<2017年12月06日修正・追記>
理学療法士の井上(@Rehacon)です。
腓骨神経麻痺が起こると、足首や足の指が上に持ち上がらなくなってしまいます。
「麻痺」と聞いてしまうと治らないの?などと不安に思われる方もいらっしゃると思います。
外傷などの損傷が酷い場合は麻痺が残ってしまうこともありますが、そうでない場合は腓骨神経麻痺はリハビリで改善する可能性が高いのでご安心下さい。
今回は、腓骨神経麻痺や下垂足が起きる原因や症状、リハビリを含む治療方法についてお伝えしていきます。
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腓骨神経麻痺とは?症状とは?
腓骨神経は坐骨神経(ざこつしんけい)から分岐し、総腓骨神経(そうひこつしんけい)となり、さらに、浅腓骨神経(せんひこつしんけい)と深腓骨神経(しんひこつしんけい)に分けられ、足の甲まで走っています。
腓骨神経麻痺とは、膝の外側から下にかけて、足の甲に痺れや触っても触られている感じが弱い・しないなどの感覚障害が起こります。
また、足首や足の指を上に持ち上げられなくなり、足がダランっと垂れ下がった形になります。
このことを「下垂足(かすいそく)」と呼びます。
また、感覚障害の特徴として、深腓骨神経領域では足の親指と第2指の間に感覚障害が起こり、浅腓骨神経領域では、深腓骨神経領域と足の小指部分を除いた、足の甲・膝下外側に感覚障害が起こります。
このように、腓骨神経麻痺では主に、感覚障害と運動障害が起こります。
腓骨神経麻痺が起こる原因
腓骨神経麻痺が起こる最も多い原因が、腓骨神経の長時間の圧迫です。
これに該当するのが、ギプス固定や寝たきりなどで同じ部分が圧迫されることで起こります。
圧迫される場所で特に多いのが、腓骨頭(ひこつとう)のすぐ下辺りです。
これ以外に腓骨神経麻痺が起こる原因としては、腫瘍や腫瘤(こぶ)などによる圧迫や外傷などによるものがあります。
腓骨神経麻痺の診断
腓骨神経麻痺の診断は、上記に説明した、
- 下垂足が認められるかどうか
- 膝の外側から足の甲にかけて感覚障害があるか
- ティネルサインが認められるか
ティネルサインとは、神経の損傷部を叩いた時にその神経支配領域に痺れや痛みが放散することをいいます。
これらに加え、坐骨神経による障害との鑑別をするために、MRIや超音波検査が行われることもあります。
概ねこれらの検査により診断されます。
腓骨神経麻痺に対する治療とリハビリテーション
腓骨神経麻痺に対する治療では、主に「保存療法」が選択されます。
保存療法とは、手術などの外科的治療ではない治療のことをいいます。
腓骨神経麻痺は腓骨神経の圧迫が主な原因になりますので、まず圧迫を取り除くということが大切です。
ギプス固定による圧迫なら、腓骨神経の圧迫部分をギプスカットしてもらうことや、寝たきりの方の場合は姿勢を変える、クッションなどを使って除圧するといったことが必要になります。
腫瘤や腫瘍・骨折による腓骨神経麻痺の場合は、その状態に応じて手術などが適応されます。
腓骨神経麻痺に対するリハビリは、
- 運動療法
- 装具療法
- 物理療法
- 徒手療法
この4つが一般的に行われます。
運動療法
運動療法では、下垂足の原因となる筋肉に対して、筋力トレーニングや筋力をうまく発揮させるための筋出力トレーニングが行われます。
下垂足の原因となる主な筋肉は以下の通りです。
- 前脛骨筋(ぜんけいこつきん)
- 長母趾伸筋(ちょうぼししんきん)
- 長趾伸筋(ちょうししんきん)
- 第三腓骨筋(だいさんひこつきん)
- 短母趾伸筋(たんぼししんきん)
- 短趾伸筋(たんししんきん)
- 長腓骨筋(ちょうひこつきん)
- 短腓骨筋(たんひこつきん)
筋肉がたくさんありますが、概ねこれらの筋肉の運動作用としては、足首・足の指を上に持ち上げることが中心となります。
足首を上に持ち上げる運動を「トゥーライズ」といいますが、このトゥーライズを行います。
まずは座ったままの状態で足の指と足首を上に持ち上げます。
これができない方は、手すりなどに捕まりながらスクワットをするように膝を曲げて、曲げた状態をキープしてください(なるべく腓骨神経麻痺側に体重をかける)。
こうするだけで足首を上に持ち上げる筋肉は強制的に収縮することができます。
もう1つの方法として、立った状態で、後ろ足に体重を移動させるのと同時に、前足のつま先と足首を上に持ち上げるように意識してみてください。
装具療法
下垂足では、足首と足の指が持ち上がらないため足が引っかからないように太ももを大きく持ち上げる歩行になります。
これを「鶏歩(けいほ)」といいます。
鶏歩になると歩行の効率が悪くなりますので、それを防ぐために装具が必要になります。
その多くは「オルトップ」という装具が処方されることが殆どです。
物理療法
腓骨神経麻痺に対する物理療法は、電気刺激によって強制的に筋肉を使うことを目的に行われます。
病院でも電気治療を行いますが、現在は家庭用でも安価でとても良いものが販売されていますので、それでも十分対応できます。
私も訪問リハビリでご自宅に伺っている方へ時々使用しますが、しっかり筋肉の収縮も得られますしおすすめです。
徒手療法
腓骨神経麻痺では足首や足の指が持ち上がらないことを説明しましたが、その逆の作用をもつ筋肉や筋膜というのは補うために疲労が溜まりやすい環境にあります。
足の裏やふくらはぎなどの筋肉の柔軟性を保つことも重要になります。
足裏やふくらはぎのストレッチや筋膜リリースの方法は以下の記事でまとめていますので、合わせてお読みください。
まとめ
腓骨神経麻痺と下垂足の概要とリハビリについてまとめましたがいかがでしたでしょうか。
病院でしっかり診断してもらい、適切なリハビリをすれば重度の腓骨神経麻痺でなければ、改善することが多い麻痺です。
ここで説明したリハビリを是非行ってみてください。
それでは、少しでも参考になれば幸いです。
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