リハビリの基礎知識
股関節『安定化機構』の概要とトレーニング・ストレッチの方法について解説します。
今回の記事は専門家向けの内容になります。
股関節の安定化機構はよく聞く言葉だと思います。
例えば、トレンデレンブルグ歩行やデュシャンヌ歩行は「中殿筋」が弱くなっているという認識は皆さんお持ちだと思います。
様々な参考書や文献を読んでも「中殿筋が原因」と書かれていることが殆どです。
確かに中殿筋の弱化は原因の1つになりますが、果たしてそれだけが原因なのでしょうか?
今回は、股関節の安定化に関わる筋肉とメカニズムについて解説をしていきます。
以下の書籍を参考にしています。
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股関節を安定させる筋肉
冒頭にも書いたように、股関節を安定させるには中殿筋の機能というのはとても大切です。
しかし、中殿筋だけで捉えてしまうのはよくありません。
中殿筋以外にも股関節の安定性に関わっている筋肉がたくさんあります。
特にその中でも、
大腿骨頭を求心位に保つため「単関節筋」が非常に役立ちます。
単関節筋の中でも、
「深層外旋六筋」と
「小殿筋」は特に大切です。
- 深層外旋六筋
①梨状筋
②上双子筋
③下双子筋
④内閉鎖筋
⑤外閉鎖筋
⑥大腿方形筋
- 小殿筋
梨状筋
起始:仙骨の全面・腸骨の大坐骨切痕
停止:大腿骨の大転子
作用:股関節の外旋
神経支配:坐骨神経叢
上双子筋
起始:坐骨棘・小坐骨切痕
停止:大腿骨の大転子
作用:股関節の外旋
神経支配:仙骨神経叢
下双子筋
起始:坐骨結節
停止:大腿骨の大転子
作用:股関節の外旋
神経支配:仙骨神経叢
内閉鎖筋
起始:坐骨・恥骨、閉鎖膜の内面
停止:大腿骨の大転子
作用:股関節の外旋
神経支配:仙骨神経叢
外閉鎖筋
起始:恥骨の閉鎖孔下縁、閉鎖膜の外面
停止:大腿骨の転子窩
作用:股関節の外旋
神経支配:閉鎖神経
大腿方形筋
起始:坐骨結節
停止:大腿骨の転子間稜
作用:股関節の外旋
神経支配:仙骨神経叢
小殿筋
起始:腸骨の前殿筋線と下殿筋線の間
停止:大腿骨の大転子
作用:股関節の外転・内旋
神経支配:上殿神経
深層外旋六筋と小殿筋は単関節筋となりますが、この単関節筋が大腿骨頭に対して求心位に働きます。
求心位に働くことで股関節の安定性に貢献します。
これらの筋肉に機能障害があると、股関節を安定させるために股関節の内転筋群の代償が生じます。
股関節が不安定・痛みがある場合には深層外旋六筋と小殿筋・股関節内転筋群はチェックすべき
ここまで説明してきた通り、股関節の安定性を保つためには、単関節筋である深層外旋六筋と小殿筋はとても重要です。
股関節に不安定性があったり、痛みを訴えている場合には、深層外旋六筋と小殿筋、そして、代償していることが考えられる股関節内転筋群は必ずチェックするようにしましょう。
股関節の痛みを引き起こすトリガーポイント
上記に股関節の内転筋群はチェックしたほうがいいと説明しましたが、股関節の内転筋群にトリガーポイントが形成されると股関節へ関連痛を引き起こします。
注意
股関節の痛みを引き起こす要因は内転筋群だけではありません。
内転筋群を確認してトリガーポイントがある場合には、トリガーポイントをしっかりリリースすることで股関節の痛みが取れる期待がもてますし、さらには筋出力も改善する可能性があります。
以下の関連記事で詳細は説明していますので、是非チェックしてみてください。
股関節を安定させるための筋力トレーニング・ストレッチ
股関節の安定性を高めるためには、股関節外転筋である中殿筋・小殿筋のトレーニングはもちろん行います。
それと同時に股関節外旋筋である、深層外旋六筋の強化も行うようにしましょう。
また、トレーニングだけではなく柔軟性も大事ですので、ストレッチも行うようにしましょう。
トレーニング方法・ストレッチ方法については、以下の記事で写真付きで解説していますので参考にしてください。
まとめ
股関節の安定化機構について解説をしましたがいかがでしたでしょうか。
股関節の安定化と聞くと「中殿筋」ということになりがちですが、深層外旋六筋も忘れずにケア・トレーニングを行うとより安定性が高まります。
立位保持や歩行でなかなか股関節周囲のStabilityが得られないという方は、深層外旋六筋と小殿筋の状態も確認してみてください。
それでは、少しでも参考になれば幸いです。
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