ちょうど先日、施設へリハビリへ伺った際、利用者さんで急に手首が上がらなくなってしまった方がいました。
これは典型的な下垂手(かすいしゅ)で橈骨神経麻痺(とうこつしんけいまひ)の症状になります。
下垂手になってしまうと、利き手であれば食事や着替えなど、日常生活に不便が生じます。
しかし、橈骨神経麻痺麻痺は末梢神経障害になるので、その多くは改善します。
今回は、橈骨神経麻痺の概要とリハビリ治療について解説をしていきます。
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橈骨神経の解剖
少し専門的になってしまいますが、橈骨神経は、腕神経叢(わんしんけいそう)からの神経となり、
- 後上腕皮神経
- 後前腕皮神経
- 下外側上腕皮神経
- 後骨間神経
- 背側指神経
に分岐します。
役割として、
- 手首を上げる
- 指を伸ばす
- 腕(肘から下)を外に回す
主にこのような運動機能の役割があり、上腕の一部〜前腕の内側・親指・人差し指・中指の感覚を司る役割があります。
橈骨神経支配の筋肉
橈骨神経が支配する筋肉は数多くあります。
すごく多くて複雑なため、橈骨神経が支配している筋肉はこんなにあるんだという程度の理解でいいと思います。
抑えておきたいポイントは、手首を持ち上げる・指を伸ばす筋肉が中心ということです。
- 上腕筋
※筋皮神経との二重神経支配
- 上腕三頭筋
- 長橈側手根伸筋
- 短橈側手根伸筋
- 尺側手根伸筋
- 総指伸筋
- 小指伸筋
- 肘筋
- 腕橈骨筋
- 回外筋
- 長母指外転筋
- 長母指伸筋
- 短母指伸筋
- 示指伸筋
筋肉のことを簡易的に分かりやすく知りたい場合は、肉単がおすすめです。
原島 広至,河合 良訓 エヌ・ティー・エス 2004-09-30
橈骨神経麻痺の症状と原因
上記に説明した、橈骨神経の役割が障害されることを橈骨神経麻痺症状と言い、
- 手首が上がらない
- 指が伸びない
- 腕(肘から下)が外に回らない
- 前腕〜指にかけての痺れや知覚障害が起こる
このような症状が起こります。
手首が上がらない状態を「下垂手(かすいしゅ)」と言い、指が伸びない状態を「下垂指(かすいし)」と言います。
上腕部に該当する部分の橈骨神経症状と前腕部に該当する部分の橈骨神経症状とでは違いがあります。前腕部は具体的には後骨間神経麻痺と言いますが、これについては、また別の記事にまとめます。
原因として考えられるのは、怪我による傷害やガングリオンなどの良性腫瘍などによる圧迫(絞扼神経障害)、
上腕骨の骨折などの合併症などで起こります。
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橈骨神経麻痺麻痺の診断
診断としては、上腕部の神経が傷害を受けている部分を叩くとビリビリッと響く
ティネルサインが認められるか、また、上記に説明した症状があるかどうかを確認します。
確定診断のためにレントゲンやMRI・筋電図・超音波検査などが行われます。
橈骨神経麻痺の治療とリハビリテーション
橈骨神経麻痺の原因によって治療方法は変わってきます。
骨折による外傷や腫瘍などによる圧迫で橈骨神経麻痺が起きてしまっている場合は、その圧迫を取り除く必要がありますので、手術が選択されます。
外傷がない場合は以下の「保存療法」が選択されます。
- 内服治療(鎮痛剤・神経再生剤・ステロイド剤など)
- 装具療法
- リハビリテーション(物理療法・徒手療法・運動療法)
以下に、装具療法及びリハビリテーションについて説明をしていきます。
装具療法
装具療法では、下垂手・下垂指を予防するために手関節背屈装具が処方されます。
リハビリテーション
物理療法
橈骨神経麻痺では下垂手や下垂指が起こります。
末梢神経を活性化させるためや、動かないことによる筋肉の萎縮、筋力低下を予防するために電気刺激療法が行われることがあります。
徒手療法
徒手療法は、関節を動かす関節可動域訓練やマッサージ、ストレッチなどが該当します。
ここで詳細は割愛しますが、皮膚と皮下脂肪、筋膜、筋肉などの軟部組織の癒着(
トリガーポイント)が起きていると、神経を圧迫したり、筋肉の反応が悪くなったりします。
これを丁寧に理学療法士などの専門家に、徒手的に治療してもらうことが必要です。
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手首のストレッチを一部ご紹介しますので、参考にしてみてください。
肘を伸ばしたまま、手首の甲側・手のひら側を身体の方に向かって近づける。
両手の手のひら・手の甲を付けて、付けたまま矢印の方向に動かす。
運動療法
物理療法や徒手療法などで少しずつ動きがよくなってきたら、積極的に動かしていくことが必要です。
また、動きが悪くても動かすイメージを持ちながら丁寧に手首や指を動かすようにしていきます。
動きが不十分な場合は、もう一方の手で介助しながら行うことや、理学療法士などの専門家に介助してもらいながら行うようにします。
手首の運動方法を一部ご紹介しますので、参考にしてみてください。
手首の下に丸めたタオルをセットし、ペットボトルを持ったまま手首を上に持ち上げてください。
橈骨神経麻痺の症状が強い場合はうまく持ち上がりません。そのような場合は、もう一方の手で助けてあげながら手首を持ち上げるイメージをしながら持ち上げます。
また、下垂指の症状がある方は、手首を持ち上げるのと同時に指も伸ばすようにイメージしながら行うとより効果的です。
まとめ
橈骨神経麻痺による下垂手・下垂指についての概要とリハビリテーションを中心とした治療方法について解説をしましたが、いかがでしたでしょうか。
橈骨神経麻痺の多くは改善します。
手首や指が上がらない、上がりづらいなどの症状がある場合は、早い対処が早い改善につながります。
放っておかずに早めに専門医にご相談するようにしてください。
それでは、参考になれば幸いです。
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