疾患別リハビリテーション
『腰部脊柱管狭窄症』に対するリハビリの基礎知識。誰でも分かるように解説します。
みなさん、こんばんは。
PT井上(@Rehacon)です。
前回、腰部脊柱管狭窄症の原因や症状・治療方法など基本的な概要について触れました。
腰部脊柱管狭窄症の治療はまず、保存療法が第1選択として行われると前回ご説明しました。
保存療法の中でも、リハビリテーションは特に重要です。
中には、腰部脊柱管狭窄症が原因の痛みではなかったというケースも経験上多く存在します。
今回は、保存療法で一般的に行われるリハビリを中心に解説しながら、私の臨床経験も少し加えて解説していきます。
【key word】 腰部脊柱管狭窄症・リハビリ・姿勢・トリガーポイント
【対象者】 一般の方・柔道整復師・療法士学生・新人療法士 など
腰部脊柱管狭窄症に対する一般的に行われるリハビリ
物理療法
電気治療
※引用画像:日本メディックス(SSP療法)
などが行われます。
目的としては主に、痛みの軽減と緩和です。
これまでの記事でも説明してきていますが、電気治療は痛いところにやって効果がなければ、痛みに関連する部位に行うと効果を認めることがあります。
温熱療法
※引用画像:ミナト医科学(ホットパック)
マイクロ波は筋肉まで熱が届くとされていますが、禁忌事項も多く、使用しない施設も増えてきました。
ホットパックは、筋肉まで熱が届かないとされていますが、リラクゼーション効果はありますし、皮膚を考えたときにも効果は全くないということはいえないと私は考えてます。
ホットパックは効果がないと言う方もいますが、リラクゼーション効果は脳への影響も考えると一概に効果がないといえないと思っています。
牽引(けんいん)療法
※引用画像:ミナト医科学
牽引の考え方としては、基本的に圧迫しているところを離開する目的で行われます。
「椎間関節の離開」など主な目的で使用されますが、実際の牽引力では椎間関節の離開は無理です。
どちらかといえば、筋肉などの軟部組織を伸ばすようなストレッチ的な要素の方が強いです。
マッサージ
患部である腰周囲のマッサージなどが行われます。
ストレッチ
この後以下にご説明します。
筋力トレーニング
この後以下にご説明します。
有酸素運動
有酸素運動について、これまでたくさん記事にしてきました。
有酸素運動はやって損のない運動です。
腰部脊柱管狭窄症の場合、腰を反る姿勢がよくないので、エアロバイクなどの有酸素運動は腰をやや曲げながら行え、下半身のトレーニングや体力アップなどの観点からもメリットのある運動になります。
自宅にスペースのある場合は、1台持っておいてもいいかもしれませんね。
姿勢から紐解く
腰部脊柱管狭窄症は、腰を反ると脊柱管が狭くなり神経や血管を圧迫して症状が出るということはここまで何度も説明してきました。
ポイントは「腰を反る」というところ。
実際は敢えて反ってる人はいないです。当然のことながら。
反り返ってるわけではないので、姿勢でいえば「反り気味」が問題になります。
姿勢を考えてみると、腰が反ってしまう姿勢というのは「腰椎(腰の骨)の前弯(ぜんわん)」が増強しているということです。
腰椎の前弯は、「骨盤が前傾」すると起こりやすくなります。
つまり、骨盤の前傾と腰椎の前弯は動きのつながりがあります。
※引用画像:稲穂鍼灸整骨院
これをリハビリテーション業界では「運動連鎖」といいます。
このような姿勢になってしまう原因は以下の通りです。
- 腰周囲の筋肉は短縮(短くなる)したり、過剰な筋肉の緊張が起こる。
- 腹筋群は弱くなる。
- 股関節を持ち上げる筋肉で特に「腸腰筋(ちょうようきん)」の短縮や過剰な筋肉の緊張がおこる。
- 大殿筋(お尻の筋肉)やハムストリングスといわれる太ももの裏側の筋肉は弱くなる。
これだけではありませんが、多くはこういうケースで骨盤が前傾・腰椎が前弯し、腰が反ったような姿勢となってしまいます。
では、こういった場合にどういうセルフケアがいいのかをご説明していきます。
単純にこの姿勢を作る原因を改善すればいいので、
- 腰周囲の筋肉のストレッチ
- 腹筋群の筋力強化
- 腸腰筋のストレッチ
- 殿筋群・ハムストリングスの筋力強化
ということになります。
腰周囲の筋肉のストレッチ
【方法】
- 椅子に腰かけて、身体を倒し腰を丸める。
- 腰を丸めた状態で左右斜め前へさらに倒す。
- ゆっくりと腰を伸ばす。
腹筋群の筋力強化
【方法】
- 座って行う場合は姿勢をまっすぐ立たせ、お腹に手を当てる。
- 少しお腹を膨らませ、ゆっくりとお腹を凹ませる。
- 7秒程度保持し、ゆっくりと戻す。
これはよく聞くかもしれませんが、「ドローイン」というトレーニング方法です。
- 横隔膜(おうかくまく)
- 腹横筋(ふくおうきん)
- 多裂筋(たれつきん)
- 骨盤底筋群(こつばんていきんぐん)
これらの筋力トレーニングに効果的です。
骨盤底筋群は出産後の女性の腰痛にも効果的ですよ。
腸腰筋のストレッチ
【方法】
- 片膝を立て、床に膝をついている方のお腹をゆっくり前に押し出す。
- 腰が反らないように注意して行う。
大殿筋・ハムストリングスの筋力強化
【方法】
- 片方の膝は立てる。
- クッションや伸縮性のあるものを踵(かかと)に置き、つぶすように下に押し当てる。
- ゆっくり力を入れるように行う。
【方法】
- セラバンドなどの伸縮性のあるものを使用する。
- 前足を出してセッティングする。
- ゆっくりと足を後ろに引く。
臨床経験上、効果的な治療方法をご紹介します
トリガーポイント療法については、これまでもたくさん記事にしてきました。
ここでは、腰部脊柱管狭窄症に効果のあるトリガーポイントをご紹介します。
特にこの中でも、腰痛と関連が多いのが「腸腰筋」です。
注意
腸腰筋は、画像では「腰筋・腸骨筋」と記載されています。
この画像の中の✖印の部分を指でもいいですし、テニスボールやゴルフボールをゆっくりと押し当ててみてください。
もし、✖印の部分を押して青い部分に痛みを感じたらトリガーポイント部分の「筋膜」にトラブルを抱えているかもしれません。
その場合はできるだけ毎日、トリガーポイントをテニスボールやゴルフボールを使ってセルフケアしてください。
ゆっくりと時間をかけて押すだけでも効果がありますよ。
筋膜の状態を整えると痛みが軽減、消失することも多く経験しています。
また、「テンセグリティー構造」を考えても筋膜を整えることは重要です。
まとめ
腰部脊柱管狭窄症に対しての一般的なリハビリと私の臨床経験をセルフケア含め解説しました。
理学療法士などの専門家に治療してもらうのももちろんいいのですが、日常的には自分でセルフケアしていくことが長い目でみても大切です。
そうすることで腰痛が持病の方はだいぶ痛みを軽減でき、コントロールすることが可能となります。
腰部脊柱管狭窄症があったとしても、必ずしも痛みの原因ではないことが現実としてあり、手術は最終手段として考えたほうがいいです。
脊柱管狭窄症はいつ誰にでも起こり得る疾患です。
日頃からセルフケア・セルフトレーニングをして予防をしていきましょう。
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