手首の骨折「橈骨遠位端骨折」の症状や分類・手術・リハビリ・セルフケアについて解説します。


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PT井上(@Rehacon)です。

高齢者で多い骨折の1つである「橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ)」

いわゆる「手首の骨折」になります。
 
高齢者で多いのですが、若い方でも高いところから転落して手をつくなどすると起こりやすい骨折でもあります。
 
この手首の骨折は、リハビリがうまく進まないと関節の動きが制限され、日常生活にも影響する可能性があります。
 
今回は「橈骨遠位端骨折」に対する概要とリハビリの基本を中心とした治療方法について解説していきます。

【骨折の部位別記事はこちら】
脊椎圧迫骨折(背骨の骨折)のリハビリテーション
大腿骨頚部骨折(人工骨頭置換術)のリハビリテーション
肋骨骨折のリハビリテーション
上腕骨近位端骨折のリハビリテーション

 
 
【key word】橈骨遠位端骨折・コーレス骨折・スミス骨折・リハビリ・セルフケア
【対象者】一般の方・療法士学生・看護学生・看護師・介護従事者 など
 

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橈骨遠位端骨折を起こす原因

高齢者であれば、転倒して手をついて発症することが多い骨折です。
 
特に女性で閉経後の方は骨が弱くなりますので、折れやすくなります。
 
若い方でも、高いところから転落したりすると同様に骨折が起こります。
 
例に挙げます。
 
  • 交通事故
  • 日曜大工で脚立から転落する
  • スノーボードやスキーによる激しい転倒   など

 

橈骨遠位端骨折の分類

主に2つに分類されます。
 
  1. コーレス骨折
  2. スミス骨折
 
 

コーレス骨折

橈骨の骨片が背側(手の甲側)へ転位してしまう骨折。
 
「手のひら」をついて起こる骨折です。
※引用画像:日本骨折治療学会
コーレス骨折
 

スミス骨折

橈骨の骨片が掌側(手のひら側)へ転位してしまう骨折。
 
「手の甲」をついて起こる骨折です。
 
単純ですが、手をついた側とは逆方向に折れた骨が動いちゃう骨折です。
 
※引用画像:日本骨折治療学会
スミス骨折
 
 

橈骨遠位端骨折の症状

 
  • 比較的すぐに痛みが出る
  • 腫脹(腫れる)
  • 関節の動きが制限される
  • 骨折がひどい場合、ズレて変形してしまうこともある
 
 

橈骨遠位端骨折の合併症

腫れてしまうことで「手根管(しゅこんかん)」を圧迫し、「正中神経麻痺」を起こすことがあります。
※引用画像:日本整形外科学会 
手根管
 
※正中神経麻痺についてはここでは割愛させていただきます。
 
 

橈骨遠位端骨折の診断

レントゲンCTで確認されます。
 
手術が必要か、ギプス固定などの保存療法で可能なのかを判断します。
 
 

橈骨遠位端骨折の治療方法

手術

「整復(せいふく)」をしてもズレてしまう場合や綺麗に整復されない場合は手術が選択されます。
 
補足

整復とは、骨折や脱臼などを元の正常な位置に戻すことをいいます。
 
手術は折れた部分を綺麗に整復するためにプレートやスクリュー、ピンを使用し、「固定術」が基本的に行われます。
 
※引用画像:日本骨折治療学会
コーレスオペ後
 
 

保存療法

骨折に殆どズレが見られない場合は、そのままギプス固定されます。
 
期間については、グルトの骨癒合期間では約5週間とされています。1ヶ月くらいと思ってもらえればいいです。
 
 
但し、私の臨床経験上では4週でギプスがオフとなる方もいますし、6週や7週の方もいます。
 
つまり、「骨折の癒合状態」によって、固定期間が延長する場合もありますので主治医の指示に従ってください。
 
 

橈骨遠位端骨折のリハビリテーション

注意!

ここで示す期間は、あくまでも基本的に言われていることになります。
 
これまで説明してきた通り、年齢や性別、骨の癒合具合など様々な要素で遅延することもあり、術式によっても変わることがあります。
 
あくまでも参考程度で理解してください。
 
 

手術(掌側ロッキングプレート固定術)をした場合

術後〜2週

手首・前腕の関節をやさしく動かします。
 
ポイントはやさしく行うこと。
 
リハビリテーション業界では「愛護的」と表現されます。
 
熱感があればリハビリ後に「アイシング」をします。
 
術後は血行不良や組織の侵襲でむくみます。
 
そのため、むくみ予防で手指を他動(療法士に動かしてもらう)、自動(自分でも動かす)で極力動かします。
 
あとは肘や肩など手首以外のところを「廃用症候群の予防」で動かすことが必要です。
 
 

2週〜6週

温熱療法やマッサージを行い、軟部組織をケアしてから関節の運動を行います。
 
少しずつ低負荷での筋力トレーニングも開始します。
 
ポイントは「低負荷」というところです。
 
 

6週以降

手術の状態や骨の状態によって遅れることもありますが、「積極的」な筋力トレーニングを行っていきます。
 
手首の状態に応じて日常生活での動作も合わせて練習していきます。
 
(例)
  • 雑巾を絞る
  • 窓を拭く
  • 調理(フライパン返しなど) など
 
当然、この時期も軟部組織のケアをしてから運動をすることで効果的になります。
 
 

