理学療法士の井上(@Rehacon)です。
誰でも感じることのある体の痛み。
「骨が変形しているから痛いのはしょうがない」「腰のヘルニアがあるから痛い」「もう歳だから仕方ない」こんな風に医師から言われたことのある人は沢山いると思います。
確かに骨が変形するなど、「構造的な異常」による痛みの場合もあります。
ヘルニアが神経を圧迫することによる痛みもあります。
ただし、そうでないケースもたくさんあるのも事実です。
臨床経験上、腰椎ヘルニアがあっても痛くない人もいますし、ヘルニアが変わらない状態でも痛みが取れることは結構あります。
そんな経験をしている理学療法士も多いのではないでしょうか。
今日は、構造異常による痛みではない「機能的な異常」による痛みについて書きます。
ポイントは「トリガーポイント」と「筋膜」です。
最近「筋膜リリース」などテレビでも話題になっていますね。理学療法士でも有名な竹井先生がよく出演していますね。
では始めていきます。
【Keyword】トリガーポイント・筋膜・筋筋膜性疼痛症候群・索状硬結
【対象者】一般の方・理学療法士・作業療法士・その他の治療家
目次
トリガーポイントとは
まず言葉の意味を説明します。
「トリガー」とは「引き金・きっかけ」を意味します。
ポイントは「場所」を意味します。
つまり、トリガーポイントとは「痛みの引き金になる場所」・「痛みのきっかけになる場所」を意味します。
なぜトリガーポイントができるのか
簡単に説明します。
ある一部の筋肉に過負荷がかかっているところの筋肉は小さな損傷を受けます。
そこから以下のような負の流れが起きます。
筋肉の拘縮(硬くなる) → 血流減少 → 老廃物が蓄積 → 発痛物質がでる → 痛みの信号を電気信号に変える → 痛みを感じる
※引用画像:トリガーポイント研究所
このトリガーポイント、「精神的なストレス」でも起きるとも言われています。
精神的なストレスから様々な体のトラブルが起きる可能性もあるということですね。
トリガーポイントの特徴
身体の筋筋膜の中である部分が硬くなっている部分、これを「硬結(こうけつ)」といいます。
詳しく言うと「索状硬結」と言います。
索状硬結とは「筋膜内」にみられるピーンと張ったロープ上の部分と定義されています。筋肉にもできるとされています。
「しこり」と思ってもらえればいいです。
その硬くなっているトリガーポイントを押すと強い痛みを訴える。
そして関連痛が起きます(押したところではないところに響く)。
場合によっては飛び上がるくらい痛みを感じることもあります。
これを「ジャンプサイン」といいます。
第一段階(筋硬結):日常的には痛みを感じないですが、しこり部分を押すと痛みがでるという段階です。
第二段階(潜在性トリガーポイント):トリガーポイント部分を押すと、押したところだけでなく他のところに痛みが出る「関連痛」が起こるという段階です。また、動作時にも痛みが出るのが特徴です。
第三段階(活動性トリガーポイント):安静にしていても痛みが出る段階です。痛みに過剰になっている段階です。
例に挙げて説明してみます
例えば腰が痛いという人がいるとします。
医師の診断上、「腰の4番5番間のヘルニアで神経に触れて痛い。」と言われたと仮定します。
そうなると腰の4番5番での神経症状(詳しくは神経根症状といいます)としては、腰の痛みに加えて長母趾伸筋(ちょうぼししんきん)の筋力低下と膝下外側面〜足の甲の感覚が鈍くなります。
長母趾伸筋は足の親指のことです。
足の親指が上に持ち上がらない、持ち上がっても力が入りにくいという症状になります。
これが典型的な症状となります。
この典型的な症状が全くなく、ただ腰が痛いだけの場合ヘルニアによる痛みではない可能性もあるわけです。
その場合、痛みを訴えているところにアプローチして改善すればいいですが、改善しない場合にトリガーポイントによる痛みの可能性があります。
以下の画像は体の全面の✖印を圧迫すると、腰に痛みの症状が出る画像です。
つまり、腰に直接アプローチしても痛みが改善しないことが分かると思います。
※引用画像:トリガーポイント研究所
筋筋膜性疼痛症候群(MPS)
トリガーポイントによる痛みのことを「筋筋膜性疼痛症候群」といいます。
英語でMyofascial Pain Syndrom。頭文字をとって「MPS」と医療現場では使用します。
実はこの概念は1980年代から知られているのですが、この日本では科学的根拠に乏しかったこのMPSを軽視されてきた背景があります。
そして、医学部教育でも学ぶことはないそうです。
つまり、未だに医学部教育では学ばれていなく「骨や関節による痛み・異常」で診断されてしまうのが殆どなのです。
結果的に、手術をしたのに痛みは変わらない。こんなことになってしまうのです。
ただ最近はエコーなどにより筋膜に異常があることも知られてきました。
それにより筋膜治療にもだいぶ注目が集まってきたように感じますね。
筋膜ってなんだ?
