嚥下に関与する『舌骨上筋群・舌骨下筋群』の基本的な概要と解剖・ストレッチ方法

嚥下に関わる舌骨上筋群・舌骨下筋群の解剖とストレッチ

スポンサーリンク




 

はじめに

 
理学療法士の井上(@Rehacon)です。
 
 
前回、前々回と食事姿勢や摂食嚥下障害についての記事を書きました。
 
 
摂食嚥下機能には、様々な要素が関わりますが、その中でも、嚥下に関わる筋肉に、
 
  • 舌骨上筋群(ぜっこつじょうきんぐん)
  • 舌骨下筋群(ぜっこつかきんぐん)
 
という複数の小さな筋肉が大きく関与しています。
 
今回は、この筋肉の概要について触れてみたいと思います。
 
 
スポンサーリンク



 

舌骨上筋群とは

 
舌骨上筋群は、
 
  1. オトガイ舌骨筋
  2. 顎舌骨筋(がくぜっこつきん)
  3. 顎二腹筋(がくにふくきん)
  4. 茎突舌骨筋(けいとつぜっこつきん)
この4つの筋肉の総称を言います。
 
舌骨上筋群
 
名前の通り、舌骨よりも上にある筋肉で、オトガイ舌骨筋は、顎舌骨筋のより深層にある筋肉になります。
 
 

オトガイ舌骨筋

起始:下顎骨(オトガイ棘)
停止:舌骨
作用:舌骨を前方へ引く、(舌骨固定時)下顎を下げる
神経支配:第1・2頚神経前枝
 
 

顎舌骨筋

起始:下顎骨
停止:舌骨
作用:口底と舌の挙上、(舌骨固定時)下顎を下げる
神経支配:三叉神経の下顎枝
 
 

顎二腹筋

起始:側頭骨(乳突切痕)
停止:下顎骨
作用:(下顎骨固定時)舌骨の挙上、(舌骨固定時)下顎骨を下制
神経支配:(前腹)三叉神経(後腹)顔面神経
 
 

茎突舌骨筋

起始:側頭骨(茎状突起)
停止:舌骨
作用:舌骨の挙上
神経支配:顔面神経
 
 
 

舌骨下筋群とは

 
舌骨下筋群とは、
 
  1. 甲状舌骨筋(こうじょうぜっこつきん)
  2. 胸骨舌骨筋(きょうこつぜっこつきん)
  3. 胸骨甲状筋(きょうこつこうじょうきん)
  4. 肩甲舌骨筋(けんこうぜっこつきん)
 
この4つの筋肉の総称を言います。
 
舌骨下筋群
 
舌骨よりも下に位置する筋肉になります。
 
 

甲状舌骨筋

起始:甲状軟骨
停止:舌骨
作用:舌骨を咽頭に近づける
神経支配:上位頚神経
 
 

胸骨舌骨筋

起始:胸骨
停止:舌骨
作用:舌骨を下げる
神経支配:上位頚神経
 
 

胸骨甲状筋

起始:胸骨
停止:甲状軟骨
作用:咽頭を下方に引く
神経支配:上位頚神経
 
 

肩甲舌骨筋

起始:肩甲骨の上縁
停止:舌骨
作用:舌骨を押し上げる
神経支配:上位頚神経
 
 

舌骨下筋群の存在を忘れてはいけない

 
舌骨上筋群を鍛え、舌骨と甲状軟骨の挙上能力を高めることや、円背姿勢を改善することで、ここの問題を解決していく、と、書かれている文献が多数を占めます。
 
しかし、臨床上、舌骨上筋群を鍛えることで改善するケースは少なく、重度の嚥下障害の方や、超高齢者では、ほぼ改善していきません。
 
また、円背姿勢を変えることで、多少飲み込みが良くなることはあっても、著しく改善することは少ないです。
 
なぜなら、この期に、それ以外の問題があるからです。
 
それは、舌骨下筋群が舌骨や甲状軟骨を下に引き下げている力が強い、ということです。
 
舌骨下筋群が短縮していることや、舌骨下筋群と筋連結を持っている胸郭が硬いことも関係してきます。

引用元:理学療法士が教える!病院や施設、訪問の現場で活用できる 摂食嚥下障害のフィジカルアセスメントとアプローチ法

 
 
前回記事にも引用しましたが、嚥下機能において、舌骨上筋群に着目されることが多いですが、舌骨下筋群は必ずチェックする必要があります。
 
舌骨上筋群が舌骨を上に持ち上げるのに対し、舌骨下筋群は舌骨を下に下げる作用があります。
 
つまり、舌骨下筋群が短縮したり、硬くなることで舌骨上筋群の作用を邪魔してしまいます。
 
もちろん、逆も然りです。
 
お互いに相互作用があり、どちらかに器質的・機能的な障害があればもう一方にも影響を及ぼしてしまいます。
 
ですので、舌骨上筋群だけではなく、必ず舌骨下筋群をチェックすることが嚥下機能の評価をする上では重要です。
 
 