保存療法の場合

ギプス固定をしますが、「約5週間」でギプスは外れます。
 
ただし、その5週間の間何もしないかというとそうではありません。
 
骨折すると、術後と同じように周辺部位は「血流不足」になります。
 
血流不足を起こすとむくみます。
 
むくみ予防のために、まずは「手指」を動かすことが必要で、手術のところで説明した通りです。
 
あとは肘や肩など手首以外のところを動かします。
 
この目的としては、
  • むくみ予防
  • 手首以外の関節の動きを固くならないようにすること
  • 筋力を落とさない
 
つまり、むくみ予防にプラスして「廃用症候群の予防」が必要ということになります。
 
術後のリハビリと同じですね。
 
 

5週〜6週

ギプスが取れたら、少しずつ手首の運動が開始されます。
 
固定期間があるとどうしてもその周囲の皮膚や腱、筋筋膜などの軟部組織は癒着したり、硬くなったりします。
 
軟部組織に対して、やさしくマッサージを行うことや、暖めることは有効な手段になります。
 
手指や肘、肩の関節を動かす運動は引き続き継続します。
 
 

8週〜10週

手首を動かす運動は痛みの範囲内で「積極的」に行います。
 
少しずつ手首の「筋力トレーニング」も始めます。
 
軟部組織のマッサージなどのケアと手指や肘、肩の関節を動かす運動は引き続き継続します。
 
 

10週以降

手首は積極的に動かして、筋力トレーニングも積極的に行います。
 
軟部組織のマッサージなどのケアと手指や肘、肩の関節を動かす運動は引き続き継続します。
 
 
いかがでしょうか。
 
これを見ていただいて分かると思いますが、期間が違うだけで、基本的にやることは殆ど同じような内容になります。
 
 

セルフケア・セルフトレーニングのご紹介

手首ですので、自分でもマッサージをしたり、暖めることはできます。
どの部分をマッサージしたらいいかは担当の理学療法士や作業療法士にご相談ください。
 
 

関節可動域の調整/ストレッチ

自主トレ1
【目的】手首(前後)の関節可動域の拡大
【方法】手のひら・手の甲を合わせ、ゆっくりと押す。
【注意点】手のひら・甲が離れないように行う。
 

自主トレ3
【目的】手首に関与する筋肉のストレッチ
【方法】肘をしっかり伸ばし、指の付け根あたりをもう一方の手で持ち、体側に引く。
【注意点】肘が曲がらないように行う。

 
マッサージなど軟部組織のケアをしてから行うと有効です。
また、入浴時にお湯の中で動かすのもいいです。浮力で動かしやすくなります。
 

筋力トレーニング

自主トレ2
【目的】手首(回す)の関節可動域の拡大と前腕の筋力強化
【方法】ペットボトルなどを利用する。肘を伸ばし手を前に出す。肘を伸ばしたまま左右へ回す。
【注意点】回す時に体が横に倒れないように行う。
 
自主トレ4
【目的】前腕(前側)の筋力強化
【方法】座って行います。手首の下にバスタオルなどを置いて実施してください。肘を机に置き手に持ったペットボトルを上に持ち上げます。
【注意点】肘が机から離れないように、肘が曲がらないように行って下さい。
 

自主トレ5
【目的】前腕(後ろ側)の筋力強化
【方法】座って行います。手首の下にバスタオルなどを置いて実施してください。肘を机に置き手に持ったペットボトルを上に持ち上げます。
【注意点】肘が机から離れないように、肘が曲がらないように行って下さい。

 
自宅では、ペットボトル(私はレモンジーナを使用しました。笑)を利用して行えます。
今ではインターネットでも重錘バンド(重り)や簡易的な鉄アレイなどもすぐに買える時代になりました。
そんなに高いものでもないですし、1つくらい持っておいてもいいかもしれませんね。
 
 
 

まとめ

橈骨遠位端骨折は比較的多い骨折の1つです。
 
以下にポイントを羅列でまとめます。
 
  • 橈骨遠位端骨折はコーレス骨折とスミス骨折に分けられる。
  • レントゲンとCTで診断される。
  • 骨折具合によって手術か保存療法に分かれる。
  • 手術をしても、保存療法でも期間が違うだけで、概ね同じような内容のリハビリになる。
  • 保存療法では、ギプス固定の目安は概ね5週間程度。
  • ギプス固定期間中も、むくみ予防と患部以外は廃用症候群予防が必要。
  • ギプスが外れてからは、少しずつ愛護的に関節を動かしていく。
  • 徐々に筋力トレーニングを行っていく。
  • 皮膚や腱、筋筋膜などの軟部組織のケアは常時行う。
  • セルフケア・セルフトレーニングは障害を残さないためには必要。
 
 
こんなところでしょうか。
 
どんな病気や怪我であっても、セルフケア・セルフトレーニングは重要になります。
 
少しでも参考になれば幸いです。
 
 
 
 

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ABOUTこの記事をかいた人

井上 直樹

リハビリテーションコンサルタントの井上です。 コンサルタントとはその道のプロが助言や指導をするという意味です。 リハビリについての適切な情報発信は現在少ないのが現状です。 リハビリのことはリハビリの専門職種(理学療法士・作業療法士・言語聴覚療法士)が情報発信するべきだと考えています。 コンセプトは誰にでも理解できるように分かりやすく解説していくことです。 どうぞよろしくお願いします。