医療の基礎知識
いっこく堂さんに学びましょう!『迷走神経反射』について誰でも分かりやすく解説します。
PT井上(@Rehacon)です。
昨日の朝の番組で、腹話術師のいっこく堂さんが『迷走神経反射(めいそうしんけいはんしゃ)』により失神し、頭部を打撲したことによる「外傷性のクモ膜下出血」・「両側前頭葉の脳挫傷」で入院したと報道がありました。
非常に怖いですよね…
他人事ではないです。
よく貧血と間違われる迷走神経反射。
今回は『迷走神経反射』について触れていきます。
【key word】迷走神経反射・迷走神経性失神・自律神経・副交感神経
【対象者】全ての方
迷走神経反射とは
ストレス、強い疼痛、排泄、腹部内臓疾患などによる刺激が迷走神経求心枝を介して、脳幹血管運動中枢を刺激し、心拍数の低下や血管拡張による血圧低下などをきたす生理的反応。
脳幹血管運動中枢からの刺激は末梢各臓器の運動枝を介して、伝えられる。
※引用:日本救急医学会
引用だけを見るとかなり難しいですね。
なるべく分かりやすく解説していきますね。
迷走神経というのは、脳神経の12対ある神経のうちの1つです。自律神経系に作用していて「副交感神経」として作用します。
交感神経
交感神経が優位になるのは以下の通りです。
- 活動している時
- 緊張する時・している時
- ストレスを感じる時・感じている時
副交感神経
副交感神経が優位になるのは以下の通りです。
- 休んでいる時
- リラックスしている時
- 寝ている時 など
迷走神経は、副交感神経の働きがある神経になります。
人間の身体はこの自律神経系がバランスよくとれた状態になっています。
つまり迷走神経反射とは、交感神経と副交感神経にアンバランスが生じたときに起こるといえます。
交感神経と副交感神経のアンバランスとはどんな状態か
例に挙げます。
例えば骨折をしたと仮定します。
骨折は日常的に起こるものではありません。これは日々、自律神経がバランスよくとれたものから逸脱した状態です。
骨折 → 日常にない痛み → 交感神経が強く働き、血管の収縮が起き血圧が上がる・心拍数が上がる・呼吸も浅く頻呼吸になる
このように交感神経が働きます。
そこで交感神経を抑制しようと副交感神経が「過剰」に働きます。
血管を拡張させる → 血圧を下げようとさせる → 心拍数を下げようとさせる
つまり、反作用が働きます。
この反作用が働くと、脳にある血液量が足りなくなります。
つまり「脳虚血(のうきょけつ)」が起こります。
また、迷走神経は腹部内臓まで分布していますので内臓の血流も不足します。
補足
排尿後や排便後に失神が起こることがあります。
この背景は、内臓まで分布する迷走神経が急な腹圧で刺激されるためです。
これらが原因で血の気が引くような「失神」を引き起こします。
これを『迷走神経性失神』といいます。
貧血と迷走神経反射の違い
貧血とは、血液の赤血球が少なくなり、血液が薄くなることが本来の貧血の意味です。
迷走神経反射は副交感神経が過剰に働き、自律神経系のアンバランスが関与していると説明してきました。
この違いが貧血と迷走神経反射との違いです。
よく学生さんが体育館での朝礼で貧血症状を起こすことがありますよね。
あれは厳密には貧血ではなく、迷走神経反射なんですね。
いっこく堂さんのケース
いっこく堂さんは普段アルコールを飲まないそうです。
普段あまり飲まないアルコールを飲んで身体がびっくりしたことで自律神経のアンバランスが引き起こされたと考えられます。
迷走神経反射自体はそんなに問題になるものではありません。
ただ、いっこく堂さんのように失神し頭部をぶつけたことでクモ膜下出血や脳挫傷を引き起こすということもあります。
失神が日常的にある方は医師にご相談することをおすすめします。
迷走神経反射の予防
迷走神経反射自体を予防するのはなかなか難しいので、迷走神経反射による二次的な怪我を予防するために「前駆(ぜんく)症状」に気をつけることが大切です。
前駆症状(前兆)
- 目の前がかすむ
- 気分が悪くなる
- あくびがよく出る
- 吐き気がする など
このような症状があれば、無理せずにゆっくり横になり休むことが大切です。
まとめ
迷走神経反射についてなるべく分かりやすいように解説しました。
いかがでしたでしょうか?
こう考えてみると、迷走神経反射は貧血と間勘違いされているだけでよくあるんですよね。
アルコールが苦手な人に、「飲め飲め!」「ノリ悪いなぁ!」
こんなこと言っちゃダメですからね!
では、最後までお付き合いありがとうございました。
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