病院で勤務していた時、高齢者の方々が転倒をして骨折という症例がたくさんいました。
「転倒予防」ということになると、
筋力を鍛える
ということになりがちですが、決して筋力を鍛えればいいかといえば、そんなことはありません。
体重をどこに落としていくべきなのかとか、足首や股関節の柔軟性を獲得することなど、転倒には様々な要素が関わってきます。
感覚に問題がある場合などもありますが、今回のこの記事では主に運動機能についてのバランス能力と転倒予防ということにフォーカスを当てて解説をしていきます。
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バランスとはそもそも何?
バランスの定義とはいったい何なのでしょうか。
釣り合い。均衡。また、調和。「左右のバランスが悪い」「バランスのとれた食事」
引用:デジタル大辞泉
これを運動機能に当てはめて考えてみると、
- 立つ・歩く・走るなどの静止時や動作時の姿勢や状態を保つ機能
- バランスが崩れた時にうまく立ち直れる機能
大まかにいえばこの2つになります。
特に大事なのは②で、人間は動くわけですから、地面がボコボコしていて不整地であったり、突然人が横切ったりなど、イレギュラーなことが起きます。
イレギュラーなことが起きた時にどう対応できるのか。
うまく対応することができれば、バランス機能は良いと言えます。
リハビリの現場では、
支持基底面という言葉を使用しますが、支持基底面の中で重心を収められるとバランスが良い状態となります。
しかし、繰り返しになりますが、支持基底面から重心が逸脱した時にどう対応できるのかということの方が重要です。
バランス能力の低下とは、これらの機能が破綻した状態ということになります。
バランス能力が低下する原因
記事の冒頭でも書いたのですが、まず筋力よりも重心をどの位置に落としていくかを考える方が個人的には良いと考えています。
高齢の方々は円背姿勢が多いですが、そうなると骨盤は後ろに傾く後傾位となります。
後傾位になると重心も後ろにかかりやすくなり、踵重心になるので足の指は殆ど使われなくなります。
また、バランスは足首の動きや股関節の動きでコントロールされますが、踵重心となることで無駄な力が入ります。
無駄な力が入ることで足首をうまく使えない方が非常に多い印象です。
バランス能力を改善させる方法
重心を落とす位置を意識する
バランス能力を改善させる方法として、まずやってほしいのは重心を落とす位置を意識することです。
個人的に推奨しているのは、脛骨(けいこつ)という骨の直下、または、直下よりやや内側です。
ここに意識することで無駄な力が抜けやすく、円背姿勢などもある程度緩和されることがあります。
背骨がそもそも変形してしまっている場合は円背姿勢自体は変わりません。しかし、寝ている状態では真っ直ぐ横になれて、座っている姿勢や立っている姿勢だけが円背の方は重心の位置を変えるだけで改善することがあります。
重心位置の調整や方法については、以下の記事でまとめていますので、合わせてお読みください。
【関連記事】
足首のコントロール運動
足首のコントロールはバランス能力にとても影響し、足首をうまく使えればバランス能力はよくなります。
リハビリ現場ではよく、バランスパッドが使用されます。
今は安く買えますので、1つ持っておいて損はないと思います。
転倒の危険性が高い方は、必ず誰か側についてもらうか、専門家の指導を受けてから行うようにしてください。
方法として以下の動画を参考にしてみてください。
自宅で簡単に行うには、タオルを丸めたものや少し硬めのクッションなどを使って行うことでも同様の効果は得られます。
そもそも足首自体が硬い方は、すねやふくらはぎの筋肉や筋膜、皮膚などの組織が硬くなっていることが考えられますので、ストレッチを行うことや専門家に徒手的に治療をしてもらうことが大切です。
【方法】ふくらはぎのストレッチ
- 立ったまま伸ばしたい方の足を後ろにする。
- 足裏が床から離れないように注意しながら、体重を前に乗せる。
- ふくらはぎが伸ばされていると感じるところで、20秒間キープする。
【方法】すねのストレッチ
- 立ったまま伸ばしたい方の足を後ろにする。
- 足の甲を床につけるようにして、体重を前に乗せる。
- すねが伸ばされていると感じるところで、20秒間キープする。
まとめ
今回はバランスに関わる小脳や脳幹の中枢神経系や感覚機能については度外視し、運動機能に着目してバランス能力について説明をしました。
介護予防領域では、転倒予防のための運動が盛んに行われていますが、運動の前にちょっと重心を落とす位置を意識するだけでも変わってきます。
是非、参考にしていただけたら幸いです。
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