理学療法士の井上(@Rehacon)です。
先日リハビリの専門家である、作業療法士の方からご質問をいただきました。
ありがとうございます。
あくまでも一個人の意見ですが、私なりの見解をお伝えしたいと思います。
質問内容
原文をそのまま転載します。
質問です!
痙性が強い片麻痺の患者さんに時折見かける病態として、端座位から背臥位になる瞬間に(臥床動作時)、麻痺側下肢の筋緊張が高まりピーンと伸びてしまうことがありませんか??特に緊張が高い方は上肢も同様に高まることがあります。
これは、姿勢変換による刺激が伸張反射のような反応を引き起こしてしまっているのではないかと思っていましたが、井上さんの意見をお聞きしたいです!
この反応が繰り返されると、普段の生活から緊張を高める習慣がついてしまい、あまりよろしくないのかなと思っています。
ゆっくり行うようにするといくらか軽減できる方もいらっしゃるのですが、なにか良い方法がありましたら教えていただけると助かります。
入院中からなるべく無理ない体の使い方を身につけて欲しいなぁと思いますので…
私なりの見解
脳卒中にみられる「痙性麻痺」は、急に関節を動かしたりすると筋肉の緊張が高くなります。
そのまま関節を動かすのを持続していると、段々と筋肉の緊張が抜けます。
ご存知だと思いますが、これは「折りたたみナイフ現象」です。
脳卒中などの中枢神経障害(上位運動ニューロン障害)で特徴的な反応の1つです。
この折りたたみナイフ現象は、早く動かせば動かすほど筋緊張が高まります。
つまり、動作変換時のスピードにも影響してくると考えることができます。
また、端座位から背臥位になるときは非麻痺側の方を中心に動かしますので、麻痺側に「連合反応」が起きていると考えられます。
おっしゃる通り「ゆっくりやるといくらか軽減できる」というのはこういうことで説明できます。
姿勢変換時に筋緊張が高まる反応を学習してしまうのはよくないと私も考えます。(痙性を利用する場合もありますので、この限りではありませんが。)
私が臨床で意識して行っているのは、まず筋緊張を緩めること。
方法は療法士それぞれだと思いますが、マッサージやストレッチなどを行い、緩んだ状態で随意的に動かしてもらうようにしています。
これは決して筋力トレーニングではなく、あくまでも緊張が高まらない程度の随意運動です。
運動学習をしてもらい、それからゆっくりと動作訓練を行います。
端坐位から背臥位であれば、ベッドアップさせておいて横になるまでの距離を短くすることや、リハビリ室のプラットホームなら枕やクッションを使用して同様の目的で行うようにするといいかもしれませんね。
これはリハビリの時だけでは不十分ですので、病棟の看護師さんやヘルパーさんに伝えて日常的にもやってもらうことが大切だと実感しています。
この辺りの筋緊張のコントロールは回復期を退院するまでの発症からおよそ3ヶ月が非常に鍵になります。
できるだけ早いうちに筋緊張のコントロールができるように介入して、悪い運動学習が起こらないようになるべく不用な筋緊張を取り除く必要があると考えています。
ざっくりとですが、私なりの意見を述べさせてもらいました。
ご質問ありがとうございました。
早速の回答、ありがとうございます。
病棟ではベッドアップ…そうですよね。シンプルですが、盲点でした…!!ありがとうございます。
回復期病棟に勤務する上で、このような筋緊張のコントロールまで看護師さん、ヘルパーさんまで意識の共有ができたらもっと質が上がると思います!
そのためにはコミュニケーション、連携が大事ですよね!
リハビリ発信での独りよがりにならない勉強会とかしてみたいなぁと感じます。
ありがとうございました!
ベッドアップして楽に起き上がってもらう・横になってもらうというのはとてもシンプルですが、患者さんからしたら楽ですからね。緊張も上がりにくいと思います。麻痺の状態に応じて徐々に難易度を上げていったらいいと思います。
筋緊張コントロールを病棟に求めるのは難しいですが、「筋肉の緊張が高くならないように日常生活では〇〇してくれると助かります!」と言うと嫌な顔する看護師さんも少ないように感じてます。連携は本当に重要だと思います。入院生活では、リハビリ職種よりも看護師さんやヘルパーさんのほうが圧倒的に過ごす時間は長いですからね。
院内勉強会でリハビリ職種発信の勉強会はとてもいいことだと思います。
お互い頑張りましょう^^