産後腰痛の代表格『仙腸関節障害』の原因・リハビリ治療・予防について解説をします。

仙腸関節障害のリハビリテーション

スポンサーリンク



<2017年9月25日修正・追記>

理学療法士の井上(@Rehacon)です。

 
 
腰痛のおよそ85%が原因不明といわれているのは過去の記事で書きました。
 
腰痛を引き起こす原因は多岐に渡りますが、原因の1つに「仙腸関節障害(せんちょうかんせつしょうがい)」による腰痛があります。
 
「産後腰痛」の多くはこの仙腸関節障害による腰痛といわれています。
 
なぜ仙腸関節障害が腰痛を招くのでしょうか。
 
今回は仙腸関節障害の概要とリハビリ治療について解説をします。
 

[ad#adsense]
 

仙腸関節とは

 
仙腸関節 仙腸関節
 
画像を見ていただくとお分かりいただけると思いますが、背骨のすぐ下の根元にホームベースのような形をしているのが「仙骨(せんこつ)」です。
 
そしてその両脇にあるのが「腸骨(ちょうこつ)」といいます。
 
仙骨と腸骨のつなぎ目を「仙腸関節(せんちょうかんせつ)」といいます。
 
 
補足
ここでは細かく説明しませんが、骨盤というのは骨の名前ではなく、複数の骨の集まりの総称になります。

骨盤=左右の寛骨(腸骨・恥骨・坐骨)、仙骨、尾骨

この仙腸関節は靭帯によって強固に繋がっており、関節とはいえ殆ど動かない関節となります。
 
諸説ありますが、1〜3㎜や3〜5㎜程度の動きとされています。
 
数字が大切ではなく、いずれにしても数ミリ程度しか動かない関節と理解してください。
 
構造的に背骨のすぐ下にあることから、背骨を支える土台となり、数ミリの動き(関節の遊び)によって背骨のバランスを取る構造となっています。
 
また細かなことをいうと、背骨の安定性というのは首や肩、肩甲骨の動きにも影響してきますし、土台の下にある下半身にも影響を及ぼします。
 

 

仙腸関節障害とは

 
上に説明した仙腸関節そのものの炎症や関節のズレ、靭帯損傷などのトラブル(機能障害)を起こすことを「仙腸関節障害」といいます。
 
仙腸関節は背骨を支える土台であり、数ミリ程度しか動かないということを説明しました。
 
この土台にトラブルが起こるとその周囲である腰椎(腰骨)にも影響を及ぼし、腰痛の引き金となります。
 
 

仙腸関節障害が起こる原因

 
仙腸関節障害は関節の炎症やズレが起こると上に説明しました。
 
ではなぜ仙腸関節障害が生じるのか。
 
原因として考えられているのが、
 
  • 出産後
  • 悪い姿勢、偏った姿勢
  • スポーツや日常生活などで同じ動きを繰り返す
  • スポーツや事故などでの強い外力
 
このようなことが原因で仙腸関節に炎症やズレが生じると考えられています。
 
タイトルにも書きましたが、産後の腰痛としては仙腸関節障害が代表格になります。
 
引用画像:日本仙腸関節研究会
グラフを見ていただくとお分かりいただけると思いますが、30代と70代の女性が圧倒的に多いです。
 
30代に多いのは、出産が関連していることが考えられます。
 
出産時に赤ちゃんが通りぬけられるように女性の骨盤というのは広くできています。
 
ここを通過することで、仙腸関節に強い圧力がかかります。そこで起きた関節のズレが戻らない、周囲の靭帯が必要以上に伸ばされてしまう、このような理屈で産後の腰痛を引き起こすといわれています。
 
 

仙腸関節障害の症状

 
  • 腰痛
  • 腰のだるさ、張り感、違和感
  • 殿部(お尻)の痛み、だるさ、張り感、違和感
  • 鼠径部(足の付け根)の痛みやだるさ、違和感
  • 下半身の痛みやだるさ、違和感
 
引用画像:日本仙腸関節研究会
 
こちらのデータを見てみると、仙腸関節障害が起きている側の殿部が圧倒的に多く、続いて足の外側や鼠径部に多いのが分かります。
 
注意が必要なのは、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの病気と症状が似ている部分があり、鑑別診断をしてもらう必要があります。
 
 

仙腸関節障害の診断と整形外科テスト

 
  • パトリックテスト
  • 仙腸関節圧迫テスト
 
一般的にはこの2つの検査にて症状が誘発されるかを確認します。
 
パトリックテスト
仙腸関節ストレステスト
 
 

仙腸関節障害のリハビリ治療

 
仙腸関節障害に対しての治療は「保存療法」が選択されます。
 

内服・注射

主に消炎鎮痛剤を内服し、注射では仙腸関節ブロックといわれる局所麻酔が行われます。
 
 

骨盤ベルト

仙腸関節のズレを修正する目的で骨盤ベルトが処方されることがあります。
 
 
 
 

徒手的による修正

これは自分で行うのは難しいため、理学療法士などの専門家に治療してもらう必要があります。
 
 
補足
理学療法士業界では「AKA博田法」という手技を使われる方が多いです。
 
 

仙腸関節障害のセルフケア方法

 

仙腸関節安定化トレーニング(筋力トレーニング)

 
 