ポイントになるのは肩甲舌骨筋

 
理学療法士がこれらの筋肉を確認する上で、特に舌骨下筋群のうち、
 
肩甲舌骨筋
 
この筋肉を確認するのはとても意味があります。
 
肩甲舌骨筋は肩甲骨の上縁に付着していて、肩甲骨は上肢の動きに影響します。
 
肩甲舌骨筋
 
つまり、「肩甲骨の位置や肩関節の位置というのは、嚥下機能に影響を与える」ということが言えます。
 
理学療法士は嚥下機能に対して姿勢の評価をすると思いますが、
 
  • 肩甲骨の位置・状態
  • 上肢(肩関節)の位置・状態
 
この2点を確認することは、非常に重要なポイントになります。
 
 

嚥下機能を高めるストレッチ

 
全て1回30秒を目安に行ってください。
 
 
注意点

どれも実施中・実施後に痛みが起きたり、翌日に痛みが残ったりする場合は、無理せず中止してください。
 
 
 

首の前屈

首の前屈ストレッチ 首の前屈ストレッチ

お臍をのぞき込むように首を前屈させる。

 
両手で頭を抱え、ゆっくりと圧迫を加える。
 
写真では分かりやすいように、片手で行ってます。
 
腰が曲がらないように注意しながら行う。
 
 

首の後屈

首の後屈ストレッチ 首の後屈ストレッチ

首を後ろに反らせる。

 
胸に手を当て、手はお臍方向に押し下げる。
 
腰が反らないように注意する。
 
 

首の側屈

首の側屈ストレッチ 首の側屈ストレッチ

耳を肩に近づけるように横に倒す。

 
手で頭を抑えゆっくりと圧迫を加える。
 
体が横に倒れないように注意する。
 
 

首の回旋

首の回旋ストレッチ 首の回旋ストレッチ

鼻を肩に近づけるように首を回す。

 
手をこめかみあたりに起き、回す方に圧迫を加える。
 
体が回らないように注意する。
 
 

首の回旋+伸展

首の回旋+伸展ストレッチ

鼻を肩に近づけるように首を回し、そのままの位置をキープしながら首を後ろに反らせる。

 
 

首の側屈+腕伸ばし

首の側屈+腕伸ばしストレッチ

耳を肩に近づけるように横に倒す。

 
倒した方とは逆の腕を斜め下に向かって伸ばす。
 
体が横に倒れないように注意する。
 
 

首の側屈+回旋+腕伸ばし

首の側屈+回旋+腕伸ばしストレッチ

耳を肩に近づけるように横に倒し、さらに鼻を肩に向けるように首を回す。

 
その状態をキープしながら、側屈・回旋した方とは逆の腕を斜め下・後方に伸ばす。
 
体が横や後ろに倒れないように注意する。
 
 

猫背姿勢改善方法

猫背筋膜リリース  猫背筋膜リリース  猫背筋膜リリース

両手を前方に伸ばし、さらに、肩甲骨を前に押し出すようにする。そこで30秒キープする。

 
体が前に倒れないように注意する。
 
伸ばした手を後ろに引き、胸を張る。そこで30秒キープする。
 
肘が下に下がらないように注意する。
 
最後に、肘を戻し、手のひらが前を向くようにする。そこで30秒キープする。
 
この時も肘が下がらないように注意し、さらに、顎を突き出したり、体が後ろに反りすぎないように注意する。
 
 

おわりに

 
嚥下機能に関係する筋肉の概要と、嚥下機能を高めるためのストレッチ方法について解説をしました。
 
専門家ではない方にとっては少し専門用語が多かったと思いますが、舌骨を起点に、上下に小さくて複数の筋肉が関与していることが分かるだけでもいいと思います。
 
ストレッチなどのセルフケアは、時々やるものではなく、なるべく毎日行い、習慣化させていくことが重要です。
 
また、理学療法士や作業療法士の方も、嚥下機能について考えることは少ないかもしれませんが、できることはあると思います。
 
是非、参考にしていただけたら嬉しいです。
 
それでは、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 
 

参考にした書籍

 
価格が250円と破格ながら、内容は充実しています。ちなみに、Kindle unlimitedに加入している方は、無料で読めますよ。

Kindleでしか買えないというのは残念ですが、その分この価格になっているのでしょう。

Kindleを持っている療法士の方は、是非一度読んでみることをお勧めします。

 

栄養・摂食嚥下に関わる記事セレクション

 

SNSのフォローも気軽にどうぞ!

【Facebook】
・閲覧、シェア中心
※申請時は一言メッセージをお願い致します。

【Facebookページ】
・ブログ更新情報中心

【Twitter】
・ブログ更新情報、様々なことをつぶやいています。SNSでは一番活用しています。

【Instagram】
・飲食関係、ゴルフ等々、趣味投稿中心

 

 

スポンサーリンク



シェアをお願い致します!


日経ヘルス 2017年10月号

女性誌である「日経ヘルス」さんの2017年10月号で、

・肩こり
・腰痛
・脚のむくみ
・腕の疲れ

この4症状に対するセルフケア方法について、指導・監修をさせていただきました。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

ABOUTこの記事をかいた人

井上 直樹

リハビリテーションコンサルタントの井上です。 コンサルタントとはその道のプロが助言や指導をするという意味です。 リハビリについての適切な情報発信は現在少ないのが現状です。 リハビリのことはリハビリの専門職種(理学療法士・作業療法士・言語聴覚療法士)が情報発信するべきだと考えています。 コンセプトは誰にでも理解できるように分かりやすく解説していくことです。 どうぞよろしくお願いします。