脳梗塞や脳出血などの脳卒中では、障害される部位によって麻痺の程度が違ってきます。
また、麻痺にも色々
種類があり、脳卒中の多くは
「片麻痺(かたまひ)」になります。
その片麻痺では、下半身、特に足首〜足の指に該当する部分は「内反尖足(ないはんせんそく)」という足になりやすいです。
今回はこの内反尖足にフォーカスを当てて、概要とリハビリ治療、対策について解説をしていきます。
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そもそも内反尖足とは?
内反尖足とは、写真のように足首が下向き+内側(底屈+内反)に向いてしまった状態をいいます。
また、尖足は言葉で考えると、尖った(とがった)足となります。
つまり、内反尖足とは、
下に向いて、内側に反る、尖った足
ということになります。
脳卒中による内反尖足は、この足の状態を自分ではコントロールできなくなり、装具などの補助具が必要となります。
簡単に言うと「筋肉のこわばり(痙縮)」が起きて、脳の病気をしているために自らの意思では動かせなくなってしまいます。
これは専門用語では「痙性(けいせい)麻痺」と呼ばれ、筋肉の緊張が強くなってしまった状態をいいます。
「内反尖足」が起こる原因
上述したように、脳卒中などにより起こりますが、主な原因は
ふくらはぎの筋肉がこわばって(下腿三頭筋の筋肉の緊張が強くなる)しまうことです。
腓腹筋+ヒラメ筋=下腿三頭筋
ふくらはぎがこわばり、硬くなってしまうことにより、足の裏が床に対してしっかりつかなくなってしまいます。
そうならないように予防として、また、うまく歩けるように装具を使ったり、入念なストレッチやマッサージ、筋膜リリースなどが必要になります。
脳卒中治療ガイドライン2015
「内反尖足」に対するリハビリテーションとして、脳卒中治療ガイドラインには以下の治療方法が効果的であるとグレード別に提示されています。
グレードについて
グレードA:行うよう強く勧められる
グレードB:行うよう勧められる
グレードC:行うよう考慮してもいいが、十分な科学的根拠がない
グレードD:行わないよう勧められる
【歩行障害に対するリハビリテーション】
- 脳卒中片麻痺で内反尖足がある患者に、歩行の改善のために短下肢装具を用いられることが勧められる(グレードB)。
- 痙縮による内反尖足が歩行や日常生活の妨げになっている時に、脛骨神経または下腿底屈運動点のフェノールブロックを行うことが勧められる(グレードB)。
- 痙縮により尖足があり、異常歩行を呈しているときに腱移行術を考慮しても良い(グレードC1)。
- 慢性期の脳卒中で下垂足がある場合には機能的電気刺激(FES)が勧められるが、治療効果の持続は短い(グレードB)。
【痙縮に対するリハビリテーション】
- 痙縮に対し、高頻度のTENS(経皮的電気刺激)を施行することが勧められる(グレードB)。
- 慢性期片麻痺患者の痙縮に対するストレッチ、関節可動域訓練が勧められる(グレードB)。
- 麻痺側上肢の痙縮に対し、痙縮筋を伸長位に保持する装具の装着またはFES(機能的電気刺激)付装具を考慮しても良い(グレードC)。
- 痙縮筋に対する冷却または温熱の使用を考慮しても良いが、十分な科学的根拠はない(グレードC1)。
引用:脳卒中治療ガイドライン2015
ここまで内反尖足に対する部分を抜粋して引用しました。
専門用語が多くて分かりづらいかもしれませんが、ここで示されていることは、実際のリハビリテーションの場面でもよく行われている一般的な方法となります。
「内反尖足」に対して一般的に行われるリハビリ治療
内反尖足に対して、一般的に行われる治療方法としては以下の通りになります。
- 装具療法
- ふくらはぎのストレッチ、マッサージ、筋膜リリース
- 足首や足部の関節可動域訓練(関節の動きを柔らかくする)
- 電気刺激療法
- 温冷療法
こう見てみると、ガイドラインに示されている内容とほぼ変わりはありません。
以下に1つずつ説明をしていきます。
内反尖足に使われる装具療法
内反尖足に使われる装具は、麻痺の重症度によって以下のいずれかに選択されます。
装具名称 |
重症度 |
短下肢装具(プラスチック型) |
軽 |
継手付き短下肢装具(プラスチック型) |
中 |
金属支柱付き短下肢装具 |
重 |
プラスティック型の短下肢装具は「シューホンブレイス」と医療現場では呼ばれます。
短下肢装具(プラスティック型)
プラスチック型の短下肢装具は、通常よりも短いショートタイプのものや、踵(かかと)部分がくり抜かれたタイプのものもあります。
役割としては、足首を上に持ち上げ、その状態を保っていられる構造となっています。
ショートタイプのものは、踵がくり抜かれているために、靴が履きやすいというメリットがあります。
継手付き短下肢装具(プラスチック型)
プラスチック型短下肢装具に「足継手」が付いたもので、固定されずに、つま先を持ち上げる機能があるのが特徴です。
継手には様々な種類があり、多くの片麻痺患者さんに用いられています。
金属支柱付き短下肢装具
同じ短下肢装具でも素材が違い、金属支柱付きになります。
この装具には足首の部分に継手が付いていて、さらに「角度調整ができる」というのが特徴です。
強度も高いため安定性もいいのですが、重たいというのがデメリットになります。
ふくらはぎのストレッチ・マッサージ・筋膜リリース方法
ストレッチ
バランスに問題ない方がストレッチを行う場合は、写真のように行ってください。
【方法】
- 伸ばしたい方の足を後ろにして、身体を前に少し倒します。
- ふくらはぎが伸ばされていると感じるところで、30秒間キープしてください。
筋膜リリース
ふくらはぎに該当する筋膜は、足の裏からふくらはぎ・もも裏・お尻・腰・背中・頭とつながりがあります。
このつながりを意識して筋膜リリースすることは、効果的であると考えられます。
【方法】
- 壁に手をついて伸ばしたい方の足を後ろにする。
- 矢印のように、上半身と下半身を引き離すようにする。
- 腰が反りすぎないように注意する。
但し、これを行うことで逆に筋肉のこわばりが強くなるようでしたら中止してください。
ストレッチ・筋膜リリースともここで説明したのは、いずれにしても立位を保つことができる方が適応となります。
痙性麻痺によって筋肉のこわばりが強く立位バランスが悪い方は、無理せずに理学療法士や作業療法士などの専門家にストレッチやマッサージ、筋膜リリースをしてもらうようにしてください。
関節可動域訓練
これはストレッチなどと似ていると思われるかもしれませんが、あくまでも目的は「関節」です。
関節を正しい方向に動かせるように、硬くならないように適切に動かす必要があります。
むやみに動かすことで痛みがでてしまうこともあり、できるだけ理学療法士や作業療法士などの専門家に行ってもらうようにしてください。
電気刺激療法
電気刺激療法といってもいくつかに分類されますが、ガイドラインでは、
- 経皮的電気刺激療法(TENS)
- 機能的電気刺激療法(FES)
この2つがグレードBとして効果的であると示されています。
経皮的電気刺激療法(TENS)
TENSはよく使用される電気刺激療法ですが、いわゆる「低周波」になります。
ガイドラインでもあるように、周波数も低いため「高頻度」で行う必要があります。
現在はポータブル低周波として家電屋さんでもインターネットでも売られていますし、安価で購入することもできます。
ちなみに、私も普段訪問リハビリをしていますが、この低周波を使用することがあります。
低周波に温熱が加わるものも安価で販売されています。
機能的電気刺激療法(FES)
機能的電気刺激療法は、脳卒中などの麻痺や骨折・靭帯損傷などの術後に起こる筋力低下などに対する治療法になります。
最近では、IVES(アイビス)という治療機器がよく使用されています。
高価なものですが、運動療法と併用して使用すると効果的だと言われています。
温冷療法
ガイドラインでは、グレードC1と低いですが、特に温熱療法は皮膚の柔軟性を改善させます。
皮膚は皮膚運動学という学問があるように可動域にも影響してくるため、一概に効果がないとは言えません。
また、身体を温めることでリラックス効果が期待できます。
つまり、筋肉が緩みやすくなるという効果も期待できます。
マッサージやストレッチ、筋膜リリース、関節可動域訓練を行う前段階として行うと効果的です。
この温熱療法も今は家庭用がたくさん販売されています。
まとめ
脳卒中によって起こる障害の1つ「内反尖足」について解説をしましたが、いかがでしたでしょうか。
内反尖足を放っておくと、どんどん筋肉や筋膜などの軟部組織は硬くなり、関節の動きにも影響してきます。
そして筋肉の萎縮も起こってきます。
そうなると装具を作り直したり、歩きにくくなったりと日常生活の様々なことに影響してきます。
内反尖足を進行させないためには、定期的なリハビリと自主トレーニングが必須です。
ここで説明したことが少しでも参考になれば幸いです。
それでは、最後までお読みいただきありがとうございました。
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