食べること(摂食)、飲み込むこと(嚥下)の障害では言語聴覚士(ST)が主にリハビリでは担当します。
回復期病棟の患者さんを担当して、摂食嚥下障害があれば、
「STに相談しよう」
と過去の私自身がそうでした。
そんな時、STに相談したくても在宅に関わるSTさんが少ないために、難しいことが殆どです。
また、STさんが訪問リハビリに来てくれたとしても、言語療法は行ってくれても摂食嚥下に対するセラピーはなかなか行ってもらえないという現状もあります。
この要因としては、やはり、リスクが起きてしまった時の対応が難しいということです。
このようなことから、在宅で摂食嚥下障害に携わってもらえるのは、訪問歯科医が中心となります。
訪問歯科医が関わるというのは、非常に素晴らしくありがたいことではありますが、訪問頻度や訪問時間にどうしても限りがあります。
そんな時、
理学療法士でも何かできることはないか?
と思うことが多々あります。
そこで今回おすすめしたいのが、
理学療法士が教える!病院や施設、訪問の現場で活用できる摂食嚥下障害のフィジカルアセスメントとアプローチ法
具体的なアプローチ法の記載は少ないですが、非常に分かりやすく、ポイントを絞ってアセスメント方法などを説明してくれています。
この内容を理学療法士がどう活用するかは人それぞれです。
部分的に引用しながら、ご紹介していきたいと思います。
専門家向けの記事になります
[ad#adsense]
嚥下5期のおさらい
嚥下の5期に関しては、理学療法士も学生時代に学んでいますがおさらいのために。
- 先行期(認知期)
- 準備期
- 口腔期
- 咽頭期
- 食道期
この5期に分類されますが、それぞれの期において、問題に上がってくる部分というものがあります。
先行期(認知期)
この期は、5感が大きく関与しており、まず、目で見て認識することから始まります。
この認識がない状態で、いきなり口の中に食べ物が入ると、吐き出しがみられることや、飲み込んだ際にタイミングがズレ、ムセ込みにつながることがあります。
本書より引用
この期は、5感が大きく関与し、まずは視覚が重要で、目で見て、食べ物を認識するところから始まります。
うまく認識できなければ、食欲は湧かないだけでなく、食べるための準備が整いません。
前回の記事にも書きましたが、やはり「見える化」のセッティングが大事になるということですね。
準備期
準備期では、口の中に食べ物が入ったものを飲み込みやすくするために、砕いたり塊を作ったりして、飲み込みやすい形にしていく段階です。
口の中に入るわけですので、当然味覚が関与し、口の開口範囲も関与してきます。
開口範囲が小さく、大きく開口できないようであれば、咀嚼筋や表情筋の硬さが問題になることがあります。
本書より引用
食塊を形成していく際には、さまざまな口腔器官が関わってきますが、とりわけ舌の動きが重要になります。
ここで舌の動きが少ないと、食塊を形成できません。
本書より引用
引用させてもらいましたが、ここで問題になってくるのは、
この3つは大きく関与し、どのようにアプローチするかは各々あると思いますが、理学療法士は咀嚼筋や表情筋に対して行えることは十分にあると考えられます。
舌の動きに対してできることは少ないかもしれませんが、動きを確認して情報を共有することはできます。
口腔期
口腔期では、準備期で形成した食塊を咽頭に送ります。
咽頭に送るには、舌の動きが非常に重要なため、やはり、舌の動きをしっかり確認しておくことは重要になります。
咽頭期
咽頭期では、咽頭に送られてきた食べ物を反射によって食道に送る工程です。
本書では、嚥下反射がしっかりあったとしても、十分に機能していないことがあると述べています。
特に重要視されているのは、舌骨・甲状軟骨の挙上です。
ここが不十分になりやすい要因としては、姿勢の問題があります。
猫背になり、下顎を突き出した姿勢、つまり、頭頚部前突位となると、舌骨・甲状軟骨の挙上が行われにくくなります。
ー 中略 -
舌骨上筋群を鍛え、舌骨と甲状軟骨の挙上能力を高めることや、円背姿勢を改善することで、ここの問題を解決していく、と、書かれている文献が多数を占めます。
しかし、臨床上、舌骨上筋群を鍛えることで改善するケースは少なく、重度の嚥下障害の方や、超高齢者では、ほぼ改善していきません。
また、円背姿勢を変えることで、多少飲み込みが良くなることはあっても、著しく改善することは少ないです。
なぜなら、この期に、それ以外の問題があるからです。
それは、舌骨下筋群が舌骨や甲状軟骨を下に引き下げている力が強い、ということです。
舌骨下筋群が短縮していることや、
舌骨下筋群と筋連結を持っている胸郭が硬いことも関係してきます。
本書より引用
だいぶ長い引用となってしまいましたが、ここは重要なポイントなんじゃないかなと思います。
舌骨下筋群のうち、肩甲舌骨筋という筋肉がありますが、この筋肉は肩甲骨の上縁に付着しています。
つまり、猫背姿勢とも関わってきますが、肩甲骨の動きや肩関節の動きも嚥下機能に影響してくることが示唆されます。
広頚筋や胸鎖乳突筋、僧帽筋などの大きな筋肉の下に位置している筋肉ですので、直接触ることは難しいかもしれませんが、これらの筋肉を緩ませたり、筋肉間の癒着があればリリースしたり、舌骨部は繊細な部分ですが、直接触ることもできるかもしれません。
これは胸骨舌骨筋も然りです。
この辺を理学療法士が対応するということは可能だろうと思いますし、実際にアプローチしてみる価値はありそうです。
食道期
食道期は、咽頭から送られてきた食塊を蠕動運動で胃へ運びます。
胃が下方へ引っ張られている場合、食道も下方へ引っ張られ、上部にある咽頭にも影響を及ぼすことがあります。
そのため、口は、内臓の入り口とも言われています。
本書より引用
胃も内臓同士、膜で連結しているため、内臓マニピュレーションなどを勉強している方は、ここでも何か対応ができるかもしれません。
エリック・U・ヘブゲン ガイアブックス 2013-12-15
まとめ
この記事では、嚥下5期に起こる問題と理学療法士としてどう対応していけるのかを考えてみました。
本書にも対応方法が少しヒント的な要素として紹介されていますが、どう対応するかは様々あっても良いと思います。
まずは基本的な部分を抑え、理解することが大事です。
個人的にももう少し勉強してみようと思っています。
次回は、せっかくなので、舌骨上筋群や舌骨下筋群についてをもう少し詳しく解説していきます。
この本はまず値段が250円と破格です。
コメントを残す