リハビリの基礎知識
介護に関わる人が覚えておくべき『杖の種類』はたったの5種類です!
PT井上(@Rehacon)です。
今回の内容は、介護に関わる仕事をしている方や家族の介護をしている方向けとなります。
介護に関わる以上、「杖」というのは必ず見るものであり扱うものになります。
杖といってもいくつも種類があります。
今回は杖の種類と使用目的・使用方法について解説していきます。
【key word】杖の種類・使用目的・使用方法
【対象者】介護に関わる方
そもそも杖を使う目的とは
- 足腰の筋力が弱い
- 足腰に痛みがある
- 歩行時にバランスを崩しやすい
このような目的があります。
これをさらに細分化していくと、状態に合わせてどんな杖を使う必要があるのかという視点が大事になります。
杖の種類は大きく分けて5種類
- T字杖
- 四点杖
- 四点杖(可動式)
- ロフストランド杖
- 松葉杖
松葉杖は高齢者で使用することはほとんどありませんが、一般的にも認知されている杖ですので、番外編として入れさせていただきました。
T字杖
これはみなさんが連想する、いわゆる杖です。
「高さを調整」できるものや「折りたたみ式」などいくつか種類があります。
安価のものでは高さ調整ができないものもあり、身体の状態に応じて高さを微調整しますので、高さ調整ができる杖のほうをおすすめします。
また折りたたみ式は、折りたためないものと比べると「強度」が劣ります。
どちらを選ぶべきか
折りたたみ式ではない:日頃から常にT字杖を使う方は折りたたみ式ではないものを選びましょう。
折りたたみ式:よく外出するが、時々使う程度の方であれば折りたたみ式を選ぶと有効活用できます。
T字杖の合わせ方
補足
T字杖・四点杖・四点杖(可動式)とも基本的に同じ合わせ方になります。
松葉杖とロフストランド杖はやや違いがありますので、以下の松葉杖・ロフストランド杖をご参照ください。
- まず真っ直ぐ立ち、気を付けをする。
- 杖を持っている側の足のつま先から10〜15㎝前外側に杖がつくようにする。
- 杖を持った時、肘が30°程度曲がる程度が基準となります。または手を真っ直ぐ伸ばした時、手首の骨の高さにグリップがくる位置を基準とします。
ここで注意すべき点は、支える力が弱い場合は肘が30°ではなく、もう少し肘が伸びている方が安定することがあります。
このあたりの微調整が必要ですので、高さ調整できるものの方がいいということになります。
T字杖の対象者
- 杖がなくても何とか歩くことができるが、安定性にやや欠ける場合
- 杖を持たないと不安な場合 など
T字杖の使い方
これは以外と間違っている方がいますが、利き手で持つのではなく、痛みや筋力が弱い方の足とは反対側の手で杖を持ちましょう。
(例)右足の痛みがある・右利き
「左手」で持ちましょう。
どのように歩くと安全で効率的なのかは人それぞれ違いますので、担当療法士などに相談してください。
四点杖
T字杖は支点が1つなのに対して、四点杖は4つの支点になります。
支点が増えることで安定感が増します。
T字杖で安定性に欠ける場合などに選択されます。
四点杖の欠点
支点が4つあるが故に、路面が平らでないところは逆に不安定になります。
つまり、屋外で使うには機能を最大限発揮できないということです。
この欠点を補うとてもおすすめな杖を以下にご紹介します。
四点杖(可動式)
これは非常に便利な杖でおすすめします。
上で説明した通り、四点杖の欠点を補う杖になります。
支点は4つのままで、支柱が前後に可動するため不整地な路面にも接地しやすく、対応できます。
私も最近は、この杖を臨床現場で選択する機会が増えてきました。
ロフストランド杖
ロフストランド杖は、T字杖にプラスして、前腕部(肘よりも下)にカフと呼ばれるものが付いているのが特徴です。
カフの役割には、前腕で支える機能があるため「握力が弱い方」向けといえます。
つまり、グリップを握る握力と前腕の筋力で支えるという構造になります。
このロフストランド杖、日本での使用率は低い印象です。
安定性のある杖ですので、個人的にはおすすめしたい杖です。
ロフストランド杖の合わせ方
- これまで説明した杖と同様に、肘は30°程度曲げる、若しくは足の付け根・手首の骨の高さで握る。
- カフの位置は「肘下5㎝程度下」に設定しますが、使いやすさに個人差がありますので微調整が必要です。
- 杖を持っている側の足のつま先から10〜15㎝前外側に杖がつくようにする。
杖の使い方に関しては、②でも説明した通り、カフの位置や角度によって歩きやすさに個人差があります。
使用時は、担当療法士に指導してもらってください。
松葉杖(番外編)
松葉杖はみなさんご存知かと思います。
足の怪我をするとよく整形外科では松葉杖が処方されます。
実はこの松葉杖、間違って使っている方を街中でよく見かけます。
その間違いとは「脇の下で支えている」ということです。
これは「腋窩神経麻痺(えきかしんけいまひ)」のリスクがあり、よろしくありません。
腋窩神経麻痺とは
脇の下を通っている神経があります。そこを腋窩神経といいます。
松葉杖を使用し、脇の下で支えていると痺れや痛み、感覚異常などのトラブルが起こります。
これを「腋窩神経麻痺」といいます。
正しい松葉杖の合わせ方
- これまで説明した杖と同様に、肘は30°程度曲げる、若しくは足の付け根・手首の骨の高さで握る。
- 脇の下は指3~4本分程度下に設定。
- 杖を持っている側の足のつま先から10〜15㎝前外側に杖がつくようにする。
松葉杖の使い方については、怪我の状況に応じてかなり変わってきます。
使用時は、担当療法士に指導してもらってください。
杖を使用する上で注意してほしいこと
さて、ここまで杖の種類をご紹介しました。
どの杖を使用したとしても共通した注意点があります。
それは、杖先に付いている「ゴム」です。
このゴムが劣化して滑って転倒ということはよくあります。
購入してから定期的にゴムをチェックすることが転倒予防にもつながります。
と思われた方は是非定期的に確認するようにしてください。
まとめ
杖の種類を説明しましたが、いかがでしたでしょうか?
以外と分かっているようで分かっていないのが杖の種類や使用方法です。
杖の高さが少し変わるだけで歩くのが楽になります。
今一度確認してみてはいかがでしょうか。
参考になれば幸いです。