腰痛を引き起こす原因は多岐に渡りますが、原因の1つに「仙腸関節障害(せんちょうかんせつしょうがい)」による腰痛があります。
「産後腰痛」の多くはこの仙腸関節障害による腰痛といわれています。
なぜ仙腸関節障害が腰痛を招くのでしょうか。
今回は仙腸関節障害の概要とリハビリ治療について解説をします。
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仙腸関節とは
画像を見ていただくとお分かりいただけると思いますが、背骨のすぐ下の根元にホームベースのような形をしているのが「仙骨(せんこつ)」です。
そしてその両脇にあるのが「腸骨(ちょうこつ)」といいます。
仙骨と腸骨のつなぎ目を「仙腸関節(せんちょうかんせつ)」といいます。
補足
ここでは細かく説明しませんが、骨盤というのは骨の名前ではなく、複数の骨の集まりの総称になります。
骨盤=左右の寛骨(腸骨・恥骨・坐骨)、仙骨、尾骨
この仙腸関節は靭帯によって強固に繋がっており、関節とはいえ殆ど動かない関節となります。
諸説ありますが、1〜3㎜や3〜5㎜程度の動きとされています。
数字が大切ではなく、いずれにしても数ミリ程度しか動かない関節と理解してください。
構造的に背骨のすぐ下にあることから、背骨を支える土台となり、数ミリの動き(関節の遊び)によって背骨のバランスを取る構造となっています。
また細かなことをいうと、背骨の安定性というのは首や肩、肩甲骨の動きにも影響してきますし、土台の下にある下半身にも影響を及ぼします。
仙腸関節障害とは
上に説明した仙腸関節そのものの炎症や関節のズレ、靭帯損傷などのトラブル(機能障害)を起こすことを「仙腸関節障害」といいます。
仙腸関節は背骨を支える土台であり、数ミリ程度しか動かないということを説明しました。
この土台にトラブルが起こるとその周囲である腰椎(腰骨)にも影響を及ぼし、腰痛の引き金となります。
仙腸関節障害が起こる原因
仙腸関節障害は関節の炎症やズレが起こると上に説明しました。
ではなぜ仙腸関節障害が生じるのか。
原因として考えられているのが、
- 出産後
- 悪い姿勢、偏った姿勢
- スポーツや日常生活などで同じ動きを繰り返す
- スポーツや事故などでの強い外力
このようなことが原因で仙腸関節に炎症やズレが生じると考えられています。
タイトルにも書きましたが、産後の腰痛としては仙腸関節障害が代表格になります。
グラフを見ていただくとお分かりいただけると思いますが、30代と70代の女性が圧倒的に多いです。
30代に多いのは、出産が関連していることが考えられます。
出産時に赤ちゃんが通りぬけられるように女性の骨盤というのは広くできています。
ここを通過することで、仙腸関節に強い圧力がかかります。そこで起きた関節のズレが戻らない、周囲の靭帯が必要以上に伸ばされてしまう、このような理屈で産後の腰痛を引き起こすといわれています。
仙腸関節障害の症状
- 腰痛
- 腰のだるさ、張り感、違和感
- 殿部(お尻)の痛み、だるさ、張り感、違和感
- 鼠径部(足の付け根)の痛みやだるさ、違和感
- 下半身の痛みやだるさ、違和感
こちらのデータを見てみると、仙腸関節障害が起きている側の殿部が圧倒的に多く、続いて足の外側や鼠径部に多いのが分かります。
注意が必要なのは、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの病気と症状が似ている部分があり、鑑別診断をしてもらう必要があります。
仙腸関節障害の診断と整形外科テスト
一般的にはこの2つの検査にて症状が誘発されるかを確認します。
仙腸関節障害のリハビリ治療
仙腸関節障害に対しての治療は「保存療法」が選択されます。
内服・注射
主に消炎鎮痛剤を内服し、注射では仙腸関節ブロックといわれる局所麻酔が行われます。
骨盤ベルト
仙腸関節のズレを修正する目的で骨盤ベルトが処方されることがあります。
徒手的による修正
これは自分で行うのは難しいため、理学療法士などの専門家に治療してもらう必要があります。
補足
理学療法士業界では「AKA博田法」という手技を使われる方が多いです。
仙腸関節障害のセルフケア方法
仙腸関節安定化トレーニング(筋力トレーニング)
上の写真の運動は、外腹斜筋(がいふくしゃきん)という筋肉と反対側の股関節を内側に閉じる内転筋群を同時に作用させることで、骨盤が締まる作用が働きます。
仙腸関節は数ミリしか動きませんが、全く動かなくても腰椎(腰骨)や腰周囲の筋肉に負担がかかりますし、動きすぎても不安定になり負担がかかります。
そのため、仙腸関節を安定化させるためのトレーニングが有効となります。
仙腸関節に関わる筋肉はたくさんありますが、その中でも腰痛と関連するポイントとなる筋肉をご紹介します。
- 多裂筋(腰〜仙骨レベル)
- 腹横筋
- 骨盤底筋群(複数の筋肉の総称)
これらの筋肉がキーポイントとなりますが、筋力を鍛えるのに手っ取り早いのが「ドローイン」というトレーニングです。
これは
脊柱管狭窄症の記事にも書きましたが、
多裂筋・腹横筋・骨盤底筋群を同時に鍛えることのできるトレーニング方法となります。
アスリートレベルになると、筋肉を固めすぎるとパフォーマンスに悪影響が出る場合がありますのでドローインは推奨されません。
しかし、日常生活レベルで考えれば、そもそもの筋力が弱い方が多いため、ある程度固める必要もあります。
その1つの方法としてドローインをおすすします。
その他の方法としては、以下の四つ這い位で対側の手足を持ち上げて止めるトレーニングがあります。
このトレーニングは主に多裂筋に効果のあるトレーニングですが、筋膜のつながりで多裂筋と腹横筋はつながりがあります。
つまり、腹横筋にも効果があります。
一石二鳥のトレーニングとなりますのでおすすめです。
骨盤底筋群をより効果的にトレーニングするには、膝にボールなどの伸縮性のあるものを挟み、仰向けでお尻を持ち上げるブリッジ運動が効果的です。
以上のセルフケアを行うことで仙腸関節障害を予防することができますので、是非やってみて下さい。
まとめ
仙腸関節障害についてまとめましたが、いかがでしたでしょうか。
巷では、「この方法をやれば〇〇%腰痛が改善します!」などと謳った一般書などもありますが、このブログでも何度も言っていますが、そんなことは決してあり得ません。
筋膜の問題なのか、筋肉なのか、関節なのか、神経系なのか、内臓系なのか、脳なのか、精神的なものなのか。
等々、このように様々なところから考えなくてはいけません。
そういう意味では、腰痛に関連する書籍を以下にご紹介しますので、参考にしてみてください。おすすめの書籍になります。
おすすめ書籍
専門書
こちらは理学療法士の荒木先生が執筆された書籍ですが、専門家の方は一度お読みいただくことをおすすめします。
私は荒木先生の勉強会に参加した事があるのですが、エビデンスレベルが凄く高い印象をもっています。とにかく説得力が凄いです。
一般書
こちらを執筆されたのは、
リハトラネットというブログを運営されている中尾先生です。
リハトラネットは多くの方が目にされたことのあるブログだと思いますが、中尾さんの印象としては、とにかく基礎をしっかりしているという印象をもっています。
この書籍も一般書ということで、非常に分かりやすく書かれている書籍です。
是非手に取って読んでみてください。
それでは、参考になれば幸いです。
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