医療の基礎知識
肩の痛み『五十肩・四十肩』の診断や原因・症状・治療方法について分かりやすく解説します。
<2017年12月10日修正・追記>
理学療法士の井上(@Rehacon)です。
みなさん、「五十肩・四十肩」という言葉を聞いたことありますか?
たいていの方は聞いたことがあるかもしれません。
40代〜50代に発症しやすいことからこのような名前がついていますが、30代の方でも60代の方でもなる方は大勢いらっしゃいます。
肩が痛くて動きが悪いと、着替えやお風呂など様々な日常生活に支障がでてきます。
非常に不快ですよね。
今回は、五十肩・四十肩(以下、五十肩と略します)がどのように診断されるのか、原因・症状・治療方法について基本的なところを解説していきます。
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五十肩・四十肩とは
五十肩や四十肩は診断名ではありません。
一般的にはこの名前が浸透していますが、医療現場では「肩関節周囲炎」と呼びます。
名前の通り、「肩関節の周りの炎症」ということになります。
原因は、はっきりこれ!というのがないのが特徴です。
骨や軟骨、靭帯、腱(スジ)などが老化して肩関節の周りに炎症が起こるのが原因となります。
そして、男性よりも女性に多いというのも特徴であり、およそ70%が女性といわれています。
但し、私の経験上では6:4で女性が多いという印象をもっていて、決して女性がすごく多いという印象はありません。
五十肩・四十肩の症状
主な症状は2つ。
- 肩〜腕にかけての運動時痛
- 肩の動きに制限が出る(肩の動きが悪くなる)
この2つが主な症状になります。
日常生活では、
- シャツを着る
- 髪を結う
- 髪を洗う
- 帯を結ぶ
- ブラジャーをつける
このような動きに支障が起きてきます。
「腱板損傷」・「石灰沈着性腱板炎」との鑑別
似たような症状に上記疾患があります。この鑑別は必要になります。
腱板損傷
肩には「腱板(けんばん)」というものがあります。腱板断裂とか腱板損傷とか聞いたことある方もいるかもしれません。
腱板というのは、「棘上筋(きょくじょうきん)」「棘下筋(きょっかきん)」「小円筋(しょうえんきん)」「肩甲下筋(けんこうかきん)」という4つの筋肉があるのですが、これらの筋肉は最終的に腱(いわゆるスジ)になり骨に付きます。
そして肩周囲の前後面にあり、肩の安定感を高めます。
これら4つの腱を総称したものを「腱板」といいます。
肩の関節というのは、他の関節と比べても比較的不安定な関節です。その不安定さをこの腱板や関節包が守ってくれているわけです。そうしないと肩は不安定で脱臼してしまいます。
つまり、不安定な関節であるが故に肩を酷使すると腱板の損傷、断裂を引き起こしやすくなるということです。
これが腱板損傷ということになります。
鑑別はMRIをとれば分かります。
石灰沈着性腱板炎
この疾患の特徴は「夜間痛」です。眠れないほどの激痛が特徴です。そして痛みで肩も動かせなくなります。
五十肩でも夜間痛は存在します。
40〜50代の女性に多いとされていて、腱板内に石灰が沈着して炎症を起こす疾患です。
レントゲンをとることで鑑別できます。
五十肩・四十肩の臨床所見
臨床所見では、五十肩は肩を外転(横に上げる)すると痛みの代償動作として肩甲帯が挙がってしまうことが多いのが特徴です。
逆に腱板損傷では、「腕が挙がらない・挙がりにくい」というのが特徴です。
また、五十肩は利き手でも利き手じゃなくても起こりますが、腱板損傷では肩を酷使する背景から「利き手に多い」のが特徴です。
例) 野球選手の利き手など
五十肩・四十肩の検査・診断
- 問診
- 触診
- レントゲン撮影
- 関節造影検査
- 超音波
- MRI
これらの検査で五十肩なのか腱板損傷なのか、石灰沈着性腱板炎なのか、他の疾患なのかを鑑別することができます。
五十肩・四十肩の治療方法。ポイントは2つ!
ポイントは「薬物療法・リハビリ(理学療法)」この2点です。
急性期は痛みが強く出ます。そのため、「三角巾」や「アームスリング」といった関節を保護するものを使用する場合があります。
内服は、消炎鎮痛剤やステロイド剤・ヒアルロン酸の注射などが行われます。
これ以外は、リハビリが中心となっていきます。
まとめ
五十肩の原因や症状、鑑別方法や治療方法について解説しました。簡単にまとめます。
- 五十肩や四十肩は別名、「肩関節周囲炎」と言います。
- 症状は主に2つで、「痛み」と「肩の運動制限」が起こります。
- 「腱板損傷」や「石灰沈着性腱板炎」との鑑別が大事です。
治療方法は「薬物療法」と「リハビリテーション」が中心となります。
肩の痛みを感じた時に、接骨院や整骨院、または民間のマッサージ屋さんに行く方も多いのが現状です。
これまで説明してきたように、他の疾患との鑑別が大事です。
私が整形クリニックで勤務していた頃、ずっと接骨院に行ってたけど全くよくならなかったなどという声を聞くことがありました。
その背景には、整形外科に来てみたら腱板損傷だった、石灰沈着性腱板炎だったということが何度もあります。これはよくありません。
決して接骨院が悪いわけではありませんが、診断をできるのは医師だけです。
まずは整形外科に行って鑑別してもらうことが大切ですよ。
次回は五十肩に対するリハビリの基礎知識について解説していきます。
参考になれば幸いです。
関連書籍
ロビン・マッケンジー 実業之日本社 2011-04-21
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