リハビリの基礎知識
誰でも分かる!『呼吸療法(リハビリテーション)』の考え方・概要について解説します。
<2017年6月5日追記>
理学療法士の井上(@Rehacon)です。
みなさん、『呼吸リハビリテーション』をご存知でしょうか?
呼吸リハビリテーションとは読んで字のごとく、呼吸に関連するリハビリテーションのことです。
呼吸器系の病気ももちろんそうですが、呼吸には胸郭(きょうかく)の柔軟性・深呼吸の行い方・下肢(下半身)の筋力向上などと呼吸器疾患がなくても実は呼吸器系に関与し様々ないい効果をもたらします。
そして、呼吸器系の機能低下をきっかけとして、体力が落ちてしまう → 外出をしなくなる → 閉じ込もり → 寝たきりになってしまうなど、ちょっと大袈裟かもしれませんが悪循環に陥ってしまう可能性があります。
呼吸器疾患がなくても、呼吸器に関わる運動機能を向上していくことで呼吸器疾患の予防や健康予防につながります。
今回はまず、『呼吸リハビリテーション』とはどういうものなのか、概要について知っていただければと思います。
【key word】呼吸リハビリテーション・呼吸筋・呼吸補助筋・QOL
【対象者】一般の方・介護従事者・療法士学生・看護学生 など
呼吸器とは
呼吸器とは、呼吸をする時に使われる身体の部位のことをいいます。
大別するとこの部位が呼吸器に該当します。
リハビリを考えた時、この4つの部位に加えて、
- 胸郭(きょうかく)
- 呼吸に関連する筋肉(呼吸筋)
この2点を考慮することは重要です。
胸郭とは
- 胸骨
- 肋骨
- 肋軟骨
- 胸椎(背骨の胸に該当する骨)
これらで構成された総称を「胸郭」といいます。
この胸郭の中に肺が収まっています。
肺というのはこの胸郭という「カゴ」に守られており、さらに関連する筋肉により強固に守られています。
胸郭というのは、肺に酸素が入り膨らんでくると、邪魔をしないように連動して胸郭も広がっていく機能があります。
呼吸に関連する筋肉
主な呼吸筋
- 横隔膜(おうかくまく)
- 内・外肋間筋(ろっかんきん)
- 僧帽筋(そうぼうきん)
- 脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)
呼吸補助筋
- 胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)
- 前・中・後斜角筋(しゃかくきん)
- 大胸筋(だいきょうきん)
- 腹直筋(ふくちょくきん)
- 内・外腹斜筋(ふくしゃきん)
- 腹横筋(ふくおうきん)
このように呼吸に関連する筋肉はたくさんあるんですね。
この中でも重要な筋肉が2つあります。
- 横隔膜(おうかくまく)
- 外肋間筋(がいろっかんきん)
【横隔膜】
【外肋間筋】
この2つです。
理由は、通常の「安静吸気(安静時に息を吸うこと)」はこの2つの筋肉で行われるからです。
「安静時呼気(安静時に息を吐くこと)」は、吸って肺が膨らんだ弾力で自然と肺というのは通常の大きさまで戻ります。
つまり、安静呼気時は筋肉をあえて使う必要がないんですね。
横隔膜と外肋間筋は「無意識化」で安静吸気時に使われている、安静呼気時は筋肉は働かないと理解していただければいいと思います。
僧帽筋や脊柱起立筋は「意識化」ではあるものの、深呼吸をする時などに使われる筋肉になります。呼吸筋では重要な筋肉となります。
【僧帽筋】
また、この2つの筋肉は背中側にある筋肉ですが、姿勢を保持する筋肉としても有名な筋肉です。
この2つの筋肉が硬くなったり、筋力が落ちてしまい背中が丸まった姿勢になってしまうと、胸郭がうまく広がらなくなります。
つまり、呼吸が浅くなるということになります。
では、他の呼吸に関連する筋肉はどのように使われるのか説明していきます。
呼吸補助筋
見出しの通りで、その他の筋肉は呼吸を補助するための筋肉ということになります。
例えば、マラソンをしていると過程します。
マラソンをして息が上がってくると、通常の呼吸よりも呼吸が荒くなってきます。
その時に首周りを見てもらえると分かりますが、首の筋肉がものすごく使われていることが分かります。
この時に使われているのが、「胸鎖乳突筋」や「斜角筋」の呼吸補助筋になります。
【胸鎖乳突筋】
【斜角筋】
補足
腹部周囲の筋肉ももちろん補助筋として作用しますが、運動をしていると通常の運動機能としても作用しています。