上の写真の運動は、外腹斜筋(がいふくしゃきん)という筋肉と反対側の股関節を内側に閉じる内転筋群を同時に作用させることで、骨盤が締まる作用が働きます。
 
仙腸関節は数ミリしか動きませんが、全く動かなくても腰椎(腰骨)や腰周囲の筋肉に負担がかかりますし、動きすぎても不安定になり負担がかかります。
 
そのため、仙腸関節を安定化させるためのトレーニングが有効となります。
 
 
仙腸関節に関わる筋肉はたくさんありますが、その中でも腰痛と関連するポイントとなる筋肉をご紹介します。
 
  • 多裂筋(腰〜仙骨レベル)
  • 腹横筋
  • 骨盤底筋群(複数の筋肉の総称)
 
多裂筋 腹横筋 腹横筋 
 
骨盤底筋群 骨盤底筋群
 
これらの筋肉がキーポイントとなりますが、筋力を鍛えるのに手っ取り早いのが「ドローイン」というトレーニングです。
 
 
 
これは脊柱管狭窄症の記事にも書きましたが、多裂筋・腹横筋・骨盤底筋群を同時に鍛えることのできるトレーニング方法となります。
 
アスリートレベルになると、筋肉を固めすぎるとパフォーマンスに悪影響が出る場合がありますのでドローインは推奨されません。
 
しかし、日常生活レベルで考えれば、そもそもの筋力が弱い方が多いため、ある程度固める必要もあります。
 
その1つの方法としてドローインをおすすします。
 
 
その他の方法としては、以下の四つ這い位で対側の手足を持ち上げて止めるトレーニングがあります。
 
 
このトレーニングは主に多裂筋に効果のあるトレーニングですが、筋膜のつながりで多裂筋腹横筋はつながりがあります。
 
多裂筋・腹横筋
 
つまり、腹横筋にも効果があります。
 
一石二鳥のトレーニングとなりますのでおすすめです。
 
骨盤底筋群をより効果的にトレーニングするには、膝にボールなどの伸縮性のあるものを挟み、仰向けでお尻を持ち上げるブリッジ運動が効果的です。
 
 
  
 
以上のセルフケアを行うことで仙腸関節障害を予防することができますので、是非やってみて下さい。
 
 

まとめ

 
仙腸関節障害についてまとめましたが、いかがでしたでしょうか。
 
巷では、「この方法をやれば〇〇%腰痛が改善します!」などと謳った一般書などもありますが、このブログでも何度も言っていますが、そんなことは決してあり得ません。
 
筋膜の問題なのか、筋肉なのか、関節なのか、神経系なのか、内臓系なのか、脳なのか、精神的なものなのか。
 
等々、このように様々なところから考えなくてはいけません。
 
そういう意味では、腰痛に関連する書籍を以下にご紹介しますので、参考にしてみてください。おすすめの書籍になります。
 
 

おすすめ書籍

 

専門書

こちらは理学療法士の荒木先生が執筆された書籍ですが、専門家の方は一度お読みいただくことをおすすめします。
 
私は荒木先生の勉強会に参加した事があるのですが、エビデンスレベルが凄く高い印象をもっています。とにかく説得力が凄いです。
 
 

一般書

 
こちらを執筆されたのは、リハトラネットというブログを運営されている中尾先生です。
 
リハトラネットは多くの方が目にされたことのあるブログだと思いますが、中尾さんの印象としては、とにかく基礎をしっかりしているという印象をもっています。
 
この書籍も一般書ということで、非常に分かりやすく書かれている書籍です。
 
是非手に取って読んでみてください。
 
それでは、参考になれば幸いです。
 
 

腰痛に関わる記事セレクション

 

SNSのフォローも気軽にどうぞ!

【Facebook】
・閲覧、シェア中心
※申請時は一言メッセージをお願い致します。

【Facebookページ】
・ブログ更新情報中心

【Twitter】
・ブログ更新情報、様々なことをつぶやいています。SNSでは一番活用しています。

【Instagram】
・飲食関係、ゴルフ等々、趣味投稿中心

 
 

スポンサーリンク



シェアをお願い致します!

PT・OTによる完全リハビリオーダーメイドサポート
リハビリテーションマネジメントサポート(リハマネサポート)

介護付き有料老人ホーム・サービス付き高齢者住宅・特別養護老人ホーム・通所介護(デイサービス)・障がい者施設などが対象

2021年介護報酬改定に対応
【無料プレゼント】バーセルインデックスマニュアル・ICF目標設定例文集

誰でもできるようにトークスクリプトを含めたバーセルインデックスマニュアル、一目で分かる機能・活動・参加の目標設定例文集をとことんこだわって作りました。

コロナフレイルを予防しよう
【無料プレゼント】自分で自宅で簡単にできる体操資料

コロナによる自粛生活の影響で、廃用症候群(生活不活発病)が起こると危惧されています。それを予防するための自宅で簡単にできる体操資料をはじめ、様々な無料資料をご用意しています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

ABOUT US
アバター画像
井上 直樹
(同)Relate・(同)ALLMERU代表社員/理学療法士の井上直樹です。 このサイトでは一般の方に向けたリハビリの基本的な情報発信を行っております。また、不定期ですが雑誌や新聞などのマスメディア・WEB上のメディアにも情報提供を行っております。リハビリについての適切な情報発信は現在少ないのが現状です。リハビリのことはリハビリの専門職種(理学療法士・作業療法士・言語聴覚療法士)が情報発信するべきだと考えています。コンセプトは誰にでも理解できるように分かりやすく解説していくことです。リハビリに関わるコンサルティング事業を展開しております。お仕事依頼もお気軽にお問合せくださいませ。