<2017年9月17日修正・追記>
理学療法士の井上(@Rehacon)です。
先日パーキンソン病についての基礎的なことを解説しました。
【関連記事】
●「パーキンソン病」とはどんな病気なのか。典型的な症状や原因・治療方法について分かりやすく解説します。
目次
パーキンソン病に対するリハビリの位置付け
2002年:十分なエビデンス(科学的根拠)がない
パーキンソン病にリハビリテーションは有効か?
エビデンス(科学的根拠)のグレードをまず説明します。
グレードB:行うよう勧められる
グレードC:行うことを考慮してもいいが、十分な科学的根拠がない
グレードD:行わないよう勧められる
パーキンソン病におけるエビデンス
- 運動療法が身体機能、健康関連QOL、筋力、バランス、歩行速度の改善に有効である → グレードA
- 外部刺激、特に聴覚刺激による歩行訓練で歩行は改善する → グレードA
- 音楽療法も試みるとよい → グレードC
- 運動療法により転倒の頻度が減少する → グレードB
パーキンソン病に対するリハビリの基本的な考え方は4つ!
- パーキンソン病は進行性疾患であるため、「段階的な病期(ヤールの重症度分類)に応じた」リハビリテーションの組み合わせが必要である。
- オン-オフ現象の「オン状態」に合わせてリハビリを行うと効果的。
- 薬物療法や外科的治療と同様に「運動療法」が切っても切れない存在であること。
- パーキンソン病の無動や姿勢反射障害などの「一次障害の改善」やそれにより引き起こされる廃用症候群や転倒などの「二次的な障害の予防」、可能な限り日常生活能力や生活の質(QOL)を落とさないように適切な運動指導を行うことが重要。
【ウェアリングオフ現象とオン-オフ現象】
ウエアリングオフ現象とは
レボドーパ製剤をパーキンソン病では服用しますが、ある一定期間服用していると薬の効果時間が少なくなって症状が悪くなることをいいます。これをウェアリングオフ現象といいます。
オン-オフ現象とは
薬の効いてる時をオン時、薬が効いていない時をオフ時のことをいいます。このオン-オフで状態がよくなったり悪くなったりを日内変動することをいいます。
リハビリはオン時、つまり薬の効いてる時に行えるととても有効です。
逆にオフ時にリハビリをしてもあまり効果は期待できません。1日の中でどの時間帯が薬が効いていて調子がいいのか把握しておくことはとても重要になります。
この考え方が基本的な考え方になります。
ヤールのステージ別にみたリハビリテーション
まず全体を通して必要なこと
- 全身を使う運動
- 関節可動域調整
- ストレッチ
- 筋力トレーニング
- 体力面の予防
- 姿勢調整
- 各動作指導
【全身を使う運動】
これは筋肉の収縮や伸長、関節を引き離すなど1つの体操で複数の効果を得られる素晴らしい体操です。 おすすめです。
パーキンソン病ではどんどん姿勢が丸まっていきます。ですので、早い段階で姿勢を調整する運動を行っておくほうが予防につながります。
では、ステージ別に解説していきます。
ヤールステージⅠ・Ⅱ
つまり、今後進行していくと予測される症状を「予防」していくことが重要になります。
- 自転車エルゴメーター
- ウォーキング
前にも自転車エルゴメーターをご紹介しましたが、体がしっかり動くうちはこういう全身運動が大切です。
ヤールステージⅢ
また、「呼吸機能の低下」や「嚥下機能」にも影響が出始めてきます。日常生活での障害も少しずつ出てくる時期になります。
姿勢反射障害に対するリハビリ
バランストレーニング
- 四つ這いで対側の手足を挙げる
- 片脚立位
- バランスパットを使用しての片脚立位
- 応用歩行トレーニング(横歩きや後ろ歩き、横歩きでの足を交差させたシザース歩行など)
【四つ這いで対側の手足を挙げる】
写真だと右手があまり挙がってないのですが、頭より少し上に挙げるイメージで行ってください。
「右手ー左足」、「左手ー右足」という感じで体側の手足を挙げます。
歩行障害に対するリハビリ
これは手で持つところにボタンが付いているようで、ボタンを押すとこの棒が出てくるシステムのようです。
私はこの杖を見たことはないのですが、パーキンソン病の特徴の「すくみ足」や「小刻み歩行」はこういう視覚的に代償することでスムーズに歩くことができます。
呼吸機能に対するリハビリ
- 胸郭の可動域調整:胸郭についてはプロゴルファー「諸見里しのぶ選手」に学びましょう。「肋軟骨損傷」ってなんだ?予防のポイントは3つ!をお読みください。
- 腹式呼吸トレーニング
- 呼吸筋に対する筋力トレーニング など
吸うときは鼻から、吐くときは口から行うようにしてください。
【関連記事】
●肺の生活習慣病『COPD』の症状・リハビリを含めた治療方法について解説します。
●誰でも分かる!『呼吸療法(リハビリテーション)』の考え方・概要について解説します。
嚥下機能に対するリハビリ
専門は言語聴覚療法士(ST)です。
※2017年9月に「嚥下機能について」新記事追加しています↓
【関連記事】
●理学療法士も理解しておくべき『摂食嚥下障害』の評価とリハビリ治療
●療法士が教える『車椅子食事姿勢』の考え方。良好なポジショニングは誤嚥を防ぐ
ステージⅣ
冒頭に挙げた「まず全体を通して必要なこと」の内容は行いつつ、ステージⅣでは「動き方の指導」や「環境設定」というのが大切になります。
参考になるのでおすすめサイトです。是非見てみて下さい。
ステージⅤ
【関連記事】
●「拘縮」みなさん本当に拘縮の意味をご存知ですか?拘縮と強直の違い・リハビリについて誰でも分かるように解説します。
問題点と課題、そして希望
もちろんリハビリを導入するにあたり色々弊害があることも理解した上でです。
これはこの仕事をずっとしてきて実感しているところですし、これまでの様々な記事でもお伝えしていることです。
それを理解していただけると救われる方も多いのではないかと思います。
コメントを残す