医療現場でいえば、呼吸器系の病気になってしまうと、肺自体がうまく働かなくなります。
横隔膜や外肋間筋の筋力が落ちてくると、呼吸補助筋で代償して酸素を取り込むようになります。
そうでもしないと、体内にうまく酸素を取り込めなくなるからです。
これでも酸素を取り込めなくなった場合に吸入マスクなどで強制的に酸素を吸入することになります。
呼吸リハビリテーションの目的
基本的な考え方は「呼吸困難感を軽減すること」と「体力面の強化」にあります。
そのために必要なこと。
- 胸郭の柔軟性を保つこと
- 呼吸に関連する筋肉の柔軟性を保つこと
- 呼吸に関連する筋力の向上
- 下半身の筋力強化
- 有酸素運動を行うこと
- 痰を出しやすくする・出しやすい方法を覚えてもらう
- 適切な呼吸方法を理解してもらう
- セルフケア・セルフトレーニングを覚えてもらう
このような方法で呼吸困難感の軽減と体力面の強化を目指します。
呼吸リハビリテーションの効果
目的でも書きましたが、胸郭の柔軟性が改善し、呼吸に関わる筋肉の柔軟性が改善すればまず、呼吸が楽になります。
そして呼吸に関わる筋力を強化することで結果的に痰が出しやすくなります。
痰が出しやすくなるというのは、痰が出せなくなると細菌が体内に残り、「肺炎」になりやすくなるため重要です。
補足
肺炎は日本人の死亡原因の第5位以内に毎年入ってる怖い病気です。
適切な呼吸方法を覚えていただくことで呼吸が楽になりますし、苦しくなったときにセルフコントロールすることが可能となります。
症状や身体状況にもよりますが、呼吸が楽になって動きやすくなった・呼吸が楽になって動くのが億劫でなくなったということが重要です。
結果的に「日常生活の活動性」が拡大すること。これが大切だと私は考えています。
呼吸リハビリテーションの対象疾患
- 食道・肺の術後
- 肺炎
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD):慢性気管支炎、肺気腫(はいきしゅ)
- 気管支喘息
- 気管支拡張症 など
多岐に渡ります。
病気になって呼吸器関連に様々なトラブルが起こってしまうものをリハビリによって改善や進行予防をするというのが目的となります。
まとめ
いかがでしたか?
少しは呼吸リハビリテーションについてご理解いただけたでしょうか。
- 呼吸器とは、大別すると鼻・喉・気管支・肺を指すこと
- 呼吸リハビリでは、胸郭・呼吸筋を考慮する必要があること
- 呼吸筋では主に横隔膜・外肋間筋・僧帽筋・脊柱起立筋が重要であること
- 呼吸リハビリでは、呼吸困難感の軽減とコントロール・体力面の向上が基本的な目的となること
- その上で日常生活の活動性が拡大することが最終目標であること
では最後に重複しますが、呼吸リハビリテーションとは、クライアントさんがいかに呼吸を楽にして生活していけるかという『QOL(生活の質)』が重要であり、最終目標になるとご理解いただけたらと思います。
参考になれば幸いです。
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なるほど!
と、いうことは…首まわり・背中の筋肉が硬い方には筋のストレッチ、円背の方には姿勢の修正をしていく意義があるということですね_φ(・_・
わかりやすかったです!ありがとうございました。
タバコの害として、喫煙することで肺が硬くなり、膨張しなくなるために胸郭も硬くなってより呼吸しにくい負のスパイラルに入ることも考えられますか??
小林さん、いつもコメントありがとうございます。
今回を機に、『リハビリの質問コーナー』的なものを作ろうかと思っています。
小林さんのコメントをブログのコンテンツとしてご紹介させていただいてもよろしいでしょうか?
そこで私なりの考えを示せればと考えています。
すみません、記事を読んでそのままの感想をいつもコメントさせていただいております…笑
余計な手間を増やしてしまい、申し訳ありません。
どのような形でも構いませんので、お暇がある時にお付き合いいただければ幸いと思っております。
凄く免強になりまくた。
またいろいろ教えて下さい。
コメントいただきありがとうございます。
もっともっと勉強して、適切な情報発信していけるように頑張ります。また他の記事もお読みいただけたら幸いです。ありがとうございました^^