実際に運動負荷に対する見解は数多く散見されますが、その多くは、若い方やアスリート向けのものとして述べられているものが多いです。
一方で高齢者向けとなると、明確な数値的なものはあまりなく、運動強度といえば「メッツ」というところに行き着きます。
目次
運動強度のメッツとは?
身体活動の強さと量を表す単位として、身体活動の強さについては「メッツ」を用い、身体活動の量については「メッツ・時」を「エクササイズ」と呼ぶこととしました。
(1)「メッツ」(強さの単位)
身体活動の強さを、安静時の何倍に相当するかで表す単位で、座って安静にしている状態が1メッツ、普通歩行が3メッツに相当します。(2)「エクササイズ(Ex)」(=メッツ・時)(量の単位)
身体活動の量を表す単位で、身体活動の強度(メッツ)に身体活動の実施時間(時)をかけたものです。より強い身体活動ほど短い時間で1エクササイズとなります。・3メッツの身体活動を1時間行った場合
3メッツ× 1時間=3エクササイズ(メッツ・時)・6メッツの身体活動を30分行った場合
6メッツ×1/2時間=3エクササイズ(メッツ・時)
具体的には、横になったままや座ったままにならなければ、どんな動きでもよいので、身体活動を毎日40分行います。十分な体力を有する高齢者は、3メッツ以上の運動を含めた身体活動に取り組むことが望ましいとされています。
3メッツ以上の運動となると、一番わかりやすいのは、下記表にある「自体重を使った筋力トレーニング」が3.5メッツなので、1つの指標にできます。自重トレーニングとも言います。
いわゆる散歩などのウォーキングについては、4.3メッツとなるため、強度としては非常に有効ということになります。ただし、有酸素運動の定義として、15分以上連続で行うことが推奨されますので、ウォーキングの場合は1回あたり15分以上を目安に行うことが必要です。
運動内容 | メッツ |
ボウリング・社交ダンス | 3.0 |
自体重を使った筋力トレーニング(軽・中等度) | 3.5 |
ゴルフ | 3.5〜4.3 |
ラジオ体操 | 4.0 |
卓球 | 4.0 |
ウォーキング | 4.3 |
このように、メッツによって1つの指標を参考にすることは可能ですが、自重トレーニングをやればいいということはわかったとしても、どの程度やればいいのか、どのくらい負荷をかけていいものなのか。ここがいまいちはっきりしないので、ここからは論文や参考書をもとに、明確にしていきます。
筋トレの適切な強度と計算
筋トレ1回あたりの運動強度
低負荷抵抗トレーニングと高負荷抵抗トレーニングの筋力と肥大の適応
高強度・低負荷トレーニングと低強度・疲労困憊までの反復トレーニングでは、最大等尺性筋力及び筋肥大の効果に違いは見られない引用文献:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28834797/
健康な若い男性の筋力、質量、およびエコー強度に対する低負荷、高繰り返しのレジスタンストレーニングと高負荷、低繰り返しのレジスタンストレーニングの失敗への影響
8週間の訓練機関においての比較検討において、政府か高反復。トレーニングと抗不可低反復のどちらのトレーニングおいても筋力増強効果肥大効果が見られており、違いは見られない引用文献:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29016473/
60歳〜83歳の成人における抵抗運動と能力
中強度の負荷と高強度の負荷によるトレーニングの結果、筋力増加率は17.2%と17.8%であり、大きな差はないことがわかった引用文献:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12110072/
筋トレの運動強度
2019年ニューヨーク私立大学のシェーンフェルドらは、世界で初めて筋肥大の効果と週単位のトレーニング頻度に関するメタアナリシスを報告(内容はまとめて下記参照)参考文献:科学的に正しい筋トレ
こちらは論文です。
筋力が落ち移動機能が低下した高齢者を対象に1時間程度の運動を週2回行った調査では、1年間で筋肉が5.5%増加しました。引用文献:Yamada M,Arai H,et al.Journal of Fraility & Aging2012
超回復について
但し、部位によって回復する時間が異なり、概ね腹筋や下肢に関しては24時間程度で回復すると言われています。
上肢は48時間、胸筋や背筋は72時間など。この結果、筋肥大と筋力増強につながります。これを超回復と言います。
アンダーソンの運動基準
運動の強度に加えて、高齢者では運動の開始基準・中止基準をしっかりと頭に入れた上で対応することが必要です。
アンダーソンの運動基準については、下記のリンクページで説明していますので参考にしてください。
参考ページ:介護従事者のみなさん!これだけは覚えておいてください。「運動の開始基準と中止基準」をやさしく解説します。
高齢者に対する運動強度(負荷)を論文・書籍を参考にした結論
ここまで、運動強度の指標であるメッツに加えて、論文・参考書から下記に結論づけてみました。
高負荷でのトレーニングは効果がある一方で、ご高齢の方においては血圧上昇や頻脈など心臓への負荷も高まることから、内科的な疾患などを考慮しながら行う必要があります。
ですので、アンダーソンの運動基準をベースにしながら、自重や低負荷でのトレーニングを頻回に行なっていくことがベストであるということが言えます。
以上となります。
また新しい見解等あれば、加筆修正していきます。最後までお読みいただきありがとうございました。
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