CMでも注意喚起『一過性脳虚血発作(TIA)』とは?


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理学療法士の井上(@Rehacon)です。

 
みなさんは「一過性脳虚血発作」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
 
最近テレビCMでもよく流れていますので、ご存知の方も多いと思います。
 
言葉の1つ1つの意味を考えれば何となくイメージできると思います。
 
「一時的に脳への血流が足りなくなる」と理解してもらえればと思います。
 
脳への血流が足りなくなると様々な発作が起こります。
 
一過性脳虚血発作は脳梗塞(のうこうそく)の一歩手前といわれます。
 
今回は「一過性脳虚血発作」について解説していきます。
 
【key word】一過性脳虚血発作・TIA・診断基準・治療
【対象者】全ての方
 

一過性脳虚血発作とは

 
Transient   Ischemic   Attacksの頭文字をとってTIAといいます。(以下、TIA)
 
冒頭にも説明しましたが、TIAは一時的に脳への血流が足りなくなり、様々な発作を起こすことをいいます。
 
なぜ血流が足りなくなるのか。
 
その多くは「動脈硬化」が原因で、動脈硬化→血栓(血の塊)ができる→血管に詰まりやすくなる→血が流れにくくなる。
 
こういう流れでTIAは起こります。

血栓で血の通り道を完全に塞がれてしまうと「脳梗塞」となってしまいます。

 
また別の原因としては、心房細動などの心疾患が原因で血栓ができてしまい、血栓がはがれて詰まり、脳梗塞になってしまうものもあります。
 
 

2009年米国心臓協会・脳卒中協会での論文

 
TIAとは脳、脊髄または網膜の局所的虚血による一時的な神経学的機能障害で急性梗塞を伴わないもの
 
と定義されています。
 
元々TIAは症状が出ても24時間以内に症状がなくなるものと定義されていましたが、上の論文の定義では時間の記載はありません。
 
この理由としては、24時間以内に症状がなくなったとしても画像を確認すると脳梗塞が認められるケースがあるからです。

 
 

TIAの症状

 
  • 頭痛・頭が重い
  • めまい・立ちくらみ
  • 片方の手足や顔が動きづらい・力がうまく入らない
  • 片方の手足や顔がしびれる、感覚がにぶくなる
  • 呂律が回らなくなる・回りづらくなる
  • 片方の目が見にくくなるなど
 
症状は5〜10分程度が殆どで、多くは1時間以内に症状は治まります。
 
この症状が治まるというのが厄介で、短時間の症状のため治まってしまえばそのままにして、再発→脳梗塞発症というのが一番危惧されます。
 
 

TIAの危険度スコア(ABCDDスコア)

 
TIAは脳梗塞の前兆として、発症リスクを判断するために重要です。

そこで、発症リスクを簡易的に判断するのに「ABCDDスコア」が使われます。

A Age(年齢)  60歳以上 1点
B Blood Pressure(血圧)  140/90mmHg以上 1点
C Clinical Feature(臨床症状)

・片麻痺がある

・麻痺のない言語障害

・2点

・1点

D  Duraition of Symptoms(持続時間)

 ・60分以上

・10分~59分

・2点

・1点

D  Diabetes(糖尿病)  あり 1点

最高得点:7点

ABCDDスコアが3点以上の場合は、入院して治療を開始するべきとされています。

 

TIAの検査・診断基準

 
  • 血圧測定
  • 血液検査
  • MRI
  • MRA
  • 頚動脈のエコー検査
  • 心電図
このような検査が行われます。

また、診断基準として以下の診断基準が日本循環器病学会で定められています。

 
1.TIAの局所神経徴候は24時間以内(多くは1時間以内)に完全に消失する。
2.発作の起こり方は急速(多くは2〜3分以内)である。
3.TIAの症候
a)内頸動脈系のTIA
(1)症候は身体の半側にあらわれる。(運動・感覚障害、一眼視力障害、失語など)
(2)発作回数は少なく、発作ごとの症候は同じ。
(3)脳梗塞を起こしやすい。
b)椎骨・脳底動脈系のTIA
(1)症候は身体の半側、両側など多彩。
(2)脳神経症候(複視、めまい、嚥下障害、両側視力消失、半盲など)
(3)発作回数は多く、発作ごとに症候は変動する。
(4)脳梗塞を起こすことは少ない。
(注)発作はめまいのみ、意識障害のみのこともある。

引用: 日本循環器病予防学会

 
 

TIAの治療

 
アスピリンやワーファリンなどの内服治療が基本的な治療となります。
 
処方薬は病態に応じて変わってきます。
 
また頚動脈の狭窄が強い場合、頚動脈内膜剥離術や頚動脈ステント留置術など血管の通りを改善させる手術が適応されることがあります。
 
 

TIAの研究データ

TIAを起こしてから1年以内に、実際に脳卒中を発症する危険性を調査したデータがあります。
 
過去7日以内にTIAを発症した、または軽症の脳卒中を起こした21ヶ国4,789人を対象に追跡調査を行い、その後1年間で脳卒中を発症する危険性と、発症にはどのような要因が関連しているか検証しました。
 
TIAの発症後1年以内で脳卒中を発症する危険性は、全体の5%以上でした。
 
そのうちでも脳卒中を発症する危険性が2倍以上高くなる要因として、TIAがあった時点の画像検査で脳梗塞の跡が複数見つかること、大きな動脈に動脈硬化があること、TIAの重症度を判定するABCD2スコアが6点または7点であることが見つかりました。
 
引用:MEDLEY
 
 

 
 

まとめ

 
脳梗塞の一歩手前であるTIAについて解説しました。
 
TIAの症状が出た時は、おそらく「何か今までとはちょっと違う」などの違和感を感じるはずです。
 
研究データやガイドラインからもあるように、TIAが疑われる場合は早期に治療を開始する必要があります。
 
TIA症状が該当する場合は、そのままにはせず早く病院受診し、検査・治療を受けるようにしてください。
 
また療法士であれば、リハビリ中に怪しい症状があればすぐに主治医に報告する必要があります。
 
それでは、参考になれば幸いです。

 
 
 

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井上 直樹
(同)Relate・(同)ALLMERU代表社員/理学療法士の井上直樹です。 このサイトでは一般の方に向けたリハビリの基本的な情報発信を行っております。また、不定期ですが雑誌や新聞などのマスメディア・WEB上のメディアにも情報提供を行っております。リハビリについての適切な情報発信は現在少ないのが現状です。リハビリのことはリハビリの専門職種(理学療法士・作業療法士・言語聴覚療法士)が情報発信するべきだと考えています。コンセプトは誰にでも理解できるように分かりやすく解説していくことです。リハビリに関わるコンサルティング事業を展開しております。お仕事依頼もお気軽にお問合せくださいませ。