肩『腱板損傷・腱板断裂』の原因・症状・リハビリ治療について解説をします。


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理学療法士の井上(@Rehacon)です。
 
 
肩は、構造的に見てみると非常に浅い関節になっています。
 
浅い関節が故に、肩が外れやすい構造になっています。いわゆる脱臼しやすいということです。
 
しかし、人間の身体というのはとてもよく作られていて、浅い関節を補うために筋肉や腱(スジ)・靭帯などで補強されています。
 
そのために、肩への負担が増えると、肩の安定性を担う筋肉や腱(スジ)の怪我が起こりやすいのも特徴です。
 
今回は、肩の安定性を担う筋肉や腱の概要と腱板損傷や腱板断裂の概要及びリハビリを中心とした治療の解説をしていきます。
 

 
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肩腱板の構造と役割

 
肩関節の構造  肩の構造(靭帯)
 
画像を見ていただくとお分かりいただけると思いますが、肩の関節は浅い構造になっていて、脱臼を起こしやすい構造になっています。
 
これらを補強するため、肩は各靭帯で補強され、さらに、
 
  • 棘上筋(きょくじょうきん)
  • 棘下筋(きょくかきん)
  • 小円筋(しょうえんきん)
  • 肩甲下筋(けんこうかきん)
 
この4つの筋肉が補強をしています。
 
この4つの筋肉の総称を、
 
回旋筋腱板(かいせんきんけんばん)といい、英語ではRotator Cuff(ローテーターカフ)といいます。
 
回旋筋腱板(ローテーターカフ)  回旋筋腱板(ローテーターカフ)
 
回旋筋腱板は肩の安定性に非常に重要なのですが、その分、負担も大きく怪我もしやすいということがいえます。

回旋筋腱板を略して腱板といっているだけです。
 
 

肩の腱板損傷・腱板断裂が起こる原因

 
肩の腱板損傷や断裂は上に説明した、回旋筋腱板の損傷や断裂を意味します。
 
この腱板損傷・断裂の原因として多いのが、スポーツによる傷害です。
 
野球などの同じ投球動作が繰り返されることや、テニス・バレーボール・ゴルフなどで同じ動作の繰り返し、使い過ぎなどで腱板が傷んでしまったり、バーベルなどの大きな負荷のかけすぎなどでも起こります。
 
また、加齢による腱板損傷もよくあります。長年使い続けてきた腱板が年齢とともに傷んでいきます。
 
これ以外にも転倒して腱板損傷や断裂を起こす方も珍しくはありません。
 
私の経験では、アルコールで酔っ払って転んで、腱板損傷を起こした人をたくさんみてきました。
 
このように、腱板損傷や断裂を起こす原因というのは多岐に渡りますが、一般的には、スポーツ傷害と加齢による傷害と理解してください。
 
 

肩の腱板損傷・腱板断裂の症状と検査

 
腱板損傷や断裂の症状は特徴的なものがあります。
  • 夜間痛
  • 運動時痛
  • 筋肉の萎縮
この3つが特徴になります。
 
 

夜間痛

夜間痛はその名の通り、夜間帯にズキズキ疼くような痛みで眠れないという症状ですが、この痛みのせいで睡眠不足など二次的なものも引き起こします。
 
 

運動時痛

 
腱板損傷や腱板断裂の有無を評価するために行われるテストとして、
  • painful arc test(ペインフル アーク テスト)
  • drop arm test(ドロップ アーム テスト)
この整形外科テスト法が用いられます。
 

painful arc test

painful arc test(ペインフルアークテスト) painful arc test(ペインフルアークテスト)
 
【方法】
  • 肩を横に持ち上げて(外転)もらう。
  • 60°〜120°で痛みが出現し、その他の角度では痛みが出ない場合、陽性。
 
【注意点】
  • 肩を持ち上げる時、体を横に倒しながら(体幹の側屈)持ち上げようとする「代償動作」に注意する。
painful arc test(ペインフルアークテスト)代償動作
 

drop arm test

drop arm test(ドロップアームテスト)
 
【方法】
  • 検者が肩を100°まで横に持ち上げた(外転)ところで離し、ゆっくりと手を下ろすように指示。
  • 90°を越えたところで急激に手が落ちた場合、陽性。
 
【注意点】
  • painful arc testと同様に手を下ろす際に、体が横に倒れる「代償動作」が起きないように注意する。

 

 

筋肉の萎縮

腱板損傷や断裂により肩を動かせなくなりますので、回旋筋腱板を構成する筋肉は萎縮が起こりやすくなります。
 
特にその中でも棘下筋の萎縮は分かりやすいので、触ってみて、左右差をみてみると分かります。
 
 

肩の腱板損傷・腱板断裂の診断

 
腱板損傷は五十肩や四十肩と初期症状が似ていることから、本当は腱板損傷でも五十肩だと思ってそのままにしている場合があります。

【関連記事】
「五十肩・四十肩」の診断や原因・症状・治療方法について分かりやすく解説します。
「五十肩・四十肩」に対するリハビリの基礎知識。誰でも分かるように解説します。

 
これはその後の回復にも影響を与えますし、まずは専門医に確定診断をしてもらうことが大切です。
 
問診・理学的検査(ペインフル アーク テスト、ドロップ アーム テストなど)・レントゲン・MRI検査で主に診断されますが、MRIを撮ることではっきりと分かります。
 
肩腱板MRI

引用画像:はらや整形外科

肩腱板MRI

引用画像:稲毛整形外科

 
 

肩の腱板損傷・腱板断裂に対する治療とリハビリテーション

  

腱板損傷や腱板断裂の治療は、保存療法が主に選択されます。
 
保存療法で改善がみられない場合や損傷具合が強い場合は手術が選択されることがあります。
 
ここでは保存療法による治療について説明をしていきます。
 
 
保存療法とは、手術などの外科的な治療ではない治療のことをいいます。
 
 
腱板損傷や腱板断裂の治療の目的は、痛みの改善と関節可動域の改善、肩の機能的な回復が目的になります。
 
そのために行われる方法として、
  • 痛みのコントロール・腱板への負担を軽減させる姿勢の保持
  • 肩周囲筋の柔軟性維持
  • 物理療法
  • 回旋筋腱板の筋力トレーニング
一般的にはこのような保存療法が行われます。
 
 

痛みのコントロール・腱板への負担を軽減させる姿勢の保持

腱板損傷や断裂がある場合、夜間痛があり痛みで眠れず、寝不足に陥ることがよくあります。
 
これはストレスになり、痛みの増悪や改善に大きく影響しますので、なるべくそうならないようにすることが大切です。
 
そのために安静時はクッションなどを使用して、患部に負担がかからないようにしましょう。
 
また、外出時などはアームスリングなどを使用して患部に負担がかからないようにすることも必要です。
 
 

肩周囲筋の柔軟性維持

腱板損傷や断裂により、肩を安静にしていると、その周りの筋肉の負担は増えます。
 
特に肩甲骨周りの筋肉や首周りの筋肉などは張りやすいのでケアすることをおすすめします。
 
マッサージやストレッチなどを行い、柔軟性を維持するようにしましょう。
 
できれば理学療法士などの専門家に行ってもらってください。
 
 

物理療法

物理療法では主に、痛みの軽減や筋肉の萎縮予防で行うことが目的となります。
 
よく病院で行われる方法としては、低周波治療(TENS)になりますが、家庭用低周波機器も安価で売られていますし、自宅でも手軽に行えますので参考にしてください。
 
 
 

回旋筋腱板の筋力トレーニング

回旋筋腱板の作用は、肩を横に持ち上げる(外転)、内側へ閉じる(内転)、左右へ回す(外旋・内旋)、後ろに引く(伸展)という動きに関与します。
 
肩関節の外転 肩関節の内転

肩関節の外旋 肩関節の内旋 肩関節の伸展

 
これらの動きを改善させるために筋力トレーニングは大切ですが、最初から負荷を大きくさせていくのではなく、少しずつ負荷量を上げていく必要があります。
 
負荷量は理学療法士などの専門家に聞いて行うようにしてください。
 

自宅でできるトレーニング方法の例

肩の外転・内転  回旋筋腱板トレーニング(肩の外旋・内旋)
 
お金をかけずにペットボトルなどで代用することも可能ですが、セラバンドやスポバンド、重錘バンドなどを使用するとより効果的です。
 
個人的にはスポバンドをおすすめします。

 
 
 

まとめ

 
腱板損傷・断裂の概要とリハビリを中心とした治療について解説をしましたが、いかがでしたでしょうか。
 
腱板損傷は比較的多いですが、適切な診断と処置、リハビリで十分改善できます。
 
五十肩や四十肩と間違いやすいと説明をしましたが、自己判断せず、まずは整形外科を受診して確定診断をしてもらうことが大切です。
 
それでは、少しでも参考になれば幸いです。
 
 

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ABOUTこの記事をかいた人

井上 直樹

リハビリテーションコンサルタントの井上です。 コンサルタントとはその道のプロが助言や指導をするという意味です。 リハビリについての適切な情報発信は現在少ないのが現状です。 リハビリのことはリハビリの専門職種(理学療法士・作業療法士・言語聴覚療法士)が情報発信するべきだと考えています。 コンセプトは誰にでも理解できるように分かりやすく解説していくことです。 どうぞよろしくお願いします。