足首の骨折『腓骨骨折』の原因・症状・リハビリ治療について解説をします。


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<2017年12月06日修正・追記>

理学療法士の井上(@Rehacon)です。

 
 
腓骨骨折(ひこつこっせつ)はスポーツなどによる外傷で起こりやすい骨折の1つですが、捻挫だと思っていたら実は腓骨骨折だったということがよくあります。
 
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腓骨は下腿(膝から下)の外側に位置しており、細い骨になります。
 
今回は、腓骨骨折の概要とリハビリを含む治療方法について解説をしていきます。
 

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腓骨の構造

 
腓骨
 
腓骨は膝下の外側にある骨で、細くて長い骨になります。
 
これまでいくつか骨折の記事を書いてきて伝えてきている通り、細い骨というのは単純に構造的に弱いため骨折をしやすいということになります。
 
腓骨も例外ではなく、外傷によって骨折をしやすい骨になります。
 
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腓骨が関与する関節

 
腓骨の上部はとなりの脛骨(けいこつ)と関節を作ります。
 
この関節を、
 
脛腓関節(けいひかんせつ)
 
といいます。
 
また、腓骨の下側は距骨(きょこつ)という骨と関節を作り、となりの脛骨と一緒に距腿関節(きょたいかんせつ)を作ります。
 
距腿関節(足関節)とは、いわゆる足首を指します。
 
脛骨・腓骨・脛腓関節 距腿関節 
 
 

腓骨骨折(足首の骨折)とは

 
腓骨骨折とは、この腓骨が折れることをいいますが、特に足首に近い部分の骨折が特徴的です。
 
これを腓骨の「遠位端骨折(えんいたんこっせつ)」といいます。
 
スポーツなどによって起こりやすい骨折になります。
 
この腓骨下に位置する外果(がいか)部分から距骨(きょこつ)という骨には「前距腓靭帯(ぜんきょひじんたい)」という靭帯があり、足首の動きを支えています。
 
足首の捻挫は内反捻挫が多いですが、狭義ではこの前距腓靭帯の損傷を指し、腓骨の遠位端骨折では前距腓靭帯が強制的に強く引っ張られ、剥がれてしまうことで起こります。
 
外果・前距腓靭帯
 
 

腓骨の役割

 
よく腓骨はあってもなくてもそんなに問題ない骨だと言われますが、決してそんなことはありません。
 
腓骨の主な役割は、足首の動きに影響を及ぼします。
 
例えば、足首を上に持ち上げた時、その動きを邪魔しないように腓骨は上に持ち上がり、足首を下ろせば腓骨は下に下がります。
 
この動きを、
 
腓骨の挙上(きょじょう)・下制(かせい)
 
といいます。
 
足関節と腓骨の動き
 
また、歩行時や走行時に地面からの衝撃を緩和する役割もあります。
 
 

腓骨骨折(足首の骨折)の症状と診断

 
腓骨骨折の症状は、腫脹(腫れ)や熱感などの炎症所見がありますが、これが捻挫と間違われやすいところで、必ず1度レントゲンを撮ることが重要です。
 
レントゲンを撮ることで腓骨骨折の有無が分かります。
 
引用画像:古東整形外科

 

腓骨骨折(足首の骨折)に対する治療とリハビリテーション

 
腓骨骨折に対する治療では、
 
  • 保存療法
  • 手術療法
 
このどちらかが選択されます。
 
骨折が酷い場合や、骨折面のズレが起きている場合などはプレートやスクリュー固定などの手術が行われます。
 
それ以外では主に保存療法が選択され、ギプス固定が一定期間必要になります。
 
ここでは主に、保存療法が選択された場合のリハビリについてを説明していきます。
腓骨の骨癒合(骨がつく)期間としては、グルトの骨癒合日数では、7〜8週とされています。
 
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一般的に行われるリハビリの内容としては、ギプス固定期間中とギプスカットしてからとで変わります。
 

 

ギプス固定期間中のリハビリ

ギプス固定期間中に行われるリハビリとしては、エコノミー症候群予防や患部以外の筋力低下を予防する目的で足の指の運動や、患部以外の筋力トレーニングが行われます。

【関連記事】
災害医療。『エコノミークラス症候群』について解説します。

 

リハビリの一例

タオルギャザー
足裏にタオルを敷いて、足の指でたぐり寄せる。

大腿四頭筋トレーニング
大腿四頭筋トレーニング(座位)

椅子に腰を掛け、膝を伸ばし、その状態を10秒~30秒間キープする。

写真では足首を上に持ち上げていますが、ギプス固定をしているときは足首は動かせませんので、膝を伸ばしてそのままの状態をキープするだけで問題ありません。
大腿四頭筋トレーニング
大腿四頭筋トレーニング(仰向け)
仰向け(背臥位)になり、片方の足は膝を立てる。

もう一方の足を10㎝程度持ち上げて、その状態を10秒~30秒間キープする。

写真では足首を上に持ち上げていますが、ギプス固定をしているときは足首は動かせませんので、膝を伸ばしてそのままの状態をキープするだけで問題ありません。
 

ギプスカット後のリハビリ

およそ2週経過すると、少しずつ荷重をかけていく運動が開始されます。
 
骨折状況に応じて、
  1. 体重の1/3
  2. 体重の1/2
  3. 体重の2/3
  4. 全荷重

と、少しずつ荷重量が増えていきます。

荷重量に応じて、
  1. 両手松葉杖
  2. 片手松葉杖
  3. 杖なし

と、杖の使用方法も変更していきます。

荷重量や荷重時期は、骨折の癒合具合によって個人差があります。主治医の指示に従ってすすめていくことが重要です。
 
 
その他のリハビリとしては、ギプス固定期間に起きた関節や周囲組織(皮膚や筋膜・筋肉など)の柔軟性を取り戻すことや筋力強化トレーニング、さらに、活動量が落ちていますので、体力面の向上を目的としたトレーニングが必要になります。
 
組織・関節の柔軟性を取り戻すために、足首周り・ふくらはぎ・脛(スネ)周りのマッサージやストレッチ、筋膜リリースなどの方法があります。
 
 

ストレッチ・筋膜リリース方法の一例

 

下半身(前側)筋膜リリース 足全体(裏側)の筋膜リリース 前脛骨筋筋膜リリース ふくらはぎ筋膜リリース

この方法の解説は以下の記事で詳細に説明していますので、合わせてお読みください。

【ストレッチ・筋膜リリース方法の解説記事】
理学療法士が教える 正しい足アーチのつくり方~基礎編~

 
また、筋力強化トレーニングも同様の部位をトレーニングすることが必要です。
 
 

筋力強化トレーニングの一例

下腿三頭筋トレーニング 前脛骨筋トレーニング
 腓骨筋群トレーニング
 
筋力トレーニングでは、セラバンドやスポバンドを使用するのもとてもおすすめです。

セルフケア・セルフトレーニング方法としては、以下の記事でまとめていますので合わせてお読みください。

 
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体力面の改善として病院でよく行われる方法は、トレッドミルや自転車エルゴメーターなどがあります。
 
スペースをとるのがデメリットですが、今は自宅でも行える器具も安価で売られていますので、こういうのを活用するのもおすすめです。
 
 
 
 

【合併症】腓骨神経麻痺による下垂足

 
腓骨骨折の合併症で「腓骨神経麻痺(ひこつしんけいまひ)」というものがあります。
 
腓骨神経麻痺が起こると下垂足になります。
 
腓骨神経麻痺の多くは、腓骨頭の下部分の圧迫が主な原因であり、この腓骨骨折では、ギプス固定が原因になることがあります。
 
また、腓骨骨折は遠位端骨折が多いですが、近位部の骨折もあり、骨の転位などにより起こることもあります。
 
腓骨神経麻痺については、以下の記事で詳細にまとめていますので、合わせてお読みください。
 
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まとめ

 
腓骨遠位端骨折の概要とリハビリテーションについて解説をしましたが、いかがでしたでしょうか。
 
ただの足首の捻挫だと思ってたら実は骨折していた。ということは決して珍しくありません。
 
捻挫だと思っても、まずは確定診断をしてもらうために整形外科を受診するようにしましょう。
 
早い診断とリハビリテーションがとても大切です。
 
それでは、参考になれば幸いです。
 
 

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井上 直樹
(同)Relate・(同)ALLMERU代表社員/理学療法士の井上直樹です。 このサイトでは一般の方に向けたリハビリの基本的な情報発信を行っております。また、不定期ですが雑誌や新聞などのマスメディア・WEB上のメディアにも情報提供を行っております。リハビリについての適切な情報発信は現在少ないのが現状です。リハビリのことはリハビリの専門職種(理学療法士・作業療法士・言語聴覚療法士)が情報発信するべきだと考えています。コンセプトは誰にでも理解できるように分かりやすく解説していくことです。リハビリに関わるコンサルティング事業を展開しております。お仕事依頼もお気軽にお問合せくださいませ。