<2017年9月17日 修正・追記>
理学療法士の井上(@Rehacon)です。
高齢者に対するリハビリでよく聞く言葉で「転倒予防」という言葉があります。
転倒予防体操など様々なプログラムが立案され、各々の地域などでもよく提供されています。
転倒予防で筋力を鍛えると考えた時、よく言われるのが「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」を鍛えることが重要であるといわれます。
確かに大腿四頭筋を鍛えることも大切です。
ただ、大腿四頭筋というのは姿勢を制御するための筋肉という要素が強いです。
転倒を予防するために足をしっかり持ち上げるということを考えると、「腸腰筋(ちょうようきん)」をしっかり鍛えて、なおかつ、効率よく使えるようにする必要があります。
今回は、転倒予防には腸腰筋、特に「大腰筋(だいようきん)」が大事だということにフォーカスをあてて解説をしていきます。
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腸腰筋とはどんな筋肉?
腸腰筋とは、以下の3つの筋肉を総称したものです。
- 大腰筋(だいようきん)
- 小腰筋(しょうようきん)
- 腸骨筋(ちょうこつきん)
補足
小腰筋はおよそ50%の方はないと言われています。
それぞれ以下に説明をしていきます。
大腰筋
起始:(浅頭)第12胸椎・第1〜5腰椎の椎体及び椎間板の側面
(深頭)全腰椎の肋骨突起
停止:大腿骨の小転子
作用:股関節の屈曲・外旋(わずかな)
神経支配:腰神経叢(大腿神経)
小腰筋
起始:第12胸椎と第1腰椎の椎体側面
停止:腸恥隆起
作用:股関節の屈曲(補助)
神経支配:腰神経叢(大腿神経)
その他:厳密にいうと、小腰筋そのものに股関節を曲げる作用はありません。大腰筋の補助的な作用となります。
腸骨筋
起始:腸骨窩及び下前腸骨棘
停止:大腿骨の小転子
作用:股関節の屈曲・外旋(わずかな)
神経支配:腰神経叢(大腿神経)
専門用語が多くて申し訳ないのですが、上記の説明を見ると、腸腰筋は主に股関節の屈曲、つまり、足を持ち上げる機能がメインであるということが分かると思います。
解剖学的に見ると、腸腰筋は、足と背骨を結びつけている筋肉であるということが分かります。
そして、この中でも特に大腰筋に関しては背骨に直結している筋肉であり、とても重要な役割をします。
なぜ大腰筋が重要なのか
上の大腰筋の画像を見ていただけるとお分かりいただけると思いますが、大腰筋は、大腿骨の小転子というところから、背骨の胸椎12番目〜腰椎5番目までがそれぞれに付着していることが分かります。
そして、身体の深層部分(インナーマッスル)の筋肉です。
これに加え、呼吸で重要な「横隔膜(おうかくまく)」と筋膜上で大腰筋はつながっています。
つまり、大腰筋の機能レベルが高い・効率的に使えるということは、呼吸にも良い影響を与えるということになります。
リハビリで歩行訓練をして、疲れてしまいなかなか歩行距離が伸びない、体力面にも問題があるという場合、大腰筋をうまく使えていないということが1つの原因として考えられます。
大腰筋を積極的に使う運動を行い、運動器だけでなく、呼吸器系にもアプローチしていけるということは循環器系にも好影響を与えるということです。
とても好循環が生まれます。
転倒予防では腸腰筋がキーポイント
人間は歩いて移動するにあたり、太ももの骨である大腿骨を引き上げないといけません。
大腿骨を引き上げる筋肉、それに似た動きの体幹を屈める筋肉として、腸腰筋以外には、「大腿直筋・腹直筋」があります。
画像をみてもらうと分かる通り、大腿直筋と腹直筋は身体の前面にあり表層の筋肉(アウターマッスル)です。
大腿直筋は骨盤を引き上げる作用もあるため、効率的に大腿骨を持ち上げられません。
専門的に言うと、股関節の屈曲時に骨盤挙上の代償が入りやすいということが言えます。
また、大腿直筋は膝を伸ばす伸展にも作用しますので、足が地についている場合、身体を後方に持っていく作用が生まれます。
つまり、大腿直筋や腹直筋は「大腿骨を持ち上げる」という動きには非効率な動きであり、腸腰筋をうまく使えることで効率的な動きができるということになります。
腸腰筋のセルフケア方法
それでは、ここまで腸腰筋について説明してきましたが、以下に一般的な腸腰筋を鍛えるトレーニングとストレッチをご紹介します。
腸腰筋トレーニング
右の写真では、骨盤が後ろに倒れて身体も後ろに倒れてしまっています。
これでは効率よく腸腰筋が働きませんので、左の写真のように背筋を伸ばして太ももを持ち上げるようにしましょう。
また、持ち上げた足を手で下に押し当てると強度が高くなります。
仰向けで寝て膝を立てます。
トレーニングする側の足を持ち上げます。この際注意すべき点は「膝が伸びないこと」です。
膝が伸びてしまうと、腸腰筋を効率的にトレーニングできません。
写真くらいまでの高さまで持ち上げ、ゆっくり戻す。これを何度か繰り返し行って下さい。
また、慣れてきたら、写真のくらいの高さまで持ち上げてそのままの位置をキープするように行います。
補足
腸腰筋は股関節45°〜60°で効率的に作用するという研究があります。
腸腰筋ストレッチ
右の写真のように腰が反らないように、背筋を伸ばしたままお腹を前に押し出すようなイメージで行って下さい。
まとめ
腸腰筋とその中でも特に大腰筋は、呼吸器系や循環器系にも好循環を与えるためその重要性を解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
転倒予防の話になると、大腿四頭筋の筋力アップということがピックアップされます。
しかし、大腿四頭筋はもちろん重要性ですが、歩行の耐久性などを考えると呼吸器系も関与してきますので、大腰筋をしっかりトレーニングすることがとても大切だとお分りいただけたかと思います。
是非、参考にしていただければ幸いです。
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