鎖骨骨折はラグビーやアメフト、サッカーなどのコンタクトスポーツに比較的多い骨折として知られています。
転倒して手をついた時に、鎖骨部に外力が加わり骨折をすることもよくあります。
私の過去の経験で、若くても鎖骨骨折をする方は非常に多く、リハビリを担当する機会もよくありました。
鎖骨は血行がとても良い部位であるため、骨形成の促進もとても良いことや、スポーツ外傷に多く若い方に多いということもあり、保存療法で治癒(治る)するケースが非常に多いです。
しかし、骨の付きが悪かったり、骨折した骨が転位(ズレて)してしまっている、神経や血管を傷つけてしまっている場合などは手術が必要になるケースもあります。
今回は鎖骨骨折の概要とリハビリを含む治療方法について解説をしていきます。
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鎖骨は構造的に弱い骨
画像を見ていただくとお分かりいただけると思いますが、鎖骨は構造上、S字カーブを描く構造になり、小さくて細い骨になります。
つまり、強度が弱い骨であるということがいえるため、骨折しやすい骨であるということになります。
鎖骨骨折を起こしやすい部位
鎖骨は構造的に骨折しやすい骨ですが、その中でも、外側1/3辺り、この部分は脆くて弱い脆弱部位(ぜいじゃくぶい)であり、鎖骨骨折のおよそ80%はこの部分で骨折が起こります。
鎖骨骨折の症状と診断
鎖骨骨折の症状
鎖骨骨折は肩の痛みや腫脹(腫れ)、熱感、発赤などの炎症所見が認められます。
また、場合によっては、指先に痺れが起きたりすることもあります。
子供の場合、フッと気が付いたら腕を動かしていないという場合に、鎖骨骨折をしていたということもありますので、注意が必要です。
鎖骨骨折の診断
レントゲンを撮ればはっきりと分かります。病院に行く前に、上記症状がある場合には速やかに整形外科を受診するようにしてください。
鎖骨骨折の癒合期間
骨の癒合期間は、一般的に「
グルトの骨癒合期間」が目安になりますが、グルトの骨癒合期間では、鎖骨の癒合期間は
4週となっています。
ただ、経験上4週というのはかなり短いという印象です。
概ね経験的には8週〜10週という印象が強いですが、骨折の状態によってもかなり前後しますし、あくまでも目安として捉えることが大切です。
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鎖骨骨折の治療
鎖骨骨折は主に保存療法が選択されます。
胸を張るように固定する「クラビクルバンド(鎖骨バンド)」やギプス固定、三角巾やアームスリングなどの外固定が行われるのが一般的になります。
その他、痛みに応じて鎮痛剤などの内服が処方されることもあります。
冒頭にも書きましたが、骨の付きが悪かったり、ズレたりしている重症の骨折の場合は手術が適応されることがあります。
手術では主に、スクリューやプレートを使った固定術が行われます。
鎖骨骨折に対するリハビリテーション
目的
鎖骨骨折に対するリハビリの目的は、骨折部分がしっかり付くまでの間、鎖骨周囲の筋肉や筋膜が硬くなったり筋力が落ちたりしないように予防すること、鎖骨に関与しない関節が不動(動かさない)によって硬くならないように予防することが主な目的となります。
以下に説明をしていきますが、概ねポイントになるのは、
- 患部の安静期間は外固定を行うこと
- 筋肉や筋膜の柔軟性を改善・予防すること
- 関節の動きを改善・予防すること
- 安静期間が過ぎたら、医師の指示に応じて筋力トレーニングを行うこと
この4つが大枠のポイントとなります。
鎖骨骨折受傷後〜4週
- クラビクルバンド(鎖骨バンド)、ギプス、アームスリング、三角巾などで固定
- 鎖骨周囲の筋肉、筋膜の疼痛緩和、柔軟性維持・改善 → 徒手療法・電気治療・ホットパックなどの温熱療法
- 骨癒合促進目的で超音波療法
- 三角巾やアームスリングをつけたままの振り子運動(医師の指示に応じて開始)
- 医師の指示に応じて自動関節可動域訓練(最初は肩の挙上90°以内厳守)
- 手指の筋力トレーニング
肩の挙上が90°を超えてくると、鎖骨自体の挙上と上方回旋が連鎖的に起こります。骨折は回旋に非常に弱いため、骨折面がズレてしまうことがありますので注意が必要です。
鎖骨骨折後4週以降
- 場合によって固定は継続
- 振り子運動の継続
- 自動・他動関節可動域訓練
- 肘や肩周囲の筋力トレーニング(医師の指示に応じて、徐々に負荷量を上げていく)
注意点
リハビリを進めていくにあたり注意すべき点は、鎖骨に付着する筋肉の収縮を最小限に留めることです。
筋肉の収縮が起こることで、骨折面にズレが生じることがあります。ズレてしまうと偽関節(ぎかんせつ)になってしまったり、骨の癒合期間が延びてしまうこともあります。
偽関節とは
骨折した部分がうまく付かずに骨癒合が完全に停止したもので、骨折端が結合組織で埋められ、異常可動性が認められた状態をいいます。
この辺りは、どんなリハビリをしたらいいのか、どんなことをやってはいけないのかをリハビリの担当者に指導してもらう必要があります。
実際の筋力トレーニング例
ここまで説明してきたように、鎖骨に付着する筋肉は一定の安静期間を必要とされます。
ですので、上記に挙げた筋肉は弱くなりますので、また再度筋力を戻すためにトレーニングをする必要があります。
筋力トレーニングの一例をご説明しますので、参考にしてみてください。
この写真のように、ゴムチューブや最近私がよく使用している「
スポバンド」を利用して
肩を横に持ち上げる・ゆっくり下げる運動を行います。
これを行うことで、「三角筋」や「大胸筋」をトレーニングすることができます。ポイントは戻す時もゆっくり抵抗を感じながら行うことです。
そうすることで大胸筋も効率的にトレーニングすることができます。
0 D&M(ディーアンドエム) 2011-11-23
まとめ
鎖骨骨折の概要と一般的に行われるリハビリ治療について解説をしましたが、いかがでしたでしょうか。
鎖骨骨折は骨の癒合が得られやすい骨折ですが、間違ったリハビリを行なうと、骨折面がズレてしまったり、それに伴い偽関節になってしまうこともあります。
ここで説明した症状がある場合は、早く整形外科を受診し、適切な治療を受けるようにしてください。
それでは、少しでも参考になれば幸いです。
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