疾患別リハビリテーション
「糖尿病」の原因や症状とは?治療のポイントは3つ!「運動療法」を中心に食事療法・薬物療法について解説します。
理学療法士の井上(@Rehacon)です。
国民の5人に1人以上が「糖尿病の予備群」と言われているのをご存知でしょうか。
糖尿病は「生活習慣病」の代表格です。
生活習慣病という名の通り、普段の生活習慣が病気の発症に関わっていることを言います。
そして、糖尿病治療の重要なポイントは3つです。
今回は、 運動療法を中心に糖尿病の診断基準や症状、原因、治療方法について解説していきます。
注意
ここでは「2型糖尿病」について説明しています。
【keyword】 糖尿病・食事療法・運動療法・薬物療法
【対象者】 一般の方・ケアマネ・介護従事者・新人看護師・新人療法士
糖尿病とは
「Diabetes Mellitus」の頭文字をとって医療現場ではDMと表現します。
糖尿病は一度発症してしまうと完治しないとも言われますが、「治る病気」「治らない病気」という考え方よりは、治療を続け血糖値をなるべく正常範囲内でコントロールするというのが重要になります。
糖尿病の検査データと診断基準
尿糖
【目的】尿の中に糖が出ているか調べる検査です。陽性の場合は糖尿病や膵炎・甲状腺の機能障害が疑われます。
【正常範囲内】(+)か(-)尿中に糖が出ているか出ていないかです。
空腹時血糖(BS)
【目的】空腹時の血液中の血糖を調べる検査です。
【正常範囲内】80~125mg/dl未満
HbA1c(ヘモグロビンA1c)
【目的】HbA1cは120日以上血液中にあるため、長時間にわたる血糖の状態を調べることができます。糖尿病の確定診断の指標に用いられたりします。
【正常範囲内】5.6%~6.0%未満
糖尿病の診断基準
※引用画像:千里山病院
糖尿病の原因
インスリンは「膵臓(すいぞう)」で作られます。そしてインスリンは膵臓からでるホルモンの1つで、血糖値を下げる役割を担います。
ご飯を食べると、膵臓が認識しインスリンが分泌されます。
このインスリンが十分に作用していない・インスリンの量が不足しているなど様々な原因で「高血糖」状態が慢性的に続いてしまうことが原因になります。
10人に9人がこのタイプと言われています。
糖尿病の症状
糖尿病はほとんど自覚症状がないことが多い病気です。そして、日常生活の中で少しづつ症状が現れます。
- 疲労感(倦怠感)
- 手足の感覚が悪くなる・痛みを感じる
- 頻尿
- 空腹感
- のどの渇きを感じやすくなる
- 傷が治りにくい
- 目がかすむ
- 急に痩せた など
このように何となく分かりにくい症状なんですね。
こういう様々な症状が「少しずつ」現れてきます。そして病院に行った時にはもうすでに「糖尿病」だったと診断されることも多いのです。
糖尿病になりやすい人の特徴
- 太りすぎ
- 家族に糖尿病の人がいる
- 高血圧
- 明らかな運動不足 など
糖尿病の3大合併症
- (糖尿病性)神経障害
- (糖尿病性)網膜症
- (糖尿病性)腎症
神経の「し」、目の病気である網膜症の「め」、腎症の「じ」
これらを「しめじ」と覚えると覚えやすいですね。私も学生時代はこのように覚えました。
神経障害
手足の神経に異常が生じ、しびれや痛みを引き起こします。
症状が進行すると「足が壊死」する方も中にはいます。簡単に言うと腐ってしまうんですね。
こうなってしまうと足の「切断」などが必要になります。
しびれや痛みが慢性的にある場合は医師に相談しましょう。
網膜症
目の「網膜」にある血管に異常が起こる合併症です。
進行してしまうと場合によっては「失明」してしまいます。
定期的な検査が必要になります。
腎症
腎臓にある血管に異常が起こる合併症です。
腎臓は老廃物を尿として体外に排出する機能がありますが、糖尿病性腎症があるとうまく機能しなくなります。
定期的な検査が必要になります。
糖尿病治療の鍵になるポイントは3つ!
- 食事療法
- 運動療法
- 薬物療法
この3つが重要であり、どれが抜けてもよくありません。
食事療法
食事療法は糖尿病治療の「基本」です。
必要以上のカロリーを摂らないことや、
タンパク質・脂質・ビタミン・ミネラルなどの栄養素をバランスよく摂ることが重要です。
私は専門外(専門は管理栄養士)ですので割愛しますが、以下のサイトや書籍を参考にしてください。
●糖尿病の食事療法
糖尿病に対する運動療法
運動療法は食事療法と同様に、糖尿病治療には欠かせません。
適切な運動を行うことで、「インスリンの感受性」が改善します。
但し、運動療法と言ってもただ運動すればいいわけではありません。
場合によっては逆効果になったり、3大合併症を増悪させてしまう可能性もあります。
以下に運動療法の効果やリスク、どんな運動がいいのかなど簡潔に分かりやすく説明していきます。
糖尿病における運動療法の効果
- 適切な運動をすることでインスリンの機能が改善し「血糖値」が下がる
- 減量・肥満の予防
- 高血圧の改善・予防
- 高脂血症の改善・予防
- 運動不足による運動機能の低下予防
- 骨粗鬆症予防
- 血液循環の向上による健康予防
- 体力アップなど
おぉ、いいことだらけですね。
運動療法に注意が必要な方
- 治療不十分な増殖性網膜症が指摘されていて、運動により網膜症が重症化するリスクがある方
- 心疾患など重篤な循環器系疾患が指摘されている方
- 血糖コントロール不十分な方
- 運動することで神経症状が増悪する方
- 足の潰瘍や壊疽などの糖尿病性の足病変のある方
- その他運動の中止基準に該当する方
どんな疾患の場合でも、運動療法を行う上でのリスクはまず「運動強度」という問題がつきものです。
基本的に「きついなぁ」と思うほどの運動は心臓に負担をかけます。
そして運動負荷が強いと増殖性網膜症の場合、網膜症が増悪することがあります。
それに運動負荷が強いと単純にやりたくなくなりますよね。精神的にきつくなります。
スポーツ選手ではありませんので、そこまでやるメリットはないわけです。
では、どの程度の運動強度ならいいのか。
と感じる程度が目安です。
以前、ウォーキングについて解説した記事でも運動強度のことはご説明しました。
合わせてお読みください。
息がかなり上がるとか、心臓がドキドキするとか、ここまで負荷をかける必要はありません。
基本的には、運動していて「気持ちいいな」、運動後に「スッキリしたな」と感じる程度を目安にしましょう。
そして、中長期的に継続していくことが最も大切です。
運動の種類
運動は有酸素運動とレジスタンス運動に大別できますが、「有酸素運動」を行うようにします。
補足
レジスタンス運動とは、「抵抗運動」のことです。重りを使った運動などになりますので、負荷が比較的強いと理解してもらえればいいです。
糖尿病に対するおすすめ有酸素運動
- ウォーキング(散歩)
- 水中ウォーキング
- エアロバイク(自転車エルゴメーター)
- 自転車
- 軽いジョギング
- 全身体操 など
つまり、全身を使う運動ということになりますね。
上述しましたが、力んだ運動や息を止めるような強い負荷は心臓へ負担をかけますし、眼圧を高め網膜症の増悪を引き起こしたりします。
ポイントは深呼吸を時々入れながら、リラックスしながら行える運動をすることです。
運動の頻度・時間
糖尿病における運動療法の効果はおよそ48時間(2日)程度持続するといわれています。
つまり最低限、1日おきに週3日くらい行えるのが理想です。
1回あたりの運動時間は、有酸素運動ですので最低15分以上は行わないと効果的ではありません。
また、血糖は食後1時間〜1時間半で一番高い状態になります。
食後1時間〜1時間半程度してから始めると効果的です。
逆に、食事の直前など血糖が下がっているときに運動をたくさんしてしまうと低血糖症状が出ることがあります。
このように運動を行うタイミングは重要になります。
【関連記事】
以下のような症状が出た場合は無理せず運動を中止しましょう。
- 動悸
- 息切れ
- 脱力感
- めまい
- 吐き気
- 冷や汗
- しびれ
- 空腹感 など
薬物療法
糖尿病は、基本的に食事療法と運動療法で体質改善により血糖を下げることが大切です。
しかし、高血糖状態が続けば様々な病気や合併症などのリスクは高まります。
このリスクを回避するために薬物療法も必要になります。
血糖コントロールはもちろんのこと、合併症があれば合併症に対する薬物治療も必要になります。
薬に関しては専門家ではないので割愛しますが、よく処方される薬をご紹介します。
糖尿病に使用される薬
- アマリール
- ダオニール
- グラクティブ
- ジャヌビア など
薬のことを調べるには以下のサイトがおすすめです。
●くすりのしおり
経口薬でコントロール不十分の場合、インスリン自己注射などが必要になったりします。
詳しくは医師にご相談ください。
まとめ
糖尿病治療の基本は何度も言いますが、食事療法・運動療法・薬物療法この3つです。
どの治療も必要不可欠です。
糖尿病は血糖コントロールをしっかりすれば、普通の生活が送れます。
受け身の治療を受けるのではなく、積極的に自ら治療に参加する気持ちで取り組むことが大切です。
最後に、昨年12月より「日本糖尿病対策推進会議」に「日本理学療法士協会」が参加することになりましたね。
今後、さらに理学療法士が糖尿病の方々の治療や予防的な介入に参入していければと思います。
参考になれば幸いです。
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