本来は骨・内臓・神経・血管なども包んでいるものですが、難しくなってしまうので名前の通り「筋肉を包んでいる膜」とご理解いただいていいです。
人間の体はこの筋膜でボディスーツのように覆われています。
「第2の骨格」とも呼ばれています。
この筋膜は痛みを感じやすい受容器が豊富にあり、この筋膜の異常により痛みを感じます。
※引用画像:筋膜画像
私の臨床経験と見解
このMPS、私の経験上では筋膜治療にて改善しているケースが多くあります。
そしてトリガーポイントを作るのはその人の「運動パターン」であるケースが多いとも感じています。
たとえ痛みが改善しても「体の使い方」をうまく指導できなければまた再発します。
つまり、その人の職業や癖、スポーツ、趣味などそのあたりの情報収集をしっかりすることで適切な体の使い方を指導することができます。
痛みを軽減する・取れる → 動作・運動指導をする → 必要に応じて筋力トレーニングを行う。
こういう流れが大事です。痛みが取れたからOKではありません。
ただ今は訪問リハビリに従事していますが、高齢者で姿勢やアライメント(形状)が悪い方も多く完全に痛みを取りきれないことも多々経験しています(これは私の知識・技術不足かもしれません)。
筋膜治療はどんなものがあるか
実は沢山あります。細かくは割愛しますが、ご紹介までに。
- トリガーポイント療法
- ロルフィング
- 筋膜リリース
- 筋膜マニュピレーション
私はこの中でも、トリガーポイント療法とロルフィング技術を用いた筋膜リリースを学んでいるので臨床で行っています。
ただ最近は「筋膜マニュピレーション」がとても効果があるとPT業界では話題になっていますね。
最後に
このように筋膜治療を行うことで痛みが取れる場合もありますし、取り切れないこともあるのも事実です。
そして単純に骨関節の構造異常による痛みの場合もあり、オペ適応になるケースもあります。
勘違いしないでほしいのは、このトリガーポイントに対しての筋膜治療だけで改善すると思い込まないで欲しいのです。
理学療法士がやるセミナー団体もそうですしその他の団体もそうですが、「この治療方法で全て解決します!」みたいなのありますけど、それは嘘です。
そんなのありえません。ありえたらみんなその治療法をやってます。小手先の技術だけでどうにかなるものではありません。
あくまでもオプションの1つにしかならないことを理解しましょう。
結局は解剖学・生理学・運動学なのです。これをちゃんと理解して、触診ができてはじめて治療効果を出せるのです。
そして痛みに苦しんでいる方々が多いのも事実であり、もしもこの記事を読んでくれている方がいたとしたらトリガーポイントに対する筋膜治療も試す価値があるということをご理解いただけると嬉しく思います。
まとめ
トリガーポイントについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
痛みは非常に嫌なものですよね。それだけでストレスになります。
手術が成功したけど痛みは変わらない、レントゲンをとって特に異常がないと言われたけど痛いものは痛い、ずっと治療を受けてきたがよくならない。
こんな方は筋膜治療を受ける価値はあると思いますよ。
上述したように、筋膜治療といっても色々あります。
トリガーポイント療法でも、筋膜マニュピレーションでもとにかく試す価値はあると思いますよ!
それでは、参考になれば幸いです。
もっと詳しく筋膜やトリガーポイントについて知りたい方は、以下の関連記事をお読みください。
おすすめ書籍
参考資料
・トリガーポイント研究所
・ビジュアルでわかるトリガーポイント治療
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