疾患別リハビリテーション
手首(外側)の痛み『三角線維軟骨複合帯損傷(TFCC損傷)』の原因・症状・リハビリ治療について解説します。
<2017年12月06日修正・追記>
理学療法士の井上(@Rehacon)です。
先日、ゴルフに特化したGPTの記事を書きました。
その記事内で、過去に私が手首の痛みが酷かったということを書きました。
まさに今回のテーマである「三角線維軟骨複合体損傷(さんかくせんいなんこつふくごうたいそんしょう)」という怪我です。
テニスや野球、バドミントンなどのスポーツに多いといわれていますが、実はゴルファーにも多く、有名な選手では「古閑美保プロ」を引退に追いやったと言われる怪我です。
今回は三角線維軟骨複合体損傷の概要について解説をします。
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三角線維軟骨複合体損傷とは
随分と長ったらしい名前ですよね。
Triangular Fibrocartilage Complex
この怪我を医療現場では、英語の頭文字をとってTFCC損傷と(以下、TFCC損傷)呼びます。
簡単に言ってしまうと、
手首の外側の怪我のことをいいます。
手首の構造を見てみましょう
TFCCとは上で説明したように、「三角線維軟骨複合体」のことをいいます。
では、TFCCを構成するものはどんなものがあるのか。
- 尺骨三角骨靭帯(しゃくこつさんかくこつじんたい)
- 尺骨月状骨靭帯(しゃくこつげつじょうこつじんたい)
- 掌側橈尺靭帯(しょうそくとうしゃくじんたい)
- 背側橈尺靭帯(はいそくとうしゃくじんたい)
- 尺側側副靭帯(しゃくそくそくふくじんたい)
- 三角靭帯(さんかくじんたい)
これら6つの靭帯に加え、三角線維軟骨(関節円板)が加わり全ての総称をTFCCといいます。
ものすごく細かいので、これを全て理解しようとすると大変です。
「手首の外側には、細かな靭帯とか関節円板があってそこを傷めてしまうこと。」くらいの大雑把な理解で十分です。
靭帯というのは骨と骨をつなぎ合わせ、主に「関節の安定性」に貢献します。
つまり、TFCCは手首の外側の安定性に関与します。
そして、関節円板の役割は関節運動を円滑にしたり、関節への衝撃吸収をする役割があります。
TFCC損傷を起こす原因
ここまでTFCCの構造や機能について簡単に説明しました。
TFCC損傷を起こす原因としては、これらの構造にトラブルが起きている状態といえます。
つまり、TFCCを構成する靭帯や関節円板が損傷を受けた状態といえることができます。
ではどんな原因で損傷を受けやすいのか。
TFCC部分に引っ張られる(牽引)ことが繰り返されたり、圧迫力が強く働き、さらに捻る動きが加わる事が日常的に繰り返されると起こりやすくなります。
こういう動きが起こるのが、テニスや野球、バドミントン、ゴルフなどのスポーツです。
スポーツ種別を見てみると、ラケットやバット・ゴルフクラブなど道具を持って行うスポーツだということがお分かりいただけるかと思います。
上記スポーツはいずれも、手首の「牽引・圧迫・捻り」が起こりやすいスポーツといえます。
TFCC損傷の症状
主な症状としては以下の通りです。
- 手首の外側の痛み
・圧痛
・動作時痛
- 手首を返すなどの動作制限
- 握力低下
自分で動かす範囲の手首の上下運動ではさほど痛みはなく、手首を後ろに反る背屈位での圧迫や手首を外側に動かしたり、回したりする時の痛みが特徴的です。
TFCC損傷の検査と診断
理学的所見
尺屈テスト
手首を外側に動かす「尺屈(しゃくくつ)」動作で痛みが出るか確認する。
尺屈+圧迫テスト
さらに、尺屈した状態から下に圧迫を加えて痛みが出るか確認する。
尺屈+回外テスト
写真のように手首を尺屈させ、そのままの状態から手首を回し痛みが出るか確認する。
平らなところで手首を反らせる
TFCC損傷では、手をつく動作で痛む事も特徴であるため、平らな面に手をついて圧迫を加えて痛みが誘発されるか確認をします。
画像所見
レントゲン検査をしますが、基本的にレントゲンでは骨に異常があるかどうかの確認であり、レントゲンでTFCC損傷があるかどうかは分かりません。
確定診断には、造影剤検査やMRI所見が必要になります。
場合によっては、内視鏡の検査が行われることもあります。
理学的所見・レントゲン・MRIなどの検査を行い、総合的に判断されます。
TFCC損傷の治療
基本的には保存療法が選択されます。
安静・固定
TFCC損傷が起きてしまった場合は、まず「安静」が選択されます。
痛みの範囲内で使用し、スポーツは無理せず休むことが必要です。
痛みに応じてギプス固定などが選択され、一般的な固定期間としては、3〜4週間です。
またその他に固定するものとしては、サポーターやテーピングがあります。
スポーツに復帰したとしても、予防のためや不要な動きを抑制するためにサポーターやテーピングの使用はおすすめします。
テーピングにおいては、固定力が強い方がよい時期は「非伸縮タイプ」、運動を開始した時は「伸縮タイプ」を選ぶと良いです。
TFCC損傷に対するテーピングについては、以下に動画を張り付けておきますので参考にしてください。
Mueller(ミューラー) 2014-05-01
野田 哲由,岡田 隆 高橋書店 2012-07-21
内服治療
痛みが強い場合、消炎鎮痛剤が処方されます。
注射
安静・内服にて症状が軽減されない場合、ステロイド注射が施されることがあります。
手術
およそ3ヶ月で痛みはなくなりますが、全然痛みが改善されない場合や日常生活に明らかに影響を及ぼしている場合などは手術が選択されることがあります。
TFCC損傷に対するリハビリと予防
TFCC損傷に対する治療では、主に安静固定が行われることは説明しました。
安静や固定というのは、あくまでも必要最低限であり、ある一定期間が過ぎ、痛みが治まってくれば必要に応じて動かしていく必要があります。
TFCCは手首の動きに関与します。手首の動きに関係してくる筋肉はたくさんありますが、特に注目していただきたいのが、
- 尺側手根屈筋(しゃくそくしゅこんくっきん)
- 尺側手根伸筋(しゃくそくしゅこんしんきん)
この2つの筋肉です。
固定期間があると筋肉もあまり使わないため筋力も落ちますし、筋筋膜も硬くなりやすくトリガーポイントができることがあります。
これらの筋筋膜をリリース・ストレッチすることや筋力トレーニングを小さい負荷からはじめていくことは必要です。
以下に、セルフで行える筋膜リリース方法やストレッチ方法、筋力トレーニング方法をご紹介しますので、参考にしてみてください。
実際に自分がTFCC損傷を起こした時、この2つの筋肉の張りが強く、手首の動きの制限になっていました。自ら以下のセルフケアを行いました。
筋膜リリース・トリガーポイント療法
✖印を親指やゴルフボール、テニスボールで30秒圧迫+30秒解放を行います。
筋肉に沿ってゆっくりと一定の圧力で矢印方向に動かします。
ストレッチ
①肘をしっかり伸ばしたまま手首を反らす。
②肘をしっかり伸ばしたまま手の甲を前に向けて手前に引く。
筋力トレーニング
ここでは500mlのペットボトルを使用しています。
重錘バンドや鉄アレイなどの重りを使用して行うことをおすすめします。
①手のひらを上にして、肘を伸ばしたまま手首を上に持ち上げる。
②手の甲を上にして、肘を伸ばしたまま手首を上に持ち上げる。
③立った状態で、小指側に手首を動かす。
まとめ
TFCC損傷の概要とリハビリテーションについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
リハビリや予防についてはとても大切なのですが、スポーツで受傷してしまうケースの多くは
運動のやり過ぎによる過負荷か、もしくは身体の使い方に問題があるケースが多いです。
例えば、私のようにゴルフスイング自体を修正することで痛みが治る、再発しないようにしていくなど、身体の使い方を修正していくことが大切だと考えています。
何度も手首の怪我を繰り返している方は、一度理学療法士などの身体の専門家に動作チェックをしてもらってください。
解決の糸口になるかもしれません。
最後になりますが、TFCC損傷とは手首の捻挫とは違います。
手首の怪我で大したことないと思っている方も結構いらっしゃいます。
なかなか痛みが治まらないという場合は、早めの病院受診をおすすめいたします。
少しでも参考になれば幸いです。
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