腫(むくみ)が起こり、痰(たん)が溜まります。
つまり、浮腫と痰で気道が狭くなり呼吸がしづらくなります。
これを厳密には「慢性気管支炎」といいます。
また、肺胞には伸縮性があり、空気が入れば広がり、なくなればしぼむという機能があります。
ところが、COPDでは肺胞にトラブルが起き、最初は炎症が起きたとしても修復されるように人間の体は働きますが、また炎症を起こすというように炎症と修復を繰り返します。
この結果、肺胞は破壊され伸縮性は損なわれて、呼吸するのが苦しくなってくるということになります。
これを厳密には「肺気腫(はいきしゅ)」といいます。
慢性気管支炎と肺気腫を含むものを『慢性閉塞性肺疾患(COPD)』といいます。
COPDの診断
このあたりは専門外なので、細かくは割愛しますが、ざっくりと説明します。
詳しくは医師にご相談ください。
- 問診
・喫煙歴
・日常生活で息切れがする
・3週間以上続く咳(せき)や痰(たん)
・ヒューヒュー音がする など
- 呼吸機能検査
・スパイロメータを使用:スパイロメータを簡単にいうと、一気に息を吸って、どれだけ多くの息を吐き出せるかをスパイロメータという機器を使って検査するものです。
- 画像診断
・レントゲン
・CT
- パルスオキシメータ、6分間歩行試験
・パルスオキシメータは、血の中にどれだけ酸素が取り込まれているのかというのを調べます。
これを「動脈血酸素飽和度」といいます。
・6分間歩行試験は、平地なところを歩いてもらい、この動脈血酸素飽和度がどの程度なのかというのを検査します。
パルスオキシメータは一般的にも買いやすくなりました。
血圧や脈拍と一緒に簡易的に検査できる優れものです。
一家に1台という日も近いうちくるかもしれません。
COPDの治療方法
主に「薬物療法」・「栄養療法」・「呼吸リハビリテーション」が行われます。
COPDでは、肺胞が壊れてしまう肺気腫が起こると説明しました。
肺胞が一度壊れてしまうと、残念ながら元の状態に戻すことはできません。
大事なのは早期発見と予防です。
予防していくことで、症状の緩和や症状の進行を防ぐことが可能となります。
そのため、しっかり処方された薬を内服し、栄養をしっかり摂り、運動療法をはじめとした呼吸リハビリテーションを継続していくことが治療のポイントとなります。
COPDに対する呼吸リハビリテーション
COPDの方でまず大切なのは「セルフマネジメント」です。
COPDは慢性的な病気であり、中長期で治療を考えていかなくてはなりません。
リハビリで運動療法を行いますが、どの程度の運動量で、そして運動の質がどんなもので呼吸が苦しくなるのかを理解することはリスクマネジメントとなります。
そこを前提として、リハビリの解説をしていきます。
COPDに対するリハビリで一番の主訴となるのは「呼吸困難感」です。
呼吸が苦しくなることで、活動量が低下し、日常生活の質が低下(QOLの低下)、外出しなくなる、引きこもりがちになるなどと悪循環に陥ってしまいます。
つまり、COPDに対するリハビリはまず「呼吸困難感」を軽減するということ、呼吸困難感が出た時にうまくセルフコントロールできるようになること。
これが重要です。
呼吸困難感を軽減する方法
呼吸をして酸素が体内に入ると肺は広がります。
肺が広がるには、肺そのものの柔軟性ともう1つ重要な要素があります。
それは、「胸郭(きょうかく)の柔軟性」です。
肺の膨らみを邪魔しないように胸郭も一緒に広がる必要があります。
私の経験では、胸郭の柔軟性を保つということは呼吸器疾患あるない関係なく、非常に重要だと感じています。
療法士に徒手的に行ってもらうことも大切ですが、セルフケアをすることも可能です。
また、胸郭の柔軟性を保ち、それと合わせて呼吸筋・呼吸補助筋のトレーニングやセルフケアも必要になります。
呼吸筋・呼吸補助筋の柔軟性を保ち、強化されると酸素を取り込める量が増え呼吸が楽になります。
胸郭、呼吸筋・呼吸補助筋のトレーニング・セルフケア
胸郭や呼吸筋・呼吸補助筋のトレーニングやセルフケアは以下の記事で動画・写真付きで解説していますので、合わせてお読みください。
呼吸が苦しくなったときのパニックコントロール
上述しましたが、呼吸が苦しくなった時に自らセルフコントロールできるようになることがリスクマネジメントとなり、重要になります。
これを「パニックコントロール」といいます。
下のイラストをみていただくとわかりますが、ポイントは「身体を丸めるということ」です。
立っている時・座っている時・横になっているときと、息苦しさが出たときにどのようにすると呼吸が楽になるのかを覚えておきましょう。
呼吸器疾患に対するエビデンス(科学的根拠)と運動療法
COPDに限らず呼吸器疾患に対して、下半身の筋力を強化することは非常に有効とされています。
また、全身の持久力をつけ、体力アップすることも重要です。
つまり「有酸素運動」が効果的です。
下半身の筋力を効果的につけ、なおかつ全身の持久力を改善させる方法は以下の通りです。
- 自転車エルゴメータ
- トレッドミル
- ウォーキング
- 階段昇降 など
このような運動をする時は、息を止めるような無酸素運動は運動負荷が強いのでよくありません。
呼吸をしながら行える程度の負荷量で行うようにしましょう。
私の臨床経験上、効果を感じていること(専門家向け)
呼吸筋や呼吸補助筋をそれぞれストレッチするのももちろんいいのですが、筋膜の繋がりという観点から考えてみたいと思います。
前鋸筋自体は呼吸筋ではありませんが、肩甲骨や肋骨の動きに作用します。
トリガーポイントも起こしやすい筋肉であり、胸郭の動きに非常に重要な筋肉だといえます。
また、呼吸補助筋でもある「内・外腹斜筋」や「大小菱形筋」と筋膜の繋がりがあります。
さらに、主な呼吸筋の1つでもある内・外肋間筋は内・外腹斜筋とも繋がりがあります。
つまり、この筋膜の繋がりの要素を意識してストレッチしてもらうと呼吸がしやすくなるという印象を持っています。
このストレッチはヨガでも有名な「三角ポーズ」というものです。
呼吸器疾患があるない別として、スポーツ場面や日頃のストレス解消、腰痛、肩こり、便秘の改善などにも効果があるといわれています。
介護予防の現場でも使えます。
是非試してみてください。
注意
このストレッチをすることで、痛みなどが出る場合は中止してください。
まとめ
COPDに対する概要とリハビリテーションについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
ポイントを以下に羅列します。
- COPDは慢性気管支炎、肺気腫を含むものをいう。
- 原因はタバコであることが殆ど。
- 治療は、薬物療法・栄養療法・呼吸リハビリテーションが中心である。
- リハビリでは「呼吸困難感」の軽減と「パニックコントロール」ができるようになることが重要。
- 下半身の筋力強化と持久力の向上を目指す。
- 胸郭と呼吸筋・呼吸補助筋のトレーニング・セルフケアを継続していくことが重要。
こんなところを理解しておくといいのかなと思います。
最後に専門家向けにCOPDのガイドラインを添付しておきます。参考にしてください。
それでは、少しでも参考になれば幸いです。
ありがとうございました。